「ボン・ボヤージュ」(2006年作品)感想 | 深層昭和帯

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映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

ジョン・フォーセット監督によるカナダのサスペンス映画。出演はフェイ・リプリー、ベン・マイルズ、ダニエル・ライアン。

 



<あらすじ>

夫ニールと妻リジー、それに娘のレイチェルと息子のデイビッドがキャンプしながらフランスの親戚の家を目指していた。キャンプ場で白いバンのイギリス人家族と仲良くなり、一夜を一緒に過ごした。すると翌日から同じバンにあとをつけられるようになった。煽り運転をされ、タイヤをパンクさせられる。彼らも家族連れだったが、子供は「あれはママじゃない」と口にする一家だった。

その子の名はトビー。検問をしていた警察にトビーのことを尋ねられた一家は、キャンプ場であったことを素直に話した。ところがその夜、キャンプ場の雰囲気が気に入らなかった彼らは夜間に移動することに。すると途中でトビーが彼らの車の前に立ち塞がり、気づくのが遅れて撥ね殺してしまった。

車も事故を起こし、立ち往生していたところ、わずかな隙を突かれて娘のレイチェルと息子のデイビッドを白いバンの夫妻に攫われてしまった。子供を取り返したい夫妻は翌日レッカーを頼んだ。だがそこで作業員にトビーの死体を見られてしまい、慌てて車を急発進させた。

親戚の家に辿り着くが、話を信じてもらえない。ニールとリジーは子供を探すことに。イギリス人夫妻からもらったローカルワインを手掛かりにその場所を目指すことになった。

そのころレイチェルとデイビッドは、イギリス人夫妻の家らしきところで子供のふりをさせられていた。イギリス人夫妻サイモンとリンダには娘と息子がいたが、癇癪持ちのサイモンがふたりを殺してしまっていた。レイチェルとデイビッドは、おとなしく従い救出を待つことにした。

手掛かりからサイモンの家の近くにやってきたニールらも近所の人からその話を聞き、サイモンの子供が埋葬されている墓地に向かう。そこで誘拐犯の苗字ホルダーを知った。

ホルダー夫妻のところに、キャンプ場で一緒だった若者ニコラスが訪ねてきた。ニコラスはレイチェルと特に親しくなっていたので、閉じ込められた地下室からレイチェルは必死に助けを求める。だがその声は届かず、ニコラスは帰ろうとした。そのとき電話が鳴った。その電話をレイチェルが掛けたと思い込んだサイモンは、ニコラスを殴り殺した。

サイモンのめちゃくちゃな行動に嫌気が差した妻のリンダは、夫がニコラスの死体の処理をしている間に子供たちを逃がした。同じころ、ニールとリジーはホルダー夫妻の家に迫っていた。ニコラスが乗ってきたバンが停めてあるのを見かけたニールは、近くを探す。そこにサイモンが襲いかかり、殴って気絶させる。さらにリジーにも襲いかかって娘を殺したときのように溺死させようとした。

気がついたニールがサイモンに飛び掛かり、川に放置されていたゴミに突き刺して殺した、妻のリジーは無事。さらに子供たちもやってきて家族はようやく再会した。

<雑感>

カナダのケベック州に住む夫妻が、妻の実家の親戚宅を訪ねて車で旅行中に大変な災難に見舞われる作品。もともとはテレビの2週連続テレビドラマで、それを2時間11分に再編集してある。1時間半のドラマ2本だとCMを除いた時間は1時間少々だから時間はぴったり合う。

海外サイトでは高評価になっており、確かにサスペンスの盛り上がりはすごい。ホルダー夫妻のことは終盤にニールらが墓を訪れるまで名前がわからず、謎の人物として描かれ、後半で一気に情報が開示される。

夫のニールは妻の実家のフランスを旅行することに乗り気ではなく、仕事の電話を掛けたりせわしない。これは英語圏の人間に特有の現象だが、英語が通じない場所に行くと極度のストレスがかかるタイプなのだ。ケベック州はフランス語圏だが、ニールの会社の公用語は英語らしく、仕事にかこつけて英語を聞いていたいのである。

サイモン・ホルダーも似たような境遇で癇癪が激しくなったのかもしれない。

とにかく情報開示のタイミングが素晴らしい。前半のサスペンスも見事。後半は一気に畳みかけて子供との再会の場面などは早足になっているが、評価を下げるほどのことではない。ニールが終始イラついている原因が「英語が通じない場所にいることからくるストレス」というのは、ケベック州のことを知っている人ならすぐに気づくはず。

アマゾンの評価は低いが、とても面白い作品。ニールが怒っている原因を理解できないと「頭の悪い夫婦が喧嘩している」という間違った評価になる。
 

☆4.2。フランス語のタイトルが伏線になっているのだ。