「アリバイ」(1937年作品)感想 | 深層昭和帯

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ピエール・シュナール監督によるフランスのサスペンス映画。出演はエリッヒ・フォン・シュトロハイム、アルベール・プレジャン、ジャニー・オルト。

 

 

<あらすじ>

 

エレーヌは、パーティーで知り合ったヴィンクラー博士という男から、一緒に帰宅したことにしてくれないかと頼まれた。報酬は2万フラン。大金欲しさに、彼女は依頼を引き受けた。男は警察に追われているらしく、朝まで彼女の部屋で過ごした。

 

ヴィンクラーは何者かに追われ、車内から運転手を銃撃して殺していた。警察はヴィンクラーを怪しんだが、エレーヌの証言により捜査は行き詰った。エレーヌは警察から、ヴィンクラーがゴードン殺害容疑を掛けられていると知らされて動揺する。

 

真実を話すべきではないかと取調室に戻ると、そこにはヴィンクラー博士がいた。警察は彼女の動揺を見逃さなかった。エレーヌは博士に金を突き返し、実は男と一緒に帰宅したから証言させると話した。エレーヌが手を引きたがっているとみた博士は、当日エレーヌと一緒だった男を殺した。

 

エレーヌは博士を裏切ることができなくなる。博士は狡猾な男だった。エレーヌの味方になってくれるのは、アンドレという男だけだった。だが、アンドレは警察の潜入捜査官だった。エレーヌの信用を得た警察は、彼女の前でわざとアンドレを逮捕してみせる。

 

アンドレに危害が及んだと勘違いしたエレーヌは、警察に駆け込んで偽証のすべてを白状した。そのあとすぐにアンドレが潜入捜査官だと知った彼女は絶望する。すべてを悟られた博士は自殺。エレーヌとアンドレは、事件後に顔を合わせて愛が真実だったことを確かめる。

 

<雑感>

 

無理矢理事件に巻き込まれ、偽証を強いられた女性が主人公。彼女はお金に困っていて、2万フランという観たこともない大金に目がくらんで引き受けてしまう。最初は軽く考えていたのか、翌日には早速お買い物。家賃を気前よく前払いする。こういう部分は、古い映画のフォーマットなのだ。短い時間でエレーヌの心理を演出する手段として話が組んである。

 

昔の映画のフォーマットは、テンポが速くて独特。最近の作品ならもっとエレーヌの心理を詳細に詰めていくのだが、簡単な設定でエレーヌの心理を簡単に説明し、あとはエレーヌの震え声の演技で緊張感を盛り上げる。さっそくお金を使ってしまうシーンは、説明ではなく描写なのだ。

 

古い作品を見るときは、その時代の映画のフォーマットを理解しないとなかなか楽しめないものだ。多くの作品を鑑賞して、知見を高めることをお勧めする。

 

☆4.0。これはミステリー映画としてかなり優秀。