彼は就活でつまずいた。
なんとか大学は卒業したものの、就職できず、無職となった。
もう疲れて職を探す気力もなく、そのままひきこもった。
2年間ひきこもって、2年間くるしんだ。
もう何の未来も描けなかった。
でも、部屋の隅の一本のギターに目がとまった。
学生時代、彼は音楽をやっていた。
どうして彼にそんなことができたのだろう。
突如彼は立ち上がった。
わずかな所持金とギターを抱えて台湾に渡った。
台湾の街角に立って歌う彼がいた。
ギターケースに投げ銭が放り込まれ、それで彼は次の街に行ける。
そうして彼は台湾中を巡って行った。
言葉もろくにわからない外国で彼は歌い続けた。
どうせ失うものなんて何もない。
それから彼は日本に戻った。
アルバイトをしながら彼は路上に立つ。
相変わらず先は見えないけれど、彼はもう立ち止まってはいない。
この先彼がどうなるのか僕にはわからない。
それでもどこかの路上で彼は歌っているのだろう。
ひきこもりの集会のトークセッションで彼と同じグループになった。その後で彼と話してみたかったけれど、ほかの人に呼び止められ、彼の連絡先も聞けなかった。メモをとっていたわけではないので、ざっくりとしたことしか書けない。記憶に頼って書いているので、100%の正確さには自信がないけれども、大筋は間違ってはいないだろう。できればもう一度彼に会って話を聞きたい。
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