(交番にて)


警官
「では、詐欺の被害届ということですね。」

おじいさん
「はい。」

警官
「それでは、書類を書きますので
 被害にあったものを教えていただけますか?」

おじいさん
「わかりません。」

警官
「・・・はい?」

おじいさん
「被害に遭ったものはわかりません。」

警官
「でも、さっき詐欺だって・・・。」

おじいさん
「はい。
 詐欺だと思います。」

警官
「・・・思います?」

おじいさん
「1から説明しますね。」

警官
「お願いします。」

おじいさん
「数ヶ月ほど前になるんですけど、
 わたし、たけやぶで竹を切っていたんです。」

警官
「はい。」

おじいさん
「そしたら、竹の中に光る竹があって。」

警官
「ほうほう。」

おじいさん
「切ってみたら中から女の子が出てきたんです。」

警官
「んー。はい。」

おじいさん
「で、その娘に『かぐや姫』と名づけて育てていたところ、
 すくすく大きく美しく育ちまして。」

警官
「うんうん。」

おじいさん
「かぐやに求婚を迫るものもたくさんいたのですが、
 かぐやは無理難題を押し付け、
 その者たちの求婚を断っていったんです。」

警官
「んー。はい。」

おじいさん
「そして先日、かぐやは突然、
 迎えのものに連れられて月へ帰っていったんです。」

警官
「んー・・・、にわかには信じられない話ですが・・・。
 で、その話とこの被害届にどんな関係が?」

おじいさん
「はい。ここで話的には区切りなんですけど、ふと思ったんです。
 『あれ、かぐやって結局何しに来たんだろね』って。」

警官
「なるほど。」

おじいさん
「この一連の流れを思い返してみたのですが、
 かぐやに何のメリットもなくて。」

警官
「まぁ、確かにそうですね。」

おじいさん
「で、ばあさんといろいろ話し合って、
 これはもしかしたら詐欺だったんじゃないかと。」

警官
「で、被害届を?」

おじいさん
「はい。」

警官
「何か盗られたんですか?」

おじいさん
「何も。」

警官
「家から無くなってるものとか?」

おじいさん
「ないです。」

警官
「口座からお金が引き落とされてるとか?」

おじいさん
「それもないです。」

警官
「金庫とか?」

おじいさん
「無事でした。」

警官
「じゃあ大丈夫なんじゃないですか?」

おじいさん
「詐欺の被害届を出したいんです。」

警官
「いや、何も盗られてないんですよね。」

おじいさん
「はい。」

警官
「じゃあ被害届は出せないです。
 被害に遭ってないですから。」

おじいさん
「じゃあかぐやは何しに来たっていうんですか!」

警官
「いや、知りませんよ。」

おじいさん
「あの性悪女が!!」

警官
「被害に遭ってないのにその言われよう・・・。」

おじいさん
「あ、そうか!
 盗聴!盗聴かもしれないです!」

警官
「盗聴?」

おじいさん
「よく、外部の業者が点検とか言ってコンセントに仕込んだり、
 恋人がぬいぐるみに仕込んだりするって言うじゃないですか!」

警官
「じゃあかぐやさんが置いていったぬいぐるみとかが部屋にあるんですか?」

おじいさん
「ないです。」

警官
「ないんじゃん!!」

おじいさん
「ぬいぐるみは置いていってないです。」

警官
「ぬいぐるみ『は』?
 あ、じゃあコンセントに身に覚えのないものが刺さってたんですか?」

おじいさん
「それもなかったです。」

警官
「じゃあ盗聴説もねぇよ!!」

おじいさん
「でも、気がつかないところに設置されてるかも・・・。」

警官
「・・・そこまで言うなら、
 機械を導入して怪しげな電波が発信されてないか確認しますか?」

おじいさん
「自前の装置で確認済みです。」

警官
「じゃあ安心しろ!!
 盗聴なんかされてねぇ!!」

おじいさん
「だったらかぐやは何しに来たんだって話ですよ!」

警官
「私からしたら、あんたは何しに来たんだって言いたい!」

おじいさん
「あの性悪女が!!」

警官
「その憎しみはどこから生まれてるんですか?」

おじいさん
「あ、わかった!!
 動画撮影!!動画撮影だ、きっと!」

警官
「動画撮影?」

おじいさん
「竹から生まれた系youtuberなんですよ!」

警官
「カメラ向けられてたんですか?」

おじいさん
「いえ。」

警官
「じゃあ違うよ!
 秒で否定じゃねぇか!!」

おじいさん
「どこかに隠しカメラが仕掛けてあったのかも。」

警官
「じゃあ警官導入して部屋中調べますか?」

おじいさん
「いえ、ワシと婆さんでやりました。」

警官
「やってんじゃん!!
 すでにやってんじゃん!!」

おじいさん
「どんな被害届を出せば受理されます?」

警官
「どんな被害届も受理されないです!!
 被害に遭ってないんだから!!」

おじいさん
「でも、それじゃあかぐや姫が来た理由が説明できない!」

警官
「ホントに何もなかったんじゃないですか?
 ただ竹から生まれて、ただ求婚を断って、ただ帰った!」

おじいさん
「あんなインパクトのある産まれ方して、
 あんなバチェラーみたいなことして、
 あんな派手な帰り方したのに、
 なんもないってことあります?!」

警官
「あったんですよ、きっと!」

おじいさん
「こんなんで終わっちゃ、こっちの気が済まない!」

警官
「じゃあどうしたらいいんですか?」

おじいさん
「せめて、被害届を出したい!」

警官
「だから無理なんだって!!」

 

 

 

 

 

【コント・セルフ・ライナーノーツ】

一連の流れを振り返ってみても、かぐや姫が何をしに来たのか謎なんですよね。

昔話って結構そういう理由のないこと結構してる・・・。

 

2022年もありがとうございました。

途中半年ほど空いてしまいましたが、2023年もゆっくりペースで書いていきますので、よろしくお願いします。

 

【過去コントを5本チョイスしました。こちらもどうぞ。】

【コント】今日はクリスマス#2
【コント】ブラックジャック
【コント】乙姫と浦島と玉手箱#4
【コント】金田一少年の悩み
【コント】ダイエット

 

 

 

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