昨日、2010年最初のK-1 WGPの大会が横浜アリーナで開催されました。

TV中継しか観ていないのですが、大きな番狂わせもなく、判定決着も多く、若干観ていて退屈な大会でもありました。先週行われたK-1 MAXジャパントーナメントでは激しい試合が多く繰り広げられたのを観たこともあり、今回のK-1 WGPは少々試合無いようにも物足りないものがありました。

近年その年度の最初に横浜アリーナで行われるK-1 WGPの大会は毎回面白い印象があったのですが、今年はそうも行かなかったようです。先週のK-1 MAXのジャパン・トーナメントに出場していた選手と比較すると、K-1を盛り上げてやろうとする意気込みを感じる選手が少なかったように思えます。

ほとんどが想定範囲内の試合内容であったため、あまり印象に残った試合は無かったのですが、唯一インパクトを与えた選手は京太郎選手だと思います。あのピーター・アーツ選手から見事KO勝ちを奪っての勝利です。

今回の京太郎選手の勝利の要因として、ピーター・アーツ選手という大御所を相手に物怖じせずに戦えたことと、以前から定評のあったパンチの当て勘とカウンターの巧さがあったと思います。ただ、アーツ選手側にも京太郎選手に勝利を与えてしまった数々の要因があると思います。

試合開始直後に気付いた方もいると思いますが、そもそもアーツ選手の減量は失敗しているように見えました。普通に構えている時の足取りもどこかおぼつかなく、パンチスピード、キックのキレ、どれもが既にダメージを負っているかのような動きでした。

アーツ選手の計量時の体重は97kg。軽量級に比べて1kg毎の差が与えるインパクトは少ないのかもしれませんが、この数値が既にアーツ選手の減量失敗を物語っていると思います。普段110Kg近くで戦っている選手が減量するのですから、せめて99kg台に止めておくのが妥当だと思います。

試合中のアーツ選手は体からほとんどのパワーを抜かれたような印象で、KOされてしまうのも時間の問題に見えてしまい、痛々しい程でした。試合後のインタビューでボスジム会長のハーリック氏がアーツ選手は怪我のため、ほとんど練習出来ずに減量のみに取り組まなければならなかったことを明らかにしています。練習や動いての減量が出来ないために、計量までに少し増えても大丈夫なように97kgまで落とさざるを得なかったのかもしれません。

その他メインの2試合ですが、シュルト選手が相変わらずの強さを見せました。ジマーマン選手も健闘したのですが、シュルト選手の身長差を活かした戦いの前に、中々見せ場を作ることが出来ずに敗れてしまいました。

今考えると、アーツ選手が距離を潰してシュルト選手に判定勝ちをしたのは本当に凄いことでした。ただ今のシュルト選手は、相手に距離を潰されない戦い方も覚えてしまい、その時よりもさらに厄介な相手となってしまったようです。

直前まで出場が危ぶまれていたバダ・ハリ選手は難なくブランク明けのイグナショフ選手を退けました。長期のブランク明けということもあり、イグナショフ選手はまともに戦ったらKO負けは避けられないことを試合序盤の攻防で悟ったのか、防戦一方でした。

観ている側としては退屈な試合となってしまいましたが、ブランク明けにも関わらず、バダ・ハリ選手の要所要所のラッシュを耐え凌ぎ、判定決着まで持っていたイグナショフ選手のディフェンス能力は依然高いのかもしれません。イグナショフ選手は今までキックの試合で負傷を除いてKO負けを喫したことがありません。


これという新しいトピックを見出せなかった、今年の最初のK-1 WGP大会。これからどう盛り上がっていくのかが少し心配です。

やはり、バダ・ハリ選手という新世代のエース一人に頼らざるを得ないのかもしれません。そうなるとまたまたシュルト選手というとてつもなく巨大な壁が。。
昨日行われたUFN21での五味選手のUFC挑戦は3RリアルネイキッドチョークによるTKO負けという結果に終わりました。

試合の方は、ほぼ完封されたといっても良いと思います。まずネックになったのがジャブの打ち合い。リーチに勝るフロリアン選手が的確にジャブを当てて距離を制していました。ジャブで主導権を握られてしまったため、この時点で精神的にも優位に立たれてしまいました。もうKO勝ち以外では勝機の無かった五味選手は3Rで一度だけ強いフックをフロリアン選手の顔面に当てることに成功しますが、ここぞとばかりに無警戒になっていたタックルでテイクダウンを奪われてしまいます。試合の組み立てでもフロリアン選手の試合巧者ぶりが目立ちました。

グラウンドになってからの五味選手は成すすべなく、バックに回られて首を取られタップ。フロリアン選手のTKO勝ちとなりました。


そもそも五味選手は自分よりもリーチの長い選手は苦手としているように思えます。PRIDEの時もKOで打ち負かしてきた相手のほとんどが五味選手よりもリーチが短いか同じくらいでした。そのリーチ差が顕著になると、五味選手は思うように戦えないのかもしれません。それが戦極で明らかに格下と思われた長身のゴリアエフ選手との試合での判定負けにも繋がったのかもしれません。

また、五味選手はパンチが当たらなくなると、一発狙いの大振りのパンチが多くなります。フロリアン選手との試合の中で、五味選手の大振りのパンチが出てきたことが、今回のTKO負けへの序章だったのかもしれません。結果無効試合になりましたが、ニック・ディアス選手との試合でも、大振りのパンチが多く見られ、最後は首を取られた五味選手がタップアウト負けをしています。

今回のフロリアン選手との試合で、五味選手が首回りを取られてタップをしたのは3回目になります。五味選手は寝技の弱さも指摘されていますが、そもそも首回りが弱点なのかもしれません。


対戦相手だったケニー・フロリアン選手はUFCライト級2位。近年の実績でいえば、ほとんど五味選手の歯が立たないと言ってよいほどの相手だったと思います。それでも五味選手の勝利に淡い期待が寄せられていたのは、PRIDEでの快進撃の記憶からファンの間で抱き続けられてきている、五味選手に対する幻想からだと思います。

その幻想も近年は薄れつつありました。ただその幻想の最後の切り札的な要素が五味選手の“モチベーションだったのです。五味選手は気分にムラのあるファイターだと言われていました。気分が乗っているときは練習にも力が入り、勝利に対する意識や試合での集中力も凄いものがありました。逆にモチベーションが上がらない時の五味選手は練習にも身が入らず、試合でのパフォーマンスも悪いと言われていました。

近年の不振がありつつも、ファンはこの五味選手の“モチベーション”の部分に期待を寄せていたと思います。最近の五味選手はモチベーションが落ちているだけ、モチベーションさえ上がれば五味選手はまた必ずやってくれるはず、と。


私も五味選手のことは応援していましたし、そのモチベーションの部分に懸けていた一人でした。そして今回の五味選手のモチベーションは間違いなく高かったと思います。以前から五味選手が口にしていたUFCとBJペン。相手はUFCライト級2位のフロリアン選手で、勝てば自動的にBJペンへの道が見えてくる。モチベーションが上がらない理由が見当たりません。

しかし、五味選手は負けてしまいました。モチベーションが高くても残酷なまでに負けてしまったのです。まさに五味選手への最後の幻想が打ち砕かれた瞬間でした。寝技への対応を怠りすぎた、PRIDE王者だった頃の気分でまだ試合をしている、など各方面から色々な指摘が飛んでいますが、いずれにせよ今回の試合で世界のトップ選手と今の五味選手との間に明らかに差がある現実を叩きつけられました。


今の五味選手ですとBJペン選手はもちろん、DREAMやSRC(戦極)で活躍中の上位日本人・外国人選手にも勝てないと思います。青木選手とやったとしても、あっけなく三角締めを極められてしまうような気がします。

まだ五味選手をUFCのリングの機会はあると思います。もちろん五味選手のことは応援し続けたいと思います。ただもうそこには、一切の幻想も無いと思います。
いよいよ五味選手のUFCデビュー戦となるUFN21が、あと数時間後に迫りました。

日本の格闘技ファンの関心も著しく高いようで、その関心も対戦を直前に控えた今ピークに達しようとしています。“五味選手には何としてでも勝って欲しい。”、“やはりケンフロ相手では厳しいのでは!?けど応援したい。”など各方面から様々な声が飛んでいて、五味選手のファンの多さに気付かされます。

最近やや試合から遠ざかっている五味選手ですが、それにも関わらず格闘技ファンの関心をここまで集めている状況を見ると、改めて五味選手の人気の高さを認識させられます。

五味選手は日本人MMAファイターで一番人気のある選手といっても過言ではないと思います。純MMA出身の日本人ファイターでいうと間違いなくNo.1の人気を誇る選手だと思います。名前だけで集客出来る数少ない日本人MMAファイターです。PRIDEという舞台で圧倒的な強さを見せ続けて王者になったことが、今の人気に大きく影響していると思います。あの快進撃は“また、五味選手ならやってくれるのではないか!?”という幻想を抱かせるのに十分な衝撃を与えてくれました。

その五味選手がいよいよ格闘技キャリアの大一番を迎えます。舞台は現在世界最高峰のUFC。相手はケニー・フロリアン選手。言わずと知れたUFCライト級のNo.2を定位置とする世界のトップコンテンダーです。

海外でもこの試合への関心度は高いようで、各WEBサイトに五味選手の直前インタビューが掲載されています。インタビューで五味選手は下記のように語っています。

“UFCで戦えることを嬉しく思います。初めて多くのアメリカの人たちに自分の試合を観てもらえる機会です。なので試合が楽しみです。”

“僕は結構怠け者なんですよ。何年もモチベーションを持続させることは難しいです。今までもっと練習しなければならなかったとも思っています。けど今はコンディションはとても良いです。リングで今までの分も爆発させます。”

“ケニー・フロリアン選手のことについては、特に何の印象も持っていません。UFCに参戦しているファイターは皆強敵ですから。”

“激しい試合をしますよ。アメリカの観客からブーイングを浴びたくないですから。”

やはりPRIDE消滅後、五味選手のモチベーションは低迷したまま、しばらく上がっていなかったのかもしれません。ただPRIDEで多くの人に持たせた五味選手の幻想の貯金はほぼ全て使い果たしてしまっていると思います。ここ数試合の内容は決して良いものではありませんでした。今回の相手が強豪中の強豪だけに、五味選手への幻想を抱けるラストチャンスとなるかもしれません。下馬評では当然のごとくケニー・フロリアン選手有利との声が多いようですが、PRIDE時代にキャッチフレーズともなった“スカ勝ち”を是非とも見せて欲しいと思います。


そんな五味選手の大一番ですが、日本からは生視聴する手立てがないようです。日本で一番人気があるMMAファイターといってもよい五味選手の大一番なのに。。。宇野選手も岡見選手も参戦するのに。。。日本のメディアの思い切りの無さが悔やまれるといいますか、生放送に手を挙げなかったことに腹立だしさすら感じます。(オファーしたのに断られたのかもしれませんが。。)もちろん平日の午前中から昼間にかけての時間帯なので、視聴率が取れないのかもしれません。しかし、例えばPRIDE全盛の時代でしたら、どこかが何としてでもファンのために生視聴する場を用意したのでは!?とも思えてしまいます。以前、日清がスポンサーになりストライクフォースをWEBでライブ中継したように。

日本MMA界のスター、五味隆典選手の試合がどのような手段でも生中継されないというのが、日本の格闘技界を取り巻く現状なのかもしれません。


話が少し反れてしまいましたが、UFN21での五味選手の健闘を祈るとともに、ケンフロ選手に“スカ勝ち”する姿を期待しています。