共通テストの初日、
東大前で受験生2人と通りかかった男性に切付け逮捕された少年は、
東大医学部を目指していたが、
高校での面談で、無理だ、と言われて心が折れた、
人を殺して罪悪感を背負って切腹しようと思った、と供述しているらしい。
正直、言葉も無かった。
彼は医者になりたかったのか?
いやいや、それなら、東大医学部である必要は無い。
それなら東大医学部卒のステイタスが欲しかったのか!?
大体、関係ない人を殺そうとした時点で、
医者たる資格は無い。
医者だけではなく、
医療従事者は皆、看護師も技師も、
人の命を助けようとして志したはずだ。
命を奪う暴挙に出る人間は、
そういう志望動機から最も遠い対極にいる。
彼の学校は、愛知県だけではなく、
全国に名前の知られた、超有名進学校だ。
だが、そこの学校から出された声明も酷かった。
勉学だけが高校生活の全てではない、と、
伝えてきたが、
コロナのせいで行事が中止になり、
メッセージが届かなかった、のだそうだ。
これは謝罪ではない。
コロナのせいにして言い訳をしているに過ぎない。
大体コロナの影響を受けているのは、
東海高校だけなのか?
過去に無い状況だったのは、どこも同じだ。
それでもみんな試行錯誤しながらやってきている。
結局何が一番大事か、を教えられなかった、
いや教えて来なかった、学校と親の責任は大きい。
この学校は、東大医学部入学者数全国一、等と持ち上げられてきた結果、
医学部に入ることが正義で、
志望動機などは二の次だったのだろう。
だが、医者は使命感が無ければ続けられる仕事ではない。
友人に医者が何人もいるのだが、
労働環境が厳しい割に、待遇はさほど良くない。
一般のサラリーマンに比べれば収入は多いように見えるが、
研修医は薄給で、そこを埋め合わせる為に、
疲れた体に鞭打って、
週末は宿直のバイトをしていたりする。
今は医局に入らずに、
自分で研修病院や勤務先を探してくるドクターも増えているようだが、
定期昇給がほぼ無い病院もあるし、
年俸制になっていてボーナスが無い病院もある。
医局に入って系列病院に派遣されれば、
期間が短いので、退職金もほぼ無い。
何より拘束時間が長くて、
彼らは身を削って収入を得ているのだ。
友人の産婦人科医は、産婦人科医の減少で、
3日に1度は宿直をしているらしい。
医師の宿直は、朝が来たら終わり、ではない。
そのまま外来診療に入り、夕方まで勤務する。
宿直中に急患でも来れば、殆ど寝られない。
ハッキリ言って相当に過酷だ。
体を壊さないか、心配になる。
その上、こういうコロナ禍でなくても、
常に感染症に罹患する危険性と隣り合わせだし、
最近は医療過誤の訴訟もある。
楽に金儲けができる良い職業、と思ったら大間違いだ。
勤務医が大変なら開業すればいいんじゃないの?と思う人もいるかもしれない。
だが1人で仕切れるにはそれなりの経験とスキルが必要だし、
今は聴診器1つ、注射器1本で開業できる時代ではない。
莫大な設備投資も必要だ。
勿論、銀行はお金を貸してくれるが、
借りた以上、返さなければならない。
また、開院するには、周辺の病医院の分布や、
人口動静を精査して、
開業する場所を指定されることもあるらしい。
そういうことを何も知らず、
ただ目標は医者、だと続かない。
そもそも適性が問われる職業の最たるものだろう。
医者だった義父は、
息子2人は医者にならなかったので、
孫に当たるうちの息子に期待していたようだ。
本人も子供の頃は、ブラック・ジャックを読んで、
一瞬その気になった事もあったようだが、
高校になって進路を決める時に、
人の命を預かれるか、と考えたらしい。
自分は慌て者のところがあって、
命を左右する場面で、
失敗せずにできる自信が無い、
人の命を預かるのは怖い、と彼は言った。
自分には医者としての適性が無い、と判断したのだと思う。
まあ学力の問題もあるし(笑)、
奇跡的に入学できても、
国家試験まで勉強しまくらないといけないし、
医師免許を取得してからも、
1人前になれるまで、努力と勉強の連続だから、
私に似て怠け者の息子には無理な話なのは間違いないのだが、
それ以前に、医者という仕事を理解して判断した事で、
息子を見直したものだった。
話が脱線したが、
最初の疑問に戻る。
今回の傷害事件の犯人の高校生は、
何故医者になりたかったのか?
東大医学部に入れないのなら、
受験生を殺して自分も死んでやる、って、
他人の命も自分の命も軽過ぎる。
命を軽く扱う人間に、
最も向いてない職業を、何故目指したのか。
東海高校は医学部進学者の数だけを誇るのではなく、
医者を目指す、というのがどういうことか、
そこから教育した方がいい。
だが残念ながら、恐らく東海高校だけではなく、
多くの進学校と言われる所は、
偏差値が高い生徒には、
より偏差値の高いと言われる学校に行かそうとしたがる。
学部によって難易度に差があるので、
易しい学部にすれば、
ワンランク上の大学を狙える、という訳だ。
逆に医学部なら別カウントされるので、
医学部に行けそうな生徒には、
志望校のランクを落としても医学部を勧めたりもする。
本人の希望よりも。
まあ文系なら弁護士や税理士などの専門職を目指すのでなければ、
どの学部でも卒業後の進路に大差は無いが、
理系なら将来の職業に直結する事も多い。
つまりは一生を左右する選択になるかもしれないのだ。
教師はそこまで考えて進路指導をしているのだろうか?
昔、医学部に進んだ友人が大学時代に、
医者に向いてないんじゃないだろうか、と悩んでいた事があった。
でも医学部出て医者にならなかったら、
潰しきけへんしな~、と言って、
結局そのまま医者になった。
今、彼は、患者の話をよく聞き、
慕われる医者になっている。
学生時代に1度立ち止まって考えた事が、
医者としての彼に、プラスに働いたのではないか、と、密かに思っている。
医者になりたい若者は、
何故なりたいのか、をもう一度考えてみて欲しい。
親が医者だから何となく、という人もいるだろうが、
それでも、やはり使命感と責任感を持ってするべき仕事だと思うので。