まさかの緊急開催!冬木弘道引退試合秘話④ | 俺ってデビルマン!?

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知ってる人は知ってるし、知らない人はまったく知らない…私、元・週刊ゴングの鈴木淳雄と申します。かつて所属していたプロレス業界に限らずに、今現在の私をありのままに記していきたいと思いますので、どうぞ宜しくお願い致します。

 それは余りにも突然の発表であった。


 有明コロシアム大会の翌日だったか、翌々日だったか、正確な日にちは忘れてしまったが、三沢がNOAH事務所にやってきて足早に社長室に籠ると、しばらく社長と話し込んでいた某社員から、いきなりこんな発表がなされた。


「冬木さんが急遽引退することになりました。でもWEWではまだ興行を行えません。そこで、冬木さんの引退興行をウチで行います。その興行は関連業者への経費だけを差し引いて、残ったすべてを冬木さんに贈ります」


「ハ!?」


“鳩が豆鉄砲を食らう”とは、まさにこのようなことをいうのだろう。というのも、旗揚げ当初のNOAHは慢性の資金難にずっと苦しんでおり、すべてにおいて我慢の日々を強いられていた。


 給与などの待遇面も働く環境においても色んな面で当初の話とは違うものばかりで、「本当にこの会社は大丈夫なのか?」という局面の連続である。


 それなのに他人のためにボランティア興行? たまらずある社員が声に出して本音を漏らしていた。


「何でウチの選手でもない人間のために、俺たちがタダ働きしなきゃいけないんだよ…」


 当然のことだ。自分たちが我慢の日々を強いられているのに、所属選手ならまだしも、ヨソの選手の引退のために、自分たちがタダ働きを強いられるのには納得がいかない。


「だったら最初の約束通りの状況にしてからにしてくれよ」


 声に出している者は数名だったが、社員のほとんどは頷いたりしていたし、私もリアクションこそ一切しなかったが、その心中は皆と同様だった。


 完全な拒否反応のなかで、発表した社員は説得しきれない空気感に我慢できず、逃げるように社長室に戻っていった。当然、残された我々はそれぞれに不満と本音を漏らして騒然としている。そして社長室からも、何やら重苦しい空気が伝わってくる。


“一体、何が起こっているんだろう?”


 この会社の悪いところは、全日本生まれ、全日本育ちの人間がほとんどで、そのやり方をそのまま継承している部分が多いことである。


 三沢社長は当初から「これまでの慣例にとらわれずに、新しいことをやっていく」と宣言し、実際に行っていた部分もあるのだが、その一方で要所要所で全日本時代の悪い慣例を引きずっていた部分も正直多かった。


 何しろ社長の脇を固める首脳陣の一部は、そのほとんどが「新しいことをやっていく」という意識は皆無に近く、実際に社長が決めたことでも、社長不在のときにはこれまで通りのやり方を我々社員に強要してくる。


 こちらが「いや、社長にこう指示されましたので」と返答しても「社長は関係ない!」と逆ギレされることも多様にあった。


 その上で今度は社長までもが我々に無理強い? 何の説明もせずに、ただ黙って言うことを聞けってこと? “もう我慢できない!”、私はたまらず社長室のドアをノックし、社長との直談判に望んだ。



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