「狂ったバカンス」(1962年作品)感想 | 深層昭和帯

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映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

ルチアーノ・サルチェ監督によるイタリアのドラマ映画。出演はカトリーヌ・スパーク、ウーゴ・トニャッツィ、ジャンニ・ガルコ。

 

 

<あらすじ>

 

会社経営で裕福なアントニオは遊び人で鳴らし、愛人をローマに囲っていた。そんな彼が若者グループに拉致され、金をせびられる事態に陥った。アントニオは無理に抵抗せず若者らに従った。だが、彼は恐れていただけではなかった。若者グループの中にいる若いフランチェスカをものにしようと考えていたのだ。

 

だが、若者グループはある時突然いなくなった。ふと我に返った彼は、寄宿舎に預けてある息子の元へ向かう用事を思い出した。

 

<雑感>

 

中年期の金と時間を持て余した男が、ふと青春時代の中に放り込まれてしまうが、中年ゆえに若者グループからは阻害され、その中にいるつもりでいるのに混ざり合えないもどかしさの中、その時間が突然終わり、現実に戻されてしまう。

 

映画というのは90分から120分の間で観客の心にさざ波を立てることを目的に作られている。この映画の場合は、遊び人の、つまりいつまでも子供のような暮らしをしている中年男に、現実を突きつける内容になっている。

 

いつも、20歳までが青春時代で、40歳までが朱夏、60歳までが白秋、そのあとが玄冬だと書いているが、アントニオは39歳、働き盛りの時代である朱夏が終わりそうになっているのだ。41歳から60歳までの白秋を生きる準備は彼にはできていない。

 

若者グループの美しい女性フランチェスカは、個人のキャラクターというよりは、「若さゆえの傲慢さに満ちた女性」の象徴のような女性だが、彼女もまた青春から朱夏へと移る準備を怠っている。若い時代に引きずられたふたつの世代の愚昧な振る舞いが描かれた作品である。

 

☆4.0。アントニオに感情移入して失われた青春に想いを馳せるようではいけないのである。