「青いブリンク」(1989年作品)第39話・最終回 感想 | 深層昭和帯

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映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

原作:手塚治虫、監督:原征太郎、シリーズ構成:柳川茂、制作:手塚プロダクション。



第39話 果てしない旅 さようならブリンク

グロス皇帝の正体--それはカケルの父・春彦自身だった。グロスは、春彦の悪い心だったのだ。動揺し、思い悩むカケルに、仲間たちは父さんの気持ちを分かってやれと言い残し、バスに乗り込んだ。父親を探す旅は終わった。冒険の終わり、それはブリンクと別れる時がきた、ということだ。

カケルは森の中で眠りから覚めた。春彦はカケルを助け、家に連れ帰った。そして「青いブリンク」という新作童話を彼に与えた。

<雑感>

みんなの悪い心がグロス皇帝の正体というのはちょっと詰めが甘い設定だったとは思うが、丹波、ニッチとサッチ、キララ姫、ブリンクと別れるシーンは感動的だった。

作者である四季春彦の悪い心がグロス皇帝だとした場合、作者は良い心と悪い心で作品を書いていることになってしまい、観察者としての作者の立場が揺らいでしまう。最後はグロス皇帝は誰の心の中にもある、それに立ち向かうには勇気が必要としていたが、恐怖に支配されるのは悪い心のせいなのだろうか?

悪い心はむしろ人間を人間たらしめている常識や慣習を疑い、心が自由になることによって生じ、歯止めが利かなくなることだ。自由の代償が悪心ではないのか。悪心と戦うために必要なのは勇気ではなく、常識や慣習がなぜ生まれたのか理解してそれに従うこと、つまり自由の一部を放棄することだ。

自分の自由をどこまで放棄することに耐えられるかが悪心と戦う手段であり、それは勇気とは関係ない。勇気が必要なのは、自由を絶対的な価値だと思い込み、勝手なふるまいをする人間と戦うときだ。

やはり詰めが甘い作品であったが、みんなで一緒に旅をする雰囲気は最高であった。