薬の効果を身体所見でみることはできるのか? | ゴッドハンドではない鍼灸師の日々これこれ

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あすなろ院長が臨床で感じたこと、その他について気軽に書いていきます!(*^-^*)

我々、鍼灸師(マッサージ師)、整体師らは画像診断や血液検査をして患者さんの状態を調べることが出来ません(もちろん診断も!)。

 

できることは、身体のコリの状態や歪み、圧痛、関節可動域または東洋医学的な診察として、

舌やお腹、背中の状態、脈の状態などを診ることだけです。

 

舌(ベロ)を診ることは舌診と言い、色や大きさ、しわの状態、動き・・・を診ます。

私は普段、あまりやりません。

 

お腹を診ることを腹診といいます。

お腹の硬さ・柔らかさ、圧痛、ハリ、凹み、温かさ・冷たさ・・・を診ます。

こちらは脈診と共に良く見ます。

 

手首の脈を診ることを脈診と言います。

片手だけ診る方法や両手の脈を同時に診たりする方法があります。

その他、足首や首の脈を診る方法もあります。

東洋医学的な脈診は速さ・遅さ以外にも浮いているか沈んでいるか、硬いか柔らかいか、大きいか小さいかなど様々な情報を読み取ります。

 

何を診断の軸にするか、その反応を診て、何と判断し、どのような治療を行うかは個々人によってバラバラだと思います。

中には同じ流派内で診察→治療までの流れを、

”このような見方をし、それをこう判断して、このように治療する”というようにシステマチックになっていますが、

大先生や師匠と同じような治療が果たして、その会員や弟子たちがどのくらいできるものなのでしょうか?

 

うちらのような治療は”いわば名人芸”のようなもので、まったく同じ判断、治療というのは出来ないと思います。

 

したがって、細かく見るとその同じ流派でも派閥というものもあったり、個人個人で少しづつ異なった見方になっていると思います。

○○流や○○会などの組織の運営が長くなればなるほど、大きくなればなるほど流派や会が分裂してくるのは、

個人個人の治療の経験や考え方が治療法に大きく影響するからだと思います。

 

 

これは西洋医学の”数値で診断する”という画一的なものがない、我々の診断のデメリットでもあります。

 

西洋医学でいう診断は赤は赤!でそれは習いたてでもベテランでも同じですが、

我々は赤がオレンジだったり、紫だったり、中には青や黒になったりします。

 

考え方が違う異なった流派(主に東洋的な流派)間では、ベテラン同士でも、そのようなことが当然のように起こりえるのが、

我々の業界なのです。

 

なので、いつまでたっても一つにまとまりにくいのかもしれません・・・。

 

 

話しはそれましたが、我々鍼灸師はそのような身体所見を診て、治療を行い、

その所見が良くなる = 症状が良くなる

ということを前提に治療を行っています。

 

東洋医学的には経絡の関係や虚実の関係、表裏、五行、臓腑・・・など様々な関係性を、理屈を作って理解しているわけです。

これを西洋医学の立場からいうと筋肉の緊張や弛緩、血流の流れ、中枢神経、末梢神経の関係・・・

ということでそのように起こっているのだと、治療師本人が仮定して治療を行っています。

 

反応がある → 鍼をする → 反応が好転する → 症状が良くなる

 

つまり、ある反応があるところに鍼をすることで反応が良くなり、症状も良くなるということです。

 

 

漢方薬の世界では鍼と同じように舌を見て、お腹を見て、脈をして診断(証を立てるといいます)しますが、

その診断の元、漢方薬を処方します。

漢方薬は一般の病院やクリニックでも普通に出されていますが、

本来はそのような証立てして漢方薬を処方するのです。

 

効果があれば、訴えている症状が緩解し、同時に舌、腹、脈などが変化します(良い方向に)。

 

ここで考えてしまったことがあります・・・

 

これって西洋薬ではどうなのかなあ・・・・???

と。

 

もちろん、西洋薬を投与するときは問診の他、血圧だったり、血液検査だったり、画像診断して病名を決めて、

それに対する薬を処方するのですが、

この時、薬を投与する前後には舌、腹、脈などを行ったならば、

どのように変化するのかなあと思うのです。

 

もちろん、発熱している場合の脈は速く、強くなる場合がありますが、

解熱剤を投与して熱が下がりますと、

脈が落ち着くかというと落ち着かない場合があります。

 

解熱剤で抑えている場合は、薬の効果が切れると治ってなければ再び発熱してきます。

この時に検脈をするとずっと強いままの場合が多いです(変化したとしても平脈にはなりません)。

 

また、発熱している場合(例えばインフルエンザが疑われる)に背部にハリをして、筋肉の緊張がほぐれると、

一時的に熱が0.5から1.0℃ほど下がる場合がありますが、これも治ってなかったら再び発熱してきます。

 

 

何を言いたいかというと、身体が本当に良くなった状態でなければ、脈や腹や舌に変化があまりみられないかもしれないということです。

あくまでも仮説ですが。

 

例えばうつ症状や自律神経症状がある方の背部の筋肉が強く緊張していた場合、

お薬で症状が抑えられている場合、自覚的には少し楽な状態ですが、それはお薬で症状を抑えているだけで、

本当に良くなっているとはいえない状態を表している可能性があるということです(仮説です)

 

 

じゃあ、体表所見(コリなど)舌、腹、脈が良くなったら治ったと、健康な状態だと言えるのか?

 

それは、まだよく分かりません。

 

一般的に東洋医学の世界では健康と言えると思いますが、実際はどうなのでしょうか・・・・。

その確証が取れれば、血液検査より、画像診断より東洋医学的診察は凄いこととも言えます。

 

西洋医学の薬を投与して、東洋医学的診断をみたという報告なり、論文はあるのでしょうか?

もし、知っていたら教えてほしいところです。