「大名倒産」(2023年作品)感想 | 深層昭和帯

深層昭和帯

映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

前田哲監督による日本の時代劇映画。出演は神木隆之介、杉咲花、松山ケンイチ。

 

 

<あらすじ>

 

丹生山藩藩主一狐斎は、隠居を考えたもののろくな後継ぎがおらず、かつて妾に生ませた藩の鮭役人の息子小四郎を後継に指名した。突然殿様になった小四郎だったが、幕府に呼び出され、幕府への献上金未払いを責め立てられた。聞くと、丹生山藩の借金は25万両もある。

 

隠居していた一狐斎に相談したところ、藩をお取り潰しさせることで借金を踏み倒せると教えられた。藩主は当然切腹。一狐斎が家督を譲った狙いは、責任回避のためであった。死にたくない小四郎は、25万両もの大金を完済すべく動き始める。

 

そのためには緊縮財政を取るしかなく、支出を減らしながら、藩にあるものを次々に売却していく。売れるものは何でも売っていく小四郎。育ての親に会いに向かった小四郎は、養父が鮭役人の職を奪われ、土木作業に従事して家が荒れ果てているのを知る。

 

何かがおかしい。小四郎は、藩の立て直しに協力してくれた役人たちと、藩の金の流れを調べ始めるすると、一狐斎の命令で事業費が中抜きさせられているのを知った。裏帳簿を作らされていたのは、藩の勘定方の橋爪左平次。彼は切腹を考えていたものの、小四郎らの説得でそれを思いとどまる。

 

幕府に呼び出された小四郎は、公金横領を告発して証拠を提出。藩に資金を貸し付けていた両替商の天元屋から着服金を回収する目途をつけ、残りの借金は一狐斎から巻き上げることで借金返済を果たす。だが、藩の収入が少ないことには変わりがない。

 

そこに駆けつけてきたのが、育ての親であった。鮭を大々的に売り出すことに成功した彼は、塩鮭を名産品にして藩の収入を増やす道を小四郎に授けた。幕府もこれを認め、小四郎は藩のお取り潰しを回避することに成功した。

 

<雑感>

 

ここ20年くらいで急速に増えた、江戸時代のお金事情を巡る時代劇映画。昔は時代劇といえばチャンバラが主流であったが、よりリアルな侍、役人としての侍を描けるようになったのは、ひとえに地道な研究が進んだからだ。悪代官と商人が悪だくみするだけの時代劇は遠い昔のものとなった。

 

藩にとって大きな出費のひとつは参勤交代。この参勤交代もどんどんリアルな実情が研究により明らかになってきているそうだが、映画の中では経費節約のために野宿させられていた。藩に余計な金を貯めさせないための参勤交代だが、そもそも金がない藩がどうやって参勤交代を凌いでいたのかは、今後映画の題材になるかもしれない。

 

そういう面はいいのだが、この松竹映画は演出があまりにも酷く、リアルさとは程遠い出来になっている。金がない藩をリアルに描くためにはそれなりに金を使って再現しなければいけないのに、映画の予算がなくてそれができないという。情けない限りだ。

 

☆3.0。ギリギリで劇場鑑賞可能な合格ライン。でも実際にこれに当たったら別のにすればよかったかなと後悔しそう。