ドゥイリオ・コレッティ監督によるイタリアのドラマ映画。出演はシルヴァーナ・マンガーノ、ヴィットリオ・ガスマン、アメデオ・ナザーリ。
<あらすじ>
山小屋に住むオルソラは、青年ピエトロに恋をした。ところがオルソラの兄ロッコはこれを許さなかった。それでも若いふたりはロッコの目を盗んで逢引きを重ねていた。
そんな折、村で殺人事件が起きた。オルソラと会っていたピエトロにはアリバイがなく、ロッコも彼じゃないとは証言しなかったために殺人犯として刑務所に入れられてしまう。オルソラが恋しいピエトロは、脱走して会いに来た。そして警官に射殺された。
ピエトロ死亡の報を聴いた母親は卒倒してそのまま死んでしまった。ピエトロにはロザリアという幼い娘がいたが、彼女は家族を失い施設に入れられた。
数年後、ロザリアは美しい娘となっていた。ロッコの家に引き取られた彼女は、ロッコの息子サルバトーレ、ロッコを誘惑して手懐けた。サルバトーレが結婚を申し込むと、彼女は自分の素性を打ち明け、すべてを話した。
それを聴いたオルソラは、兄のせいでピエトロが死んだことを知った。ピエトロの死後、結婚もせず家のために尽くしてきた彼女の怒りはすさまじく、ロッコを撃ち殺した。ロッコは駆け付けた村人に、誤って自分で撃ったと話して妹を庇った。
<雑感>
家名というほどの家とは思えなかったが、なぜかロッコは家名を重んじて好き放題振舞う。彼に感情移入する人間が昔はいたのかどうか。ちょっと時代がズレすぎていて脚本に納得いかない部分があった。
物語はよくある復讐劇なのだが、最近の作風ならば主人公はロザリアになる。美しい女性が、家族を殺した男とその一家に復讐するわけだ。だがこの作品は、主人公がロッコ。ロッコのことばかりが描写されている。復讐者のロザリアすら添え物的な扱いなのだ。
ロッコを主人公にして彼の身上を事細かく描写するのに、彼の考え方などを事細かく描写しているわけだが、それがいわゆる家父長制度的な話ばかりになる原因になっている。最後に死ぬ際も、家名を重んじて妹を庇う。謝罪の言葉すらない。
復讐される側の人間を主人公にしているから、いろいろおかしなことになっている。美しい女性復讐者といういまでは当たり前の設定すら許されない時代だったのだろうか?
☆3.5。ロッコに対してヘイトの溜まる話でしかない。