何回か治療してもすぐ戻る坐骨神経痛の患者さんがいる。
右殿部の梨状筋と坐骨結節を中心とする痛みがあり、歩行と坐位保持が困難になったので仕事が続けられなくなって来院した。
うつ伏せにして圧痛を確かめるが、明らかなものはない。硬結もあるようなないような・・・。他の殿部筋や腰部を探っても阿是硬結は無し。
患者の訴えた部位に3寸鍼を入れる。2/3入れたところでブツブツ硬いものが切れる音がするが、硬結に当たった感は無い。うち一本は下肢への電撃様刺激あり。
直後は歩行が7割改善した。
同日夕方来院。
仕事していたら悪化、同じような痛みが出現。以前ような引きずり歩行。
しかし、今回は梨状筋部のみの痛み。
前回同様、痛む箇所に刺鍼。
直後歩行は7割改善した。
そん数日後、来院。
「やはり車に乗ると駄目です~」と。
治療しても治療しても元に戻ってしまう。
何かある、何か他に原因があるのだ。
その患者さんは今がピークに忙しく、疲れも溜まっているようだった。
ふと脈を診たら、大きな体のわりに何とも弱弱しい脈。
これだ!
仰向けになってもらい、肺腎虚の証で経絡治療をする。
置鍼15分後、起き上がってもらったら
「あれ?下肢の痛みが無いです」と言う。
それでほとんど治ってしまった。
今思うと、阿是硬結が無かった時点で気づくべきだった。
これを世間では”魔法”という。
治療には魔法などない!
痛みの原因が取り除かれただけ!
今回のケースは痛みの原因が自律神経性だっただけだ。
治療家は”魔法使い”ではなく、痛みの原因を探れる”名探偵”でなければならないのだ。