とある田舎の小さな駅前。
赤くてまあるい古い郵便ポストがありました。
それはそれは古いポストで、
そこに置かれて長い歳月がたったある日のこと、
付喪神となって姿を消しました、
そして今では黄昏森で暮らしているのです、
おやおや、付喪神ポストが羽房鼠に声をかけています。
「郵便はないかね。どこでもちゃんと届けるよ。」
羽房鼠はちょっと困ってしまいましたが、
落ち葉をひとひら拾って字を書くふりをして、
そっとポストに入れました。
「誰に届けるんだい。」と付喪神ポストが尋ねるので、
「あそこにいるアカンベェ親父にでも届けてくれ。」
羽房鼠は面倒くさそうに言いました。
落ち葉はちゃんとアカンベェ親父に届くでしょう。
アカンベェ親父が喜ぶかどうかは知りませんが。
「はい、郵便です。」
「なんだ?お前。」
付喪神とは百年たって物の怪となった古道具や人形のことだそうです。
百年とは長い年月ということで、百年きっかりというわけではないようです。
あなたの家の人形や古いお茶碗なんかも付喪神になっているかもしれませんね。
夜中にそっと聴き耳をたててみてください。
付喪神たちの話声が聴こえてくるかもしれませんよ。
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