「009 RE:CYBORG」(2012年作品)感想 | 深層昭和帯

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映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

監督:神山健治、制作:Production I.G、サンジゲン。

 

 

<あらすじ>

 

世界各地でテロ事件が頻発していた。共通点は「彼の声」なるものだった。サイボーグたちはそれぞれ独自にテロ事件の真相を追いかけていた。そんななか、島村ジョーもた「彼の声」に導かれ、テロを実行しようとしていた。

 

彼の異変を察知した00ナンバーサイボーグたちは、あえて彼を襲撃して記憶を蘇らせる。サイボーグたちは27年ぶりにギルモア博士の元に集った。テロの黒幕は、死人をサイボーグ化して自爆テロを引き起こしているサミュエルキャピュタル社。博士はジョーの記憶から「彼の声」を探る。ジョーは「彼の声」を、ギルモア博士の声と認識していた。

 

00サイボーグらの動きを察知したかのように、世界中で「彼の声」を聴く人間が続出。軍人らもまた「彼の声」を聴き、武力行使に動き出す。そして敵は、00ナンバーサイボーグを粉砕するためにサイボーグ軍団を送り付けてきた。攻撃を潜り抜けたジョーは、敵の本体に迫る。

 

「彼の声」は、人類の救済を願っていた。ジョーはその願いを別の形で具現化し、世界の破滅を救った。

 

<雑感>

 

これは随分前に見た作品ながら、感想記事を書いていなかった。適当なことを書き連ねることはできるが、いろいろ解釈できる内容なので、何となく書く気になれなかったのだ。この作品を好きな人は多いだろう。石ノ森章太郎が関係していない作品なのに、石ノ森章太郎っぽい展開だからだ。

 

一方で、アニメ版のサイボーグ009が好きな人には不評ではないか。アニメ版は原作ほど意味不明な内容ではなかったからだ。もっとわかりやすく00ナンバーサイボーグたちとギルモア博士の物語にしてほしかった層はあるはずだ。CGが嫌いだって人もいるかもしれない。

 

すごく評価の難しい作品なのだ。

 

20年くらいアニメを見ない人生を送っていて、歯の治療をきっかけにレンタルで視聴したのがこの作品だ。だから、セル画風のフルCGを見たのもこれが最初。だから、正直戸惑いはあった。でもすぐに慣れるし、映像は素晴らしい。これからはCGなのかなぁと、戸惑いを打ち消すように自分を納得させた。

 

また、現代にアップデートされた舞台設定にも戸惑った。サイボーグを扱えば、AIとかインターネットとか、サイバースペースと折り合いをつけねばならず、新しく付け足す設定だけで当初の「サイボーグ009」の方向性から外れる懸念もあった。それらの「納得いかない感じ」をすべて吹き飛ばしてくれる内容ならよかったのだが、前述の通り、内容は石ノ森章太郎っぽいのだ。

 

「サイボーグ009」は、超能力ブームのころの作品で、超能力を科学の力で実現した世界が舞台になっている。00ナンバーサイボーグたちはあくまで「超能力者」として描かれているのだ。00ナンバーサイボーグたちは、「攻殻機動隊」の義体とは違う。AIで動いていても、AIではないのだ。本来的な意味でのサイボーグと、00ナンバーサイボーグは違うのだ。

 

まぁこんな納得いかない気持ちを抱えながらの視聴であった。それは今回の視聴でも変わらなかった。「この方向性でいいのか?」という根本的な疑念が拭いきれない。

 

ただ、この作品の映像は素晴らしいと思っている。YouTubeには、この映像に、アニメ版2期のOPを付けた動画が公開されていて、目にするたびに感動する。アニソンは偉大である。

 

個人的な見解として、方向性に納得がいかない。いわゆるサイボーグと、00ナンバーサイボーグの違い、つまり「超能力」を強調してほしかった。まるで系統の違うテクノロジーが、1960年代に存在して、ほぼロストテクノロジー化しているものの、いまだに世界平和のために戦い続けているとか、彼らの「違い」があっても良かったと思うのだ。

 

☆3.0。001の声が福圓美里じゃなかったのもマイナス。