「疑惑」(1982年作品)感想 | 深層昭和帯

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映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

野村芳太郎監督による日本のサスペンス映画。出演は桃井かおり、岩下志麻、鹿賀丈史。

 



<あらすじ>

富山の酒造会社社長白河福太郎が死んだ。後妻の球磨子は事故現場から抜け出して助かったが、彼女には前科があったために警察に疑惑を掛けられた。目撃証言によって逮捕された球磨子の弁護には佐原律子がついた。佐原は球磨子の経歴を調べた。若くしてホステスになった彼女には犯罪の影が付きまとっていた。

公判が始まった。検察は球磨子による殺害を主張。弁護側は白河福太郎による運転ミスを主張した。弁護側は目撃証言の曖昧さを訴えた。さらに多額の保険金は、次々とトラブルを起こす球磨子に業を煮やした白河福太郎の親族が、中学生のひとり息子に全財産を生前贈与したためだと証拠を出した。

検察が証人にウソの証言を持ち掛けていたことで、裁判は白河福太郎が無理心中を図った可能性があるとして検察の訴えを退けた。しかし球磨子は、もし白河福太郎が先にやらなければ、自分が殺していたかもしれないなどと釈放パーティーでうそぶき、弁護士の佐原を呆れさせた。彼女が北陸一の毒婦との話は、まんざら嘘ではなかったのだ。

<雑感>

ようやくまともな作品を視聴。毒婦球磨子を演じた桃井かおりがはまり役。ねっとりした喋り方が不快で、でも田舎の会社社長などが誑し込まれる妖艶さも同時に出している。個性派俳優というのはどの役を演じても同じであることから全盛期にはアンチが多かった女優でもあったが、演技素人のアイドルばかりが映画に出るようになってみると、個性的な彼女がいかに重要であったのかよくわかる。

弁護士の佐原役の岩下志麻も存在感があって、北陸の小さな酒造メーカーで起こったお家騒動が見事に描かれる手助けをしている。やっぱり、本物の女優や俳優がいることが、映画業界の生命線だったんだね。

☆3.8。古い作品で、内容も2時間ドラマっぽいのだが、映画俳優が出演していることで映画として成立している。この感覚がわかる人っているだろうか。同じ物語、同じ脚本でも出演者の豪華さで映画とテレビに差が出るという感覚。フィルム時代は特に映像面でテレビと映画には大きな差があった。