いよいよ青木真也選手のストライクフォースでのギルバート・メレンデス選手との試合が明日に迫りました。

「自分が負けたら日本の格闘技界は、アメリカの植民地になってしまう。」

上記は某格闘技雑誌で行われたインタビューにて、青木真也選手が発した言葉です。

青木選手が自らの格闘技人生をPRIDE1本に賭けた直後のアメリカ資本UFCによる買収劇。それでも他の団体には目もくれずPRIDEに拘り続けた青木選手。

自分が一番だと思っていた日本のPRIDEが目の前でUFCに乗っ取られるという事態を目にし、そこから青木真也選手のUFC、そしてアメリカの格闘技界への対抗心は植え付けられたことが想定されます。

その対抗心が、自分が日本を代表する、自分が世界トップになって、日本の格闘技を世界一にするというところまで、青木選手の意識を高めました。

おそらく日本の格闘家の中で、これほどまでに日本の格闘技界、日本のMMAを自分がどうにかしてやるという意識の高い選手は見当たりません。

格闘家、そしてMMAファイター日本代表としての意識は、先日UFCデビューを飾った五味隆典選手とは比較にならないでしょう。

現時点で、世界のトップクラスとでも互角以上に戦える日本人MMAファイターはそう多くは見当たりません。青木真也選手は、その数少ない選手の一人です。日本人MMAファイターの中では、最も世界のトップを狙える座に近いかもしれません。

明日、青木選手が負けてしまった時にファンに与える焦燥感は、想像に難くありません。

青木選手にはアンチのファンもいます。ただ、現時点で日本格闘技界期待の星というポジションにいるのも事実です。数時間前に行われた公開計量の様子や、先日行われたインタビューを見ると、少し様子がおかしいようにも見えます。

やはり初のアメリカでの試合というのは意識せざるを得ないところでしょうか。少なからず緊張もあると思います。ただ、ここはMMAファイター日本代表として、青木真也選手に何としてでも勝利を手にして欲しいと思っています。







5月には山本KID選手がストライクフォースにデビューするという噂もあります。対戦相手の候補まで具体的に挙がっています。フェデリコ・ロペズという名前の選手のようです。この噂が事実であれば、山本KID選手としては心機一転アメリカで再起をはかりたいことでしょう。対戦相手もあまり知られていない選手のようなので、山本KID選手がストライクフォースで挑戦するというよりは、DREAM側が勝てそうな相手をオファーしたのかもしれません。
アブダビで初開催のUFC大会であったUFC112。

アブダビでの初UFC大会を楽しみにしていたファンの方も多かったと思いますが、期待通りの内容の大会にはならなかったようです。

波紋を呼んだのが、メインイベントで行われたUFCミドル級タイトルマッチ、アンデウソン選手VSマイア選手。相手を小馬鹿にしたような戦い方で、決して仕留めには行かない姿勢に会場ではブーイングの嵐が巻き起こりました。聞き覚えのある“GSPコール”までもが、アブダビの地で発生しました。

(こちらで試合前半の動画が観られます。)

(こちらで試合後半の動画が観られます。)

確かにスポーツマンシップという観点からいうと、アンデウソン選手の試合中の態度は褒められたものではないのかもしれません。ただ、試合内容が退屈になってしまったのは、一概にアンデウソン選手の方に一方的に非があるとは言えないと思います。

格闘技の試合はあくまで対戦する二人が作るものです。なのであのような試合内容になってしまった原因は双方にあると思います。アンデウソン選手としては寝技に付き合いたくないのでマイア選手を深追いはしたくないでしょうし、マイア選手ももちろん打撃でアンデウソン選手に挑みたくはありません。

状況としては少し古い話になりますが、お互いのフィールドで戦うことを避けて凡戦になった、PRIDEでのミルコ選手VS高田選手を思い出します。

アンデウソン選手は一部で性格が悪いと言われています。今回の試合でも相手のマイア選手を失礼なまでに挑発した、試合中の態度が非難されています。ただ私はこのアンデウソン選手の態度に関しては、そこまで問題視はしていません。

挑発的な態度を取ろうと、それが試合を盛り上げ、結果としてファンの喜ぶようなパフォーマンスを産み出すのであれば、むしろ歓迎すらしてしまいます。

ただ、問題なのはあのような態度を取りながら、保身に走り、決して積極的にマイア選手を仕留めにいかなかったことだと思います。アンデウソン選手からは、試合を盛り上げよう、ファンの喜ぶ試合を見せようという気概が感じられませんでした。

UFC代表のダナ氏は4R途中で、会場を後にしたそうです。アンデウソン選手が王座を防衛すると見越したものの、自らの手でベルトを掛けたくないとの理由からのようです。

ダナ氏が会場を後にしたのも、アンデウソン選手の試合中の挑発そのものに憤慨したわけではなく、アンデウソン選手の試合を盛り上げようとしない姿勢に嫌気が刺したからだと思います。

また、アンデウソン選手は他の階級の王者に比べて隙やストーリーが無さ過ぎるのです。実力は現UFCミドル級の中でずば抜けていて、正直相手になりそうな選手が見当たりません。アンデウソン選手が強すぎて、どの選手もアンデウソン選手を倒せる期待感が持てないのです。

ウェルター級の王者に君臨するGSP選手も似たような状態ですが、実力をつけていく過程、ストーリーをUFCで見せている王者です。ファンはGSP選手の負けるシーンも観ています。その分感情移入が出来ているのかもしれません。

一方でアンデウソン選手はUFCに参戦して以来、負けなしで王者に君臨しています。そしてピンチらしいピンチというシーンは一度も訪れていません。ここ約10年間で負け無しで人類最強と称されるヒョードル選手も、ピンチが訪れる中でその強さを発揮して、ファンの心を掴んでいます。

アンデウソン選手が嫌われる理由に、彼の試合中に垣間みられる性格的な部分もあるかもしれませんが、何より負けるかもしれないというドキドキ感が持てないこととが大きく影響しているのではないかと思います。


もう一つのタイトルマッチ、BJペン選手VSフランク・エドガー選手は、絶対王者BJペン選手がまさかの敗北を喫しました。

(こちらで試合前半の動画が観られます。)
(こちらで試合後半の動画が観られます。)

有効打ではBJペン選手が勝っていたと思いましたが、終始カウンター狙いで受け手に回っていた印象が良くなかったと思います。

一方のエドガー選手の手数と、何より5Rを通じて素早く動き回り続けたのに切れなかったスタミナは見事だったと思います。

今回のジャッジは3-0(45-50、47-48、46-49)ということで、結構ばらつきがありました。アブダビ大会ということで、普段とは基準が違ったのでしょうか。


また、43歳のヘンゾ・グレイシー選手がアブダビで大声援を受けて、マット・ヒューズ選手に挑みましたが、3R終盤でのパンチのラッシュに沈みました。

(こちらで動画が観られます。)
「こんばんは。魔裟斗です。」

先週の土曜日、某局のスポーツニュースにチャンネルを合わせると、そこには魔裟斗の姿がありました。つい数ヶ月前までプロ格闘家としてリングに上がっていた選手が、何ともスムーズに次のキャリアへと移行していました。

魔裟斗が次のステージへの一歩を華やかに踏み出したその日は奇しくも武蔵の引退セレモニーでした。

その日、私は2人の元格闘家の引退における対照図を目のあたりにしました。

“反逆のカリスマ”というキャッチフレーズを背にスターダムに格闘技界のスターへとのし上がった魔裟斗。一方でもがき苦しみ、必死に這いつくばりながらも、一部の人からは批判の声を浴びせられたりもしながら引退していった武蔵。

本人の生き方や価値観なので一概に損得勘定は出来ませんが、敢えて損得に言及すると、明らかに効率的に名実共に手に入れた魔裟斗の方がおいしい生き方なのかもしれません。引退試合でも有終の美を飾った魔裟斗に対して、武蔵は有終の美とはいきませんでした。

いつのまにかそんな武蔵に愛着を覚えてしまったのは私だけでしょうか。

もちろん魔裟斗も何もしないで今の名声を手に入れた訳ではありません。陰でも表でも血のにじむような努力を積み上げてきていると思います。ただ、魔裟斗の引退までの軌跡は何だかキレイすぎるのです。デビュー、メディア露出、優勝、世界のトップファイターへ、そしてまた優勝、引退、そしてキャスターへ。もちろんキレイに引退するための努力が実った結果なのですが、あまりにも計算通りの軌跡なのです。

血のにじむような努力を積み重ねて来た両者ですが、武蔵には魔裟斗のような結果はついてきませんでした。それでも武蔵は這いつくばることを止めようとはしませんでした。

人生を全うした身分ではない私がこのようなことをいうのは気が引けるのですが、人生はうまくいく時もあれば、うまくいかない時もあると思います。うまくいかない時の方が多いのかもしれません。それでも立ち止まりたくない人は、這いつくばってでも前に進まざるを得ないのです。

時に目を背けたくなるようなシーンもありましたが、武蔵は背を向けること無く、立ち止まらず、這いつくばりながら格闘家としての生き様を見せてくれたと思います。そしてその生き様は、多くの人の心へと届き、響いたと思います。

武蔵選手、15年間本当にお疲れ様でした。そしてありがとうございました。