「千と千尋の神隠し」のテーマソング「いつも何度でも」の歌詞の一節。
こなごなに砕かれた 鏡の上にも
新しい景色が 映される
それで、ちょっと詩のようなものを書いてみた。
若いころ、鏡の中にいつも輝く僕の背中を見ていた。
僕が見ていたのはいつもこうでありたい自分。
いつもそれに追いつこうとしていた。
僕はもうひとりの自分を追って走り続けていた。
でも、ある時、鏡はこなごなに砕け散った。
もう僕には在りたい自分が見えなくなった。
何もかも終わった気がして、僕はうずくまっていた。
鏡の破片のひとつを拾って見ていると。
暗い表情の女性が映っていた。その女性が妻になった。
その破片は僕にとって大切なものになった。
それでも、もう二度と見ることができない理想の自分が悲しかった。
散らばった鏡のかけらに目が留まったのはいつのことだろう。
いつしか僕はかけらをひろい集めはじめた。
よく見ると、そのかけらのひとつひとつにいろいろなものが映っていた。
そのひとつひとつがいとおしいと思うようになったのはいつからだろう。
かけらになった鏡には、もう輝く理想の自分はいないけれど、
無数に散らばった鏡のかけらに映ったものが、
今ではそのひとつひとつが大切になって、
まるで万華鏡のように思える。
もう自分の背中を見るごたいそうな姿見の鏡はいらない。
砕け散った鏡は、今では万華鏡になって、
僕はそれを見ることで飽きることがない。
無数のかけらは無数の世界。それと妻が映っている大切なひとつのかけら。
もう追う必要はない。僕は今ここにいるから。
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