よく、”お悩みの根本は身体の歪みです”とか”当院では根本から良くしていきます”とか聞きますが、
本当でしょうか?
昔、学生の頃偉い鍼灸の先生の講演を聞きに行きました。
その中で、
その病を診るなら、その人の身体を診よ
その人の身体を診るなら、その環境を診よ
ということをおっしゃっていました。
今、臨床を通してしみじみその先生の言葉が身に沁みています。
会社の上司が酷い人で・・・
せっかく育てた新入社員がまたやめて行ってしまった・・・
夫に愛されていないような気がするんです・・・
子供が思ったように育てられなくて、相談相手もいない・・・
アパートの隣人が夜中に人を呼んで大騒ぎして・・・
介護している親の面倒で疲労がたまっていて・・・
鍼灸の治療は60分くらいかかりますので、
患者さんはいろんな悩みを抱えており、時に話してくれます。
鍼灸師という身内でもなく、友人でもなく、会社の同僚でもない第3者の立場であることが、
逆に溜まったものを吐き出しやすいのかもしれません。
私は楽になる方向を示すことはあるけど、押し付けることはありません。
”ただ聞くだけ”そして、”うなずくだけです”
それでも少し心が楽になるようです。
症状が重ければ重いほど、こういったバックボーンが大きくその方にのしかかり、治りにくくしていることがあります。
根本とはなんでしょうか?・・・・
鍼灸や整体で歪みを整えたり、血行を良くしたりすることが根本治療なのでしょうか?
根本=その方の置かれている環境だとしたら、
鍼灸や整体で歪みを整えたり、血行を良くしたりする治療を行ってはいますが、
その方の環境を治療することは出来ません。
敢えて言うならば、”傾聴”こそ我々のできる環境治療なのかもしれません。
そういう意味では鍼灸の60分前後の施術時間は必要な時間かもしれません。