“私人間の諸々の条件の差異・格差に国家は介入すべきではない。これらの差異は、偶然的事情から生じたものものも含まれるが、大半は、各自の努力の多寡を反映したものである。また、成功者への資源集中は、資源を効率的に利用できる能力の高い者に資源をゆだねることによって、社会全体の資源の利用効率を引き上げ、ひいては社会的総効用(効用の社会的総計)を増大させるだろう。”
メリトクラシー(能力主義)の神話とでも呼ぶべきこの発想が、対立する2つの立場の一方である。これは、政治的解放を直ちにそれが人間的解放であると取り違える立場にも通じている。
しかし、このような神話が現実にもたらす帰結は、社会的総効用の増大のもとでの効用の偏在(より適切な指標を用いるならケイパビリティの偏在)、すなわち格差の拡大である。格差の拡大は、ケイパビリティが低下する層の社会的排除を生む。ケイパビリティの低下が、これらの層の社会への適応を妨げアノミー状態をもたらし、高ケイパビリティ層も含めた社会総体に社会不安が広がる。
それだけではない。ケイパビリティの低下がある限界を超えて社会的に広がるなら、労働力再生産の撹乱が生じることになる。この撹乱は、人口再生産の停滞という量的側面と労働技能向上の困難という質的側面の両面において現れる。それは、結果的に社会総体の物質的富の停滞や縮減へと至るだろう。
メリトクラシーの神話がもたらした社会の衰退そのものは覆い隠しようもない。ところが、それがメリトクラシーの神話によって齎されたことを隠ぺいするために、資本の勢力は、さらにもう一つの神話をねつ造する。「害国人」神話である。そこから「生活保護」などへの攻撃が生まれ、メリトクラシーは強化される。
出生、教育、職業の差異が、極端に大きな生活水準(ケイパビリティ)の違いや、そうした違いの固定化がもたらす場合は、この差異は、是正されるべきである。しかし、問題は、これらの差異はいかにして是正されるべきかということである。
メリトクラシー神話と対立するもう一方の立場であるコーポラティズムの思想と実践が、 コーポラティスト国家として具現化されている。しかも、それは私人間の差異と格差に対する公共的配慮の一形態と考えられている。
ところが、コーポラティスト国家は、あからさまな性別職域分離や男性正規労働者とそれ以外の労働諸階層との間の二重労働市場や福祉受給権おいて女性が男性に従属すること、家庭責任が専ら女性の肩にかかることなど、実は、諸々の格差を維持再生産する体制以外の何物でもない。
国家は、市民社会における差異と格差を自らが取り扱うべき問題と意識し、積極的にそれらの諸事情に介入し、それらの差異や格差を自己の管理下に置きつつ、それらの差異や格差を再生産している。国家とコルポラツィオーンの協働によるポリツァイ(福祉行政)の推進というヘーゲルの国家論の構図をここに見ることができる。
われわれの課題は、まさに、メリトクラシーの神話に代表されるネオ・リベラリズムと差異と格差の国家的再生産としてのコーポラティズムという対立する二つの傾向に対する二重批判である。その際、対立する2契機はまったく対等のものとして扱われるべきではないだろう。
ネオ・リベラリズムは、社会矛盾の国家による隠蔽・粉飾を排除し、矛盾の存在をあらわにさせることにおいて、コーポラティズムに対する優位を持つのである。
コーポラティズムのような国家的配慮は、確かに公共的配慮の一形態に違いないが、それは、「市民社会」の現実を覆い隠し、根源的な解決を先送りする作用を持っている。資本の国家が、市民社会の格差と差別に自分が示す配慮は、まやかしにすぎず、実効性を持たないことをあからさまに認め、もはや配慮などやめたと居直ることに他ならないネオ・リベラリズムの実践は、国家的配慮に代わる真に公共的な配慮の必要性を我々に指し示す点において、決定的に肯定的契機を含んでいる。
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草莽崛起(The Rising Multitude )
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