「七つの大罪」(1952年作品)感想 | 深層昭和帯

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映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

ジョルジュ・ラコンブ監督他によるフランスのオムニバス映画。

 

 

<あらすじ>

 

貪欲と憤怒:貧乏クラリネット奏者が財布を広い大金を手に入れた。彼は10%の報酬目当てに落とし主に届ける。そのころ落とし主は財布を無くしたことを妻のせいにしていた。夫婦げんか中に真珠のネックレスを床にぶちまけてしまう。そこに金が戻ってきた。強欲な男は報酬を支払わなかった。妻の美容院代もケチったために、戻った金は窓から捨てられてしまう。そのころクラリネット奏者は、靴に入っていた真珠を見つけ鑑定してもらったところ、ちょうど報酬分の金額になった。

 

怠惰:天国は忙しすぎた。そこで地上を観察したところ、人間がせわしなく働いていた。これではいかんと休暇中だった怠惰の神を呼び出し、地上に派遣した。たちまち地上は怠け者だらけとなり、あまりにひどいことから怠惰の神に対し、半分くらいの力で頼むと命令する。

 

邪淫:13歳の少女が妊娠したと告白した。母親は驚いたが、彼女は男の人が座ったまだ温かい椅子に座ると妊娠すると思い込んでいただけだった。母親はホッとすると同時にいやらしい気持ちになってしまい、店の壁に絵を描いていた画家と浮気をする。娘はそれを知っていた。

 

嫉妬:猫をネコっ可愛がりしている画家がいた。いつも猫のことばかり心配している。妻は嫉妬して猫をベランダから落とした。それを知った画家は、妻を激しく罵り追い詰める。

 

貪食:医者は車が故障したことから近くの家に助けを求めた。スープと自家製チーズを振舞われた彼はあまりの美味さに感嘆の声を上げる。その夜、美しい妻は彼を誘ってきた。しかし医者はそれを断り、自家製チーズにむしゃぶりついた。

 

傲慢:変わり者の母娘がいた。伯父は母親に縛られているのが心配でならない。彼は、電気代として3000フランを置いていった。娘は伯父の勧めでパリに行くことは断ったが、誘われているパーティーには参加したいと言い張り、母娘は喧嘩になった。3000フランでストッキングを買った娘は、古臭いドレスでパーティーに参加した。彼女はパーティーのサンドイッチを母親の土産にしようとこっそり盗んだ。そのとき、ある婦人がエメラルドが盗まれたと騒ぎ出した。娘はバッグの中に忍ばせたサンドイッチを見つけられるのを恥じ、自分が盗んだとウソをついて会場を後にした。

 

知られざる罪:それは妄想すること。

 

<雑感>

 

オムニバス映画の感想記事は長くなる。この作品はどれも面白かったからいいが、日本の映画監督のオムニバス映画とか地獄だからな。

 

傲慢の回で傲慢だったのは、落ちぶれて虚勢を張るしかない母親でもなく、母親の制止を振り切ってパーティーに出た娘でもなく、上流階級の人々というオチなのだが、落ちぶれると虚勢を張って傲慢に振舞うしか自分を保つ手段がないという知見は感心した。ホント、そうだね。

 

物語として良くできていたのは貪欲と憤怒の回。正直で貧乏な男と、守銭奴の男の対比を上手くまとめていた。

 

最後の知られざる罪の回は、いわくありげなシチュエーションを見せておいて、それは結局絵のモデルが演じていただけなのだが、いわくをあれこれ考えてしまった観客に、それも大罪ですよと提示して軽快に終わる。素晴らしい出来だったね。

 

☆5.0。傲慢の回の娘の最後の行動が、母親と同じ虚勢を張るしかないところに追い込まれているのがなんとも悲しい。