「永遠の散歩」(2019年作品)感想 | 深層昭和帯

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映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

マティー・ドー監督によるラオス・スペイン・シンガポールのSF映画。出演はヤナヴッティ・チャンタルンシー、ポー・シラッサ、ヌーナファ・ソイダラ。

 

 

<あらすじ>

 

主人公の男は母親が生きている間に事故で死にかけた女を見つける。その女の手を取り、励ますようなことをする。以来、その女の霊が見えるようになる。一方で、貧しい生活をしていたために、その女の持ち物を奪う。

 

母の死後は寺に預けられるが、手癖の悪さは変わらず、坊主にはならないまま家に戻る。そのときすでに父親もいなかった。家に戻ると、過去の自分と話ができるようになる。歳を取った男は、幼いころの自分に、盗んだ金で母親の薬を買って飲ませるようアドバイスするが、幼いころの自分は欲望に負けてしまい、言いつけを実行しない。

 

その後、ある徘徊老人を殺して金品を奪っていたことがその娘にバレてしまい、脚を刺される。最初に死体を発見した娘や、過去の自分と向き合うのが嫌になり、家に火を点ける。

 

すると、時間はあっという間に過ぎ去り、廃墟になったかつての自分の家の前に送り込まれる。そこには焼け焦げた頭蓋骨があり、男は今度は金品を奪わず、頭蓋骨を埋葬する。

 

<雑感>

 

ざっとこんな感じの内容。要するに、盗み癖のある貧乏な家の子供が、死体から物を盗む味を覚えてしまう。その死体になった女性の霊がずっと見えるまま生活するが、男は最初に味わった盗みの味が忘れられずに、村の女性を安楽死させては物を盗んだ。

 

一方で自分の母親をみすみす死なせてしまったことは後悔しており、過去に遡って何とか未来を変えようとする。何度も何度も子供のころの自分に「薬を買って飲ませろ」と指示をする。少年時代の彼は、物を盗む味を覚えてしまい、彼が悪さをするたびに未来が変わる。

 

盗み癖が治らない彼は、大人になってからも同じことを繰り返す。あるとき、徘徊老人の女性を殺したことがバレてしまい、復讐されその娘に脚を刺される。脚を引きずり家に戻ると、そこにはかつて死体から物を奪い、埋葬もしなかった女性の霊と幼いころの自分がいる。何も変えられない、オレは弱い男だと絶望して火を点ける。

 

最後に、男の家にあった頭蓋骨が誰のものなのか、オレにはちょっとわからなかった。幼いころの自分なのか、埋葬しなかった女性のものなのか。自分に絶望して火をつけたのだから、自分の頭蓋骨なのかもしれない。でもそれだと、埋葬する意味が分からない。

 

男は金欲しさに死体の指を折って結婚指輪を奪う鬼畜なのだが、その死体の女性は人生の最後に血まみれの手を取ってくれたことに感謝して、彼に霊力を授けて生まれ変わるチャンスを与えたのだろう。結局それを生かせなかったわけだから、女性の頭蓋骨かもしれない。

 

☆3.0。少しも成長しないという。