吉岡
(道を歩いている)

血まみれの男
「(飛び出してくる)ぐわぁ!!」

吉岡
「びっくりした!
 だ、大丈夫ですか?!」

血まみれの男
「お、俺はもうダメだ・・・。」

吉岡
「早く、早く救急車を!」

血まみれの男
「俺のことはいいから・・・、
 (懐からフロッピーディスクを取り出す)こ、これを・・・。」

吉岡
「(フロッピーを受け取る)これを?」

血まみれの男
「これを・・・アタフタ物産の・・・
 水野という男に・・・渡してくれ・・・。」

吉岡
「アタフタ物産の水野・・・。
 水野ってどんな人ですか?」

血まみれの男
「(別のフロッピーを懐から取り出す)このディスクに・・・
 写真が入っている・・・。」

吉岡
「(フロッピーを受け取る)これに・・・。
 わかりました。
 あ、アタフタ物産って・・・?」

血まみれの男
「(さらに別のフロッピーを取り出す)これに地図データが・・・。」

吉岡
「(受け取る)この中に。
 わかりました。
 あ、水野さんの席って・・・。」

血まみれの男
「(4枚目のディスクを取り出す)座席表だ・・・。」

吉岡
「全部フロッピーに入れてるんですね。
 フロッピー、そんなにデータ入らないんで、USBメモリとかの方がいいですよ。」

血まみれの男
「データの件、頼んだぞ・・・。」

吉岡
「(4枚のフロッピーを見て)あれ、どれを渡すんだっけ?」

血まみれの男
「すん・・・。(意識を失う)」

吉岡
「まだ待ってまだ待って(血まみれの男の頬を叩く)。」

血まみれの男
「ううー・・・(意識を取り戻す)。」

吉岡
「どれが水野さんに渡すやつ?」

血まみれの男
「その・・・、一番左のやつ・・・。」

吉岡
「これか。」

血まみれの男
「あと・・・、
 もし、私の妻に会ったら伝えてほしい・・・。」

吉岡
「奥さんに?」

血まみれの男
「愛して・・・いたと・・・。」

吉岡
「えーと・・・。」

血まみれの男
「すん・・・(意識を失う)。」

吉岡
「待って!待って!(血まみれの男の頬を叩く)」

血まみれの男
「ううー・・・。(意識を取り戻す)」

吉岡
「あなたの家がわからない。
 奥さんの顔も。」

血まみれの男
「(懐からフロッピーを取り出す)ここに・・・妻の写真データが入ってる。」

吉岡
「出た、5枚目。」

血まみれの男
「愛していたと・・・伝えてくれ・・・。」

吉岡
「ごめんなさい。
 突然、私が奥さんのところに行って『旦那さんが愛していたって言ってましたよ』って伝えても、
 お互い気まずい雰囲気が流れるだけだと思うんです。」

血まみれの男
「すん・・・。(意識を失う)」

吉岡
「まだ早いまだ早い!(血まみれの男の頬を叩く)」

血まみれの男
「ううー・・・。(意識を取り戻す)」

吉岡
「多分奥さんから『そうですか』って言われるだけだし。
 それともこれはアレですか?
 『よろしくお伝えください』的なノリですか?」

血まみれの男
「もし・・・、私の息子に会うことがあったら・・・、
 1つお願いがある・・・。」

吉岡
「めちゃくちゃお願いされるんだけど。」

血まみれの男
「(懐からリボンのついたフロッピーを取り出す)これを・・・、息子に・・・。」

吉岡
「内ポケット大丈夫ですか?
 私に会う前、パンパンだったんじゃないですか?」

血まみれの男
「息子へのプレゼントだ・・・。」

吉岡
「喜びます?フロッピーディスク。
 息子さん、何歳ですか?」

血まみれの男
「3つだ・・・。」

吉岡
「これが何かもわからないですよね。
 遠くに投げて終わりですよ。」

血まみれの男
「あなたへの依頼を整理すると・・・、
 まず1枚目のフロッピーをアタフタ物産の水野という男に渡す・・・。」

吉岡
「このディスクでしたっけ?」

血まみれの男
「いや、それ、水野の座席表だ・・・。」

吉岡
「あ、そうか。
 これでしたっけ?」

血まみれの男
「それは私の妻の画像・・・。
 一番右のやつだ・・・。」

吉岡
「これか。よくわかりますね。」

血まみれの男
「私くらいになると、
 フロッピーを見ただけで中に何が記録されているかわかる・・・。」

吉岡
「すごい能力ですね。
 使いどころないですけど。」

血まみれの男
「次に私の妻に会い、妻に『愛していた』と言う・・・。」

吉岡
「それ必須なんですね。」

血まみれの男
「私の方から妻にアポは取っておく。」

吉岡
「何て説明するつもりですか?」

血まみれの男
「ついでに息子に会い、フロッピーを渡す。」

吉岡
「『ついで』って言っちゃった。」

血まみれの男
「そうだ・・・。
 水野について1つ注意点がある・・・。」

吉岡
「注意点?何ですか?」

血まみれの男
「水野に間違って別のフロッピーを渡すと・・・。」

吉岡
「渡すと?」

血まみれの男
「すん・・・。(意識を失う)」

吉岡
「すん!
 起きろよ!別のフロッピー渡しそうで怖いんだよ!(血まみれの男を叩き起こす)」

血まみれの男
「ううっ(目を覚ます)。」

吉岡
「気がついたか。」

血まみれの男
「私の妻について、注意事項がある・・・。」

吉岡
「その前に水野の注意事項!
 別のフロッピーを渡すとどうなるんだよ!」

血まみれの男
「私の妻は警戒心が強くて、知らない人から声をかけられると・・・。」

吉岡
「かけられると・・・?」

血まみれの男
「すん・・・。(意識を失う)」

吉岡
「だから、『すん』じゃないって!
 このあと、その奥さんに合わないといけないんだから!
 せめて、アポとってから『すん』して!」

血まみれの男
「ううっ(目を覚ます)。」

吉岡
「気づいた?
 まず、奥さんにアポとって!」

血まみれの男
「次に息子についての注意事項だが・・・。」

吉岡
「奥さんの注意事項は?!」

血まみれの男
「息子は粗末に扱われると、すん・・・。」

吉岡
「なんで毎回、いいところで『すん』!
 あんた、さっき、息子さんについて『ついでに』って言ったぞ!」

血まみれの男
「すん・・・。」

吉岡
「目を覚ませ!
 血まみれの男からの注意事項って怖すぎるよ!」

血まみれの男
「すん・・・。」

吉岡
「『すん』じゃねぇ!
 そもそも『すん』って何だよ!」

 

 

 

 

 

 

【コント・セルフ・ライナーノーツ】

映画か何かのワンシーンにある死にかけの男がフロッピーを渡すシーン。

もうフロッピーを読み取る装置もないですからね・・・。

 

【上演メモ】

人数:2人

吉岡

血まみれの男

 

所要時間:4分~5分
上演難易度:★★★☆☆
備考:血まみれのメイクが一番大変だと思います。

文字のコントでは「すん。」と書きましたが、実際に演じるとなると聞き取りにくいかもしれません。

 

【過去コントを5本チョイスしました。こちらもどうぞ。】

【コント】ここは俺に任せて先に行け
【コント】記憶喪失
【コント】訪問販売
【コント】コンセント
【コント】出陣の朝

 

 

 

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