まさかの緊急開催!冬木弘道引退試合秘話⑦ | 俺ってデビルマン!?

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知ってる人は知ってるし、知らない人はまったく知らない…私、元・週刊ゴングの鈴木淳雄と申します。かつて所属していたプロレス業界に限らずに、今現在の私をありのままに記していきたいと思いますので、どうぞ宜しくお願い致します。

 当時の私は大会演出の進行責任者。リング設営が終わると社長がやってくるのを待って、当日のカードの最終確認(出場選手や試合順に変更がないか)を行い、その結果を受けて業者との確認作業から最終テクリハ(選手入退場時の照明、音響、特効などの本番同様のリハーサル)に入り、その後、本番時の指揮をとるのが私の仕事であった。


 このときはまだ社長が到着していなかったので、ディファ内にあるNOAH事務所で何か別の仕事をしていたのだが、そこへあるスタッフが慌ててディファの会場の方から私の元へやってきた。


「鈴木さん!大変ですよ!」


「どうしたんですか? そんなに慌てて」


「つい先ほど冬木さんが会場入りされたんですけど、他にセコンドの選手も数名引き連れて来ていて。そのセコンドの選手全員と試合のときも一緒にリングに入場するみたいなんですよ!」


「へぇ~、そうなんですか。で、それのどこが問題なんですか?」


「そのなかに女子プロレスラーの井上京子選手がいるんです!」


「へ、それって問題なんですか?」


「何を言ってるんですか!? 女子選手がウチのリングに上がるんですよ、これが全日本なら大問題ですよ! 元子さんが知ったら、確実に怒りで発狂してしまいます」


「いやここは全日本じゃないし、元子さんもいないし…」


「とにかく、鈴木さんから社長に確認をとってみてください。井上京子選手がリングに上がってもいいのかどうか」


「分かりました、社長が到着し次第、確認をとっておきます」


 当時の冬木はWEWの代表。経営破綻する前まではFMWでファイトしていた訳だが、そのときに冬木軍側の選手として井上京子選手も普通にFMWの男子レスラーと対戦していた。


 今でこそ男女の闘いも各団体で普通に行われているが、当時はまだ違和感満載の時代。特にメジャー団体では、明らかにアレルギー反応を示す赴きがあった。


 まだ私が記者の時代、ある女子選手に頼まれて全日本の後楽園大会のチケットを広報担当者にお願いして購入したところ、実際にその選手が観戦していたら、私はそのスタッフに大慌てで注意された。


「鈴木さん!困りますよ、女子プロの選手が観戦に来るなら来るって言ってくれないと!」


「え、なんで。女子選手が観戦に来たらいけないんですか?」


「いや、普通にお客さんとして来てくれる分には問題ないんですが、鈴木さんに廻したチケット、元子さんの担当席なんです!」


「元子さんは女子プロがダメなんですね」


「とにかく元子さんが気付かないことを祈るだけです」


 その後、私自身は元子さんから何もお咎めを受けなかったが、そのときの全日本スタッフは皆、元子さんの怒りの導火線に火がつかないかと、騒然としていたそうだ。


 選手同士は男女の垣根はなく、プライベートで呑み仲間となっていることを私は知っていたので、全日本にはそんな女子プロ・アレルギーがあるとは思っていなかったのだが、どうやらそんな簡単な話ではないようだ。


 ちなみにこの日、冬木さんのセコンドに来ていた選手は“爆弾男”金村キンタロー、“空飛ぶボクサー”新宿鮫、“闘うAV男優”チョコボール向井、そして“100kg越えのパワフル女子プロレスラー”井上京子の4人だった。何ともクセの強い錚々たるメンバーである。


 私が思う以上に『NOAHのリングに女子プロレスラーを上げていいのか!?』という問題は大事だったようだ。



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