「アガサと深夜の殺人者」(2020年作品)感想 | 深層昭和帯

深層昭和帯

映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

ジョー・スティーヴンソン監督によるイギリスのミステリー映画。出演はヘレン・バクセンデイル、ブレイク・ハリソン、ジャクリーン・ボーツウェイン。

 

 

<あらすじ>

 

1940年、ロンドン。12冊のポワロシリーズを書いたアガサ・クリスティだったが、戦渦にあって生活は困窮していた。アガサはお金を得るべく、熱狂的なファンである中国人のフランキーに最後のポワロ作品の原稿を2万ポンドで売る決意をする。

 

ある知人の協力を得て、ホテルで原稿の売買取引を始めた時、空襲警報が鳴り響き、アガサたちは他の客と共に警察官の指示で地下室に避難する。密室状態の中、アガサはバッグから原稿が消えていることに気づく。それを知った買い手は発作で亡くなるが、彼のポケットからは2万ポンドが消えていた。

 

密室での出来事だったため、警察が持ち物検査をする。するとひとりのカバンの中から原稿が発見された。アガサは帰ろうかと思ったが、彼女もまた現金強奪の容疑者だった。地下のシェルターの中に閉じ込められ、その場にいた女性警官の指示に従わされた。

 

そうこうするうち、またしても被害者が出た。原稿には「それをよこせ」の文字が。この中に犯人がいるのは間違いなかった。そこでアガサは、とにかく殺人を止めてくれたら現行は渡すと宣言する。すると警官は「2万ポンドよりも命が大事」と口を滑らせた。

 

取引額のことは誰にも知らせていなかったため、彼女が犯人だとわかった。売却証書に署名すると見せかけたアガサが女性警官を罠に嵌め、独りになったところをアガサのボディーガードのトラヴィスが射殺して事件は解決した。

 

だがこれで終わりではなかった。アガサはフランキーの持っていた2万ポンドはトラヴィスが持っているはずだと見抜いていた。そして、トラヴィスに原稿を売ると告げ、彼もそれに同意した。トラヴィスは盗んだ金で原稿を手に入れた。

 

だが彼は、思っている以上に欲張りであった。アガサを殺して2万ポンドも手に入れようとしていたのだ。だがアガサもそれは見抜いており、トラヴィスが出した毒入りの酒を彼のものとすり替えた。案の定トラヴィスは苦しんで死んだ。

 

アガサは、偶然知り合った立会人に金を渡し、原稿を持って帰っていった。

 

<雑感>

 

アガサ・クリスティーが主人公になった映画作品を3作視聴した。これらはどれも、アガサに起きた現実の出来事の背景に何があったのか想像して作られた創作物で、アガサが数日間行方不明になったり、ナチスの空襲によってシェルターに閉じ込められたりしたのは事実のようだ。また、2番目の夫と中東で知り合ったのも事実だ。

 

アガサが探偵役になっているのだが、キャラクターとして確立しておらず、魅力が薄かったのは残念だ。作家の周りで殺人事件が起こりまくるのもしっくりこない。内容がポリコレに配慮されまくっていて、時代にそぐわない。行き当たりばったりの展開ばかりで、事件性に乏しい。

 

そうした部分が良くなった点だ。主人公はアガサ・クリスティーでも、作者はただの脚本家なのだから仕方がないところだ。やはりアガサ・クリスティーの才能は真似できるものではない。

 

☆3.0。3作ともギリギリ劇場鑑賞に耐えられるレベルといったところだ。