「ただいまー(廊下を通り過ぎる)。」


「おかえりー。」


「(廊下から顔だけ出して)あ、友だち連れてきたから戸棚のお菓子食べていい?」


「うんー。
 いいぞー。」


「(台所から声が聞こえる)どれがいい?
 ポテチかな?」


「(台所に向かう)・・・友だちってどんな子だろう。」


「(台所にやってきた父に気づき)あ、父さん。
 紹介するよ。サッカーボール!」


「・・・えーと、サッカーボール。」


「(サッカーボールに向かって)紹介するね、僕の父さん。」


「・・・えーと、今、サッカーボールに紹介されたのかな?」


「うん!」


「あぁ、そうか・・・。
 えーとな、翼。」


「ん?」


「父さん、前から言おう言おうと思ってたんだけどな。」


「うん。」


「『ボールは友だち』ってそういう意味じゃないんだ。」


「・・・。」


「・・・。」


「あ、コップ2人分ある?」


「翼。翼よ。」


「ん?」


「聞きなさい。」


「友だち来てるから後でいい?」


「今がいい。」


「(冷蔵庫を開けて)ジュースないなー。」


「翼。翼よ。」


「ん?」


「確かに以前、私はお前に『ボールは友だち』と言った記憶はある。」


「うん。言ってた。」


「だが、その言葉をどう受け取ったらこうなる?」


「どう受け取ったら・・・って、言われても。
 言葉通りに受け取ったら。」


「『ボールは友だち』=『ボールと友達付き合いする』という意味ではない。」


「・・・。」


「・・・。」


「お菓子お菓子。」


「翼!」


「あ、オレオあるじゃん。」


「翼!」


「(サッカーボールに向かって)え?オレオ好きなの?」


「翼!!」


「そうだよね、配色同じだもんねー!」


「翼よ!!」


「ん?」


「『配色同じだもんねー』じゃない!
 父さんはガチで心配だ。」


「何が?」


「ボールを部屋に持ち込んでオレオ片手に語り合う息子が。」


「ボールは友だちだから。」


「うん。忘れよう。
 ボールは友だち忘れよう。
 話はそれからだ。」


「父さん・・・、さっきから何?」


「いや、ちょっと落ち着いて話がしたいんだけど。」


「それ、大事な話?」


「ものすごく。」


「じゃあ3人で話す?」


「2人だ。
 ボールをカウントに入れるな。
 ・・・ひとまず座りなさい。」


「(椅子に座る)何?」


「(椅子に座る)お前、以前野球のボールを友だちだって連れてきたことあったな。」


「うん。最初の友だち。」


「最初は意味がわからなかったが、
 あの時点で『おかしい』と気づくべきだった。」


「何がおかしいの?」


「そんなに響いたのか?
 『ボールは友だち』と言う言葉が。」


「衝撃が走った。」


「そんなにか。」


「だから、それまでの友だち全員、縁を切った。」


「なぜそうなる?
 仮にボールと友だちになるとして、
 今までの友だちと縁を切る必要ないだろ。
 あと、何て言ったんだ、当時の友だちに。」


「でも、それからたくさんの友だちできたよ。
 ラグビーボールにバレーボールにハンドボールに。」


「ただ、お前肝心のサッカー辞めただろ。」


「うん。
 友だちと遊ぶのが楽しくて。」


「いよいよ『ボールは友だち』を忘れて欲しいんだが。」


「忘れられないよ。」


「あと、彼女を紹介すると言ってテニスボール紹介されたときは
 『ここまで行ったか』と思ったぞ。」


「友だち関係から恋愛に発展するのはよくある話でしょ?」


「ボールと友達付き合いしてる時点で
 よくある話じゃなくなってるんだよ。」

スマホ
「ウィーン。ウィーン。」


「(スマホの画面を見て)LINE通話だ。」


「ボールからか?」


「はい、もしもし?え?!わかった。すぐ行く!」


「何?」


「友だちが他校の不良にさらわれたって!
 僕、取り返しに行ってくる!」


「ちなみにその友だちっていうのは?」


「ピンポン球!」


「やっぱりボールか。」


「ボールは友だちなんだよ!」


「撤回するよ!
 あのときの『ボールは友だち』発言は撤回するよ!」


「父さんにとっての友だちってその程度なのかよ!」


「なんでそんなにかたくななの?
 もう怖いよ。あのときの一言が新しい世界の扉を開けたかと思うと。」


「なんとかして友だちを取り戻さないと!」


「ちなみにお前の友だちをさらった不良っていうのは?」


「ボウリング球。」


「うわぁ・・・。」


「まともにやり合ったらケガじゃすまないかもしれない・・・!
 でも、大切な友だちを取り戻さないと!」


「ダメだ、涙が・・・。
 息子がボウリング球とやり合ってる姿を想像したら・・・。」


「じゃあ行ってくる!」


「うん。
 帰ったら相関図書いて。」

 

 

 

 

 

【コント・セルフ・ライナーノーツ】

親子のコントは今までいろいろ書きましたけど、これもちょっとヘンなコント。

 

実演するとしたら、最後に相関図を見せて終わるといいと思います。

 

 

 

【過去コントを5本チョイスしました。こちらもどうぞ。】

【コント】面接#2
【コント】少年探偵と麻酔銃
【コント】レストラン
【コント】卒業式
【コント】テレビショッピング#2

 

 

 

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