アブダビで初開催のUFC大会であったUFC112。

アブダビでの初UFC大会を楽しみにしていたファンの方も多かったと思いますが、期待通りの内容の大会にはならなかったようです。

波紋を呼んだのが、メインイベントで行われたUFCミドル級タイトルマッチ、アンデウソン選手VSマイア選手。相手を小馬鹿にしたような戦い方で、決して仕留めには行かない姿勢に会場ではブーイングの嵐が巻き起こりました。聞き覚えのある“GSPコール”までもが、アブダビの地で発生しました。

(こちらで試合前半の動画が観られます。)

(こちらで試合後半の動画が観られます。)

確かにスポーツマンシップという観点からいうと、アンデウソン選手の試合中の態度は褒められたものではないのかもしれません。ただ、試合内容が退屈になってしまったのは、一概にアンデウソン選手の方に一方的に非があるとは言えないと思います。

格闘技の試合はあくまで対戦する二人が作るものです。なのであのような試合内容になってしまった原因は双方にあると思います。アンデウソン選手としては寝技に付き合いたくないのでマイア選手を深追いはしたくないでしょうし、マイア選手ももちろん打撃でアンデウソン選手に挑みたくはありません。

状況としては少し古い話になりますが、お互いのフィールドで戦うことを避けて凡戦になった、PRIDEでのミルコ選手VS高田選手を思い出します。

アンデウソン選手は一部で性格が悪いと言われています。今回の試合でも相手のマイア選手を失礼なまでに挑発した、試合中の態度が非難されています。ただ私はこのアンデウソン選手の態度に関しては、そこまで問題視はしていません。

挑発的な態度を取ろうと、それが試合を盛り上げ、結果としてファンの喜ぶようなパフォーマンスを産み出すのであれば、むしろ歓迎すらしてしまいます。

ただ、問題なのはあのような態度を取りながら、保身に走り、決して積極的にマイア選手を仕留めにいかなかったことだと思います。アンデウソン選手からは、試合を盛り上げよう、ファンの喜ぶ試合を見せようという気概が感じられませんでした。

UFC代表のダナ氏は4R途中で、会場を後にしたそうです。アンデウソン選手が王座を防衛すると見越したものの、自らの手でベルトを掛けたくないとの理由からのようです。

ダナ氏が会場を後にしたのも、アンデウソン選手の試合中の挑発そのものに憤慨したわけではなく、アンデウソン選手の試合を盛り上げようとしない姿勢に嫌気が刺したからだと思います。

また、アンデウソン選手は他の階級の王者に比べて隙やストーリーが無さ過ぎるのです。実力は現UFCミドル級の中でずば抜けていて、正直相手になりそうな選手が見当たりません。アンデウソン選手が強すぎて、どの選手もアンデウソン選手を倒せる期待感が持てないのです。

ウェルター級の王者に君臨するGSP選手も似たような状態ですが、実力をつけていく過程、ストーリーをUFCで見せている王者です。ファンはGSP選手の負けるシーンも観ています。その分感情移入が出来ているのかもしれません。

一方でアンデウソン選手はUFCに参戦して以来、負けなしで王者に君臨しています。そしてピンチらしいピンチというシーンは一度も訪れていません。ここ約10年間で負け無しで人類最強と称されるヒョードル選手も、ピンチが訪れる中でその強さを発揮して、ファンの心を掴んでいます。

アンデウソン選手が嫌われる理由に、彼の試合中に垣間みられる性格的な部分もあるかもしれませんが、何より負けるかもしれないというドキドキ感が持てないこととが大きく影響しているのではないかと思います。


もう一つのタイトルマッチ、BJペン選手VSフランク・エドガー選手は、絶対王者BJペン選手がまさかの敗北を喫しました。

(こちらで試合前半の動画が観られます。)
(こちらで試合後半の動画が観られます。)

有効打ではBJペン選手が勝っていたと思いましたが、終始カウンター狙いで受け手に回っていた印象が良くなかったと思います。

一方のエドガー選手の手数と、何より5Rを通じて素早く動き回り続けたのに切れなかったスタミナは見事だったと思います。

今回のジャッジは3-0(45-50、47-48、46-49)ということで、結構ばらつきがありました。アブダビ大会ということで、普段とは基準が違ったのでしょうか。


また、43歳のヘンゾ・グレイシー選手がアブダビで大声援を受けて、マット・ヒューズ選手に挑みましたが、3R終盤でのパンチのラッシュに沈みました。

(こちらで動画が観られます。)