「聲の形」(2016年作品)感想 | 深層昭和帯

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映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

山田尚子監督による日本のアニメ映画。制作は京都アニメーション。

 

 

<あらすじ>

 

退屈が嫌いな石田将也は、やることがエスカレートして友人を失いつつあった。そこに聴覚障碍者の西宮硝子が転校してきた。彼女とは文字を書いてコミュニケーションを取らねばならない。最初はみんな筆談に丁寧に対応していたが、徐々に面倒になってきた。

 

硝子を構うようになったのは将也だった。彼は執拗に硝子を虐め、高価な補聴器を何度も壊した。総額が170万円になったとき、硝子の母親が学校に相談して問題が発覚。虐めに加担していたクラスメイトの責任をすべて背負う形で将也の母が全額賠償を行い、やがて硝子は転校していった。

 

障害者をイジメていたとのレッテルを貼られクラスから孤立した将也は、悶々としたまま自殺願望を抱くようになり、いつか硝子に誤ってから死のうと手話を習い始めた。それがきっかけで硝子と再会した彼は、謝罪はせず、交際を申し込んだ。

 

将也はバイト代を溜めて母親に170万円を弁済した。母は息子に自殺はするなと釘を刺した。将也は彼女のために何かできないかと考え、小学生のころ彼女を庇って虐められた佐原みよこを探し出して再会させようとした。それはとてもうまくいったが、かつての仲間を再会することが多くなり、責任問題になったとき、やはり他のメンバーは逃げるのだった。

 

硝子と将也の仲は近くなり、硝子の母親にも認められたものの、ある日硝子は発作的に自殺を図る。助けようとした将也が変わってベランダから落ち、水の中に転落。昏睡状態となる。入院した彼は昏睡状態となり、周囲は硝子を警戒して会わせようとしなかった。

 

硝子は将也が死ぬ夢を見た。将也もまた不安に襲われて病室を抜け出した。ふたりは出会い、今度こそ本当の気持ちを伝えあう。そして将也は高校の文化祭に硝子を招待する。小学生のころの様々な人のわだかまりは少しずつ解消していった。

 

<雑感>

 

この映画の感想記事を書いていたとき、現在のような記事のフォーマットが出来ていなかったので、改めて書き直すことにした。

 

山田尚子にとって3作目の劇場公開作で、一般作としては初の作品となる。それまでの2作は、深夜アニメの劇場版だった。

 

人気原作を初めてアニメ化するとあっていろいろ心配していたのだがそれらはすべて杞憂に終わり、素晴らしい作品に仕上がっている。

 

個人的にこの作品は、前半部分に比べて後半が弱いと感じており、将也の贖罪の気持ちと恋愛感情がないまぜになった心理状態は、作品を曖昧にしてしまった感は否めない。ただ、高校生なんてそんなものだとも思うので、曖昧さが違和感になったわけではない。

 

硝子もまた受け身すぎ、将也の贖罪と恋愛感情に反応するだけだ。全体的にキャラクターの作り込みは甘い。作家がイメージ先行型なのだなと邪推してしまう。

 

将也の自己否定に感情移入できる人間にとっては、こんなに都合の良い人物配置はない。あれだけの虐めをやって、許され、またまで開いてくれるのだからチョロいったらない。「謝らなくていいから死んでくれ」と言われてもおかしくなかった。

 

☆3.4。自己憐憫に酔いしれるタイプの人間が好きそうな作品。