お地蔵様とこどもたち (小さな民話、2次創作) | 黄昏黒猫屋敷ー布人形とイラストの小部屋

黄昏黒猫屋敷ー布人形とイラストの小部屋

世間からかなりずれている管理人、黄昏黒猫堂こと黒猫が自作人形やイラストを発表しつつ、ニート、ひきこもりなど生きずらさを考える。(画像一覧で作品を見ていただけるとうれしいです。)

それはむかしむかしのものがたり。

だれもが茅葺の家に住んでいたころのこと。

とある里に小さな地蔵堂があって、

木彫りのお地蔵様が祀られておりました。

お地蔵様のお顔は。それはそれは優しくて、

見る人だれもが心やすらかになりました。

それでも、いつのころもやんちゃな子供はいるもので、

地蔵堂からお地蔵様を運び出しては、

浮き代わりにしてお地蔵様に乗って川であそぶ子供たちがおりました。

それを目にした里の長老は、

「罰当たりな小僧ども、すぐにお地蔵様をお堂に戻しなさい。」

そう叱って言いました。

子供らはしかたなくお地蔵様をお堂に戻しました。

その夜のこと。里の長老の枕元に不思議な気配がしました。

驚いて長老が飛び起きると、

そこにはお堂の木彫りのお地蔵様が立っておられました。

「これ、爺様よ、わしが子供と遊ぶのを邪魔してくれるでない。わしはさびしいでな。」

そう言うと、お地蔵様は、ふっと姿を消しました。

畳の上は少し湿って、川のにおいがしました。

翌朝、長老は地蔵堂に行きました。

そこには少しすり減っているけれど、いつもの優しい微笑みのお地蔵様がおりました。

「お地蔵様、あなた様はいつでも子供と一緒におられます。わしが間違っておりました。」

そう言って深々と頭を下げ、お堂を立ち去りました。

それからずっと夏になると、お地蔵様は子供たちと川遊びを楽しみました。

そのお顔は、何故だかすり減ればすり減るほど優しくなりました。

それから時が過ぎ、世の中は変わり、

川は改修工事で泳げなくなりました。

お地蔵様は学術的価値があるとして博物館におられます。

お地蔵様のお顔は相も変わらず優しいのですが、

どこかさびしげにもみえるのです。

もう川ではしゃぐ子供らの声も聞こえず、

粗末だけれども慣れ親しんだお堂からも離されて、

それでもお地蔵様はガラス越しに見る人たちに変わることなく微笑みかけるのです。

 

(木喰という仏像彫刻で知られる出戸時代の僧侶の逸話を基にした2次創作です。)

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