「美しき棘」(2010年作品)感想 | 深層昭和帯

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映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

レベッカ・ズロトブスキ監督によるフランスの恋愛映画。出演はレア・セドゥ、アナイス・ドゥムースティエ、アガト・シュレンカー。

 

 

<あらすじ>

 

もうすぐ17歳になるプリュダンスは母を亡くしたばかり。父は海外出張、姉は母がいない自宅を離れてしまう。広いアパルトマンに一人悶々と過ごすも、刺激を求めて万引きをしたり不良少女のマリリンを通じて違法バイク・レースの世界に入り込む。

 

同じ年頃のフランクと恋心なく彼と一夜を過ごすも心は決して満たされない。プリュダンスの身勝手な態度に激怒したフランクは別の少女と街の中をバイクで走り出す。だが、その直後にフランクは事故を起こしてしまう。

 

帰宅してみるとそこには死んだはずの母親がいた。プリュダンスは、母が死んだのは自分のせいなのか悩んでいたと涙ながらに訴える。そして彼女は、母の形見の補聴器をつけて、世界に耳を澄ませる。

 

<雑感>

 

世界との関わりを上手く構築できないひとりの少女の話。最後に登場する母親はもちろん彼女の見た幻で、母親に与えられてばかりだった少女の喪失感がいかに大きかったかを物語っている。母の死後、母のように自分に何かを与えてくれる人を探したが、そんな人間がいるはずがない。

 

仲良くなった人は死んでしまう。友人との関係は難しい。誰も自分を理解してくれない。そんな少女に母親が残してくれた形見の品が補聴器。よく聞いて、よく見て、よく考える。誰しもそこから始めなければならない。

 

☆4.0。子供から大人になるのは難しい。でもそれは、大人の役割を引き受けたただの子供なのだ。役割を受け入れるか受け入れないかだけの違いだったりする。