彼が自室でひきこもったのは小学生の頃のこと。
彼に何があったのか。
家族ともろくに会話もないまま、
いつしか40年の歳月が流れた。
父が死に、母も高齢となった。
彼の将来を案じる母は行政に相談し続けたけれど、
状況は何も変わらなかった。
母は諦め、そして人知れず病気で死んだ。
彼はそのことを誰にも知らせられなかった。
人と話をすることが怖かった彼は、
いつしか言葉を発することができなくなっていた。
電話をかけることもできなくなっていた。
40年の歳月は彼から声を奪っていた。
彼は母の遺体としばらく一緒に暮らし、やがてそれが発覚した。
遺体の遺棄で逮捕された彼は筆談で取り調べに答えたという。
結局彼は起訴されず、精神保健の支援とつなげられた。
彼は身辺自立もままならなかったから。
彼はこれからどうなっていくのだろう。
誰が悪かったのかなどどうでもいい。
確かなことは彼と母親の40年は帰ってこないということ。
誰でもいいから40年の歳月を返してくれないだろうか。
未来だけを見ろと言うのは、
彼には酷すぎる。
(あるニュース記事を読んで。)
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