アキ・カウリスマキ監督によるフィンランドのドラマ映画。出演はサカリ・クオスマネン、カティ・オウティネン、アンドレ・ウィルム。
<あらすじ>
キャベツ農家のユハとマルヤは、孤児のマルヤを育てたユハがそのまま結婚した関係だった。そこに都会からシェメイッカが通りかかり、車の修理を依頼した。ユハはこれを引き受けたが、シェメイッカはその隙にまだ若いマルヤを口説いて必ず迎えに来ると約束して去っていった。
シェメイッカを好きになってしまったマルヤは、化粧などを覚えて彼を待った。しばらくしてシェメイッカが戻ってきて、ユハがいない隙に来るまでマルヤを連れ出した。途中でふたりは結ばれるが、シェメイッカの正体は女衒だった。
田舎育ちのマルヤは、売春のことなど知らず、客を取らされそうになると拒否したため、店の下働きにさせられた。騙されたことに気づいた彼女は列車で逃げ出そうとするが、シェメイッカの子供を妊娠しており、駅で倒れてしまう。マルヤは連れ戻されてしまった。
そのころユハは、ようやく復讐する決心を固めた。手斧を念入りに研いだ彼は、スーツを着てシェメイッカの店に乗り込み、用心棒を片っ端から殺していった。
シェメイッカの銃弾を受けながらも決して倒れないユハ。そしてついに斧で彼を殺害した。赤ん坊を抱いたマルヤを逃がしたユハは、よろめきながらゴミ捨て場まで逃げたが、そこで息絶えて死んだ。
<雑感>
これは別の配信会社の見放題にあった作品。フィンランドの作品ということであまり期待していなかったのだが、とんだ拾い物だった。
モノクロのサイレント風の映画で、科白音声は入っておらず、会話は字幕で伝えられる。音声はBGMのみ、情景と心情、どちらにもつけられている。効果音もところどころ使われている。
ユハが背広を着こんで田舎を離れるシーンは、彼の覚悟が伝わってくる。彼はもう戻らないつもりで愛着のある自分の村を懐かしみ、飼い犬がバスを追いかけてくる。彼は死ぬ気でいるとひしひしと伝わってくるのだ。
斧で殺していくといっても、残酷なシーンはほぼなく、滴る血などで仄めかされているだけだ。そういうところもサイレント時代っぽい。
☆5.0。個人的に気に入った作品。全体的に過不足がない。