翼
「ただいまー(廊下を通り過ぎる)。」
父
「おかえりー。」
翼
「(廊下から顔だけ出して)あ、友だち連れてきたから戸棚のお菓子食べていい?」
父
「うんー。
いいぞー。」
翼
「(台所から声が聞こえる)どれがいい?
ポテチかな?」
父
「(台所に向かう)・・・友だちってどんな子だろう。」
翼
「(台所にやってきた父に気づき)あ、父さん。
紹介するよ。サッカーボール!」
父
「・・・えーと、サッカーボール。」
翼
「(サッカーボールに向かって)紹介するね、僕の父さん。」
父
「・・・えーと、今、サッカーボールに紹介されたのかな?」
翼
「うん!」
父
「あぁ、そうか・・・。
えーとな、翼。」
翼
「ん?」
父
「父さん、前から言おう言おうと思ってたんだけどな。」
翼
「うん。」
父
「『ボールは友だち』ってそういう意味じゃないんだ。」
翼
「・・・。」
父
「・・・。」
翼
「あ、コップ2人分ある?」
父
「翼。翼よ。」
翼
「ん?」
父
「聞きなさい。」
翼
「友だち来てるから後でいい?」
父
「今がいい。」
翼
「(冷蔵庫を開けて)ジュースないなー。」
父
「翼。翼よ。」
翼
「ん?」
父
「確かに以前、私はお前に『ボールは友だち』と言った記憶はある。」
翼
「うん。言ってた。」
父
「だが、その言葉をどう受け取ったらこうなる?」
翼
「どう受け取ったら・・・って、言われても。
言葉通りに受け取ったら。」
父
「『ボールは友だち』=『ボールと友達付き合いする』という意味ではない。」
翼
「・・・。」
父
「・・・。」
翼
「お菓子お菓子。」
父
「翼!」
翼
「あ、オレオあるじゃん。」
父
「翼!」
翼
「(サッカーボールに向かって)え?オレオ好きなの?」
父
「翼!!」
翼
「そうだよね、配色同じだもんねー!」
父
「翼よ!!」
翼
「ん?」
父
「『配色同じだもんねー』じゃない!
父さんはガチで心配だ。」
翼
「何が?」
父
「ボールを部屋に持ち込んでオレオ片手に語り合う息子が。」
翼
「ボールは友だちだから。」
父
「うん。忘れよう。
ボールは友だち忘れよう。
話はそれからだ。」
翼
「父さん・・・、さっきから何?」
父
「いや、ちょっと落ち着いて話がしたいんだけど。」
翼
「それ、大事な話?」
父
「ものすごく。」
翼
「じゃあ3人で話す?」
父
「2人だ。
ボールをカウントに入れるな。
・・・ひとまず座りなさい。」
翼
「(椅子に座る)何?」
父
「(椅子に座る)お前、以前野球のボールを友だちだって連れてきたことあったな。」
翼
「うん。最初の友だち。」
父
「最初は意味がわからなかったが、
あの時点で『おかしい』と気づくべきだった。」
翼
「何がおかしいの?」
父
「そんなに響いたのか?
『ボールは友だち』と言う言葉が。」
翼
「衝撃が走った。」
父
「そんなにか。」
翼
「だから、それまでの友だち全員、縁を切った。」
父
「なぜそうなる?
仮にボールと友だちになるとして、
今までの友だちと縁を切る必要ないだろ。
あと、何て言ったんだ、当時の友だちに。」
翼
「でも、それからたくさんの友だちできたよ。
ラグビーボールにバレーボールにハンドボールに。」
父
「ただ、お前肝心のサッカー辞めただろ。」
翼
「うん。
友だちと遊ぶのが楽しくて。」
父
「いよいよ『ボールは友だち』を忘れて欲しいんだが。」
翼
「忘れられないよ。」
父
「あと、彼女を紹介すると言ってテニスボール紹介されたときは
『ここまで行ったか』と思ったぞ。」
翼
「友だち関係から恋愛に発展するのはよくある話でしょ?」
父
「ボールと友達付き合いしてる時点で
よくある話じゃなくなってるんだよ。」
スマホ
「ウィーン。ウィーン。」
翼
「(スマホの画面を見て)LINE通話だ。」
父
「ボールからか?」
翼
「はい、もしもし?え?!わかった。すぐ行く!」
父
「何?」
翼
「友だちが他校の不良にさらわれたって!
僕、取り返しに行ってくる!」
父
「ちなみにその友だちっていうのは?」
翼
「ピンポン球!」
父
「やっぱりボールか。」
翼
「ボールは友だちなんだよ!」
父
「撤回するよ!
あのときの『ボールは友だち』発言は撤回するよ!」
翼
「父さんにとっての友だちってその程度なのかよ!」
父
「なんでそんなにかたくななの?
もう怖いよ。あのときの一言が新しい世界の扉を開けたかと思うと。」
翼
「なんとかして友だちを取り戻さないと!」
父
「ちなみにお前の友だちをさらった不良っていうのは?」
翼
「ボウリング球。」
父
「うわぁ・・・。」
翼
「まともにやり合ったらケガじゃすまないかもしれない・・・!
でも、大切な友だちを取り戻さないと!」
父
「ダメだ、涙が・・・。
息子がボウリング球とやり合ってる姿を想像したら・・・。」
翼
「じゃあ行ってくる!」
父
「うん。
帰ったら相関図書いて。」
親子のコントは今までいろいろ書きましたけど、これもちょっとヘンなコント。
実演するとしたら、最後に相関図を見せて終わるといいと思います。
【コント】面接#2
【コント】少年探偵と麻酔銃
【コント】レストラン
【コント】卒業式
【コント】テレビショッピング#2
今後のコント作りの励みになるので、ぜひ、感想をお聞かせください。
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アレンジや改変も自由です。
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