昨日行われたUFN21での五味選手のUFC挑戦は3RリアルネイキッドチョークによるTKO負けという結果に終わりました。

試合の方は、ほぼ完封されたといっても良いと思います。まずネックになったのがジャブの打ち合い。リーチに勝るフロリアン選手が的確にジャブを当てて距離を制していました。ジャブで主導権を握られてしまったため、この時点で精神的にも優位に立たれてしまいました。もうKO勝ち以外では勝機の無かった五味選手は3Rで一度だけ強いフックをフロリアン選手の顔面に当てることに成功しますが、ここぞとばかりに無警戒になっていたタックルでテイクダウンを奪われてしまいます。試合の組み立てでもフロリアン選手の試合巧者ぶりが目立ちました。

グラウンドになってからの五味選手は成すすべなく、バックに回られて首を取られタップ。フロリアン選手のTKO勝ちとなりました。


そもそも五味選手は自分よりもリーチの長い選手は苦手としているように思えます。PRIDEの時もKOで打ち負かしてきた相手のほとんどが五味選手よりもリーチが短いか同じくらいでした。そのリーチ差が顕著になると、五味選手は思うように戦えないのかもしれません。それが戦極で明らかに格下と思われた長身のゴリアエフ選手との試合での判定負けにも繋がったのかもしれません。

また、五味選手はパンチが当たらなくなると、一発狙いの大振りのパンチが多くなります。フロリアン選手との試合の中で、五味選手の大振りのパンチが出てきたことが、今回のTKO負けへの序章だったのかもしれません。結果無効試合になりましたが、ニック・ディアス選手との試合でも、大振りのパンチが多く見られ、最後は首を取られた五味選手がタップアウト負けをしています。

今回のフロリアン選手との試合で、五味選手が首回りを取られてタップをしたのは3回目になります。五味選手は寝技の弱さも指摘されていますが、そもそも首回りが弱点なのかもしれません。


対戦相手だったケニー・フロリアン選手はUFCライト級2位。近年の実績でいえば、ほとんど五味選手の歯が立たないと言ってよいほどの相手だったと思います。それでも五味選手の勝利に淡い期待が寄せられていたのは、PRIDEでの快進撃の記憶からファンの間で抱き続けられてきている、五味選手に対する幻想からだと思います。

その幻想も近年は薄れつつありました。ただその幻想の最後の切り札的な要素が五味選手の“モチベーションだったのです。五味選手は気分にムラのあるファイターだと言われていました。気分が乗っているときは練習にも力が入り、勝利に対する意識や試合での集中力も凄いものがありました。逆にモチベーションが上がらない時の五味選手は練習にも身が入らず、試合でのパフォーマンスも悪いと言われていました。

近年の不振がありつつも、ファンはこの五味選手の“モチベーション”の部分に期待を寄せていたと思います。最近の五味選手はモチベーションが落ちているだけ、モチベーションさえ上がれば五味選手はまた必ずやってくれるはず、と。


私も五味選手のことは応援していましたし、そのモチベーションの部分に懸けていた一人でした。そして今回の五味選手のモチベーションは間違いなく高かったと思います。以前から五味選手が口にしていたUFCとBJペン。相手はUFCライト級2位のフロリアン選手で、勝てば自動的にBJペンへの道が見えてくる。モチベーションが上がらない理由が見当たりません。

しかし、五味選手は負けてしまいました。モチベーションが高くても残酷なまでに負けてしまったのです。まさに五味選手への最後の幻想が打ち砕かれた瞬間でした。寝技への対応を怠りすぎた、PRIDE王者だった頃の気分でまだ試合をしている、など各方面から色々な指摘が飛んでいますが、いずれにせよ今回の試合で世界のトップ選手と今の五味選手との間に明らかに差がある現実を叩きつけられました。


今の五味選手ですとBJペン選手はもちろん、DREAMやSRC(戦極)で活躍中の上位日本人・外国人選手にも勝てないと思います。青木選手とやったとしても、あっけなく三角締めを極められてしまうような気がします。

まだ五味選手をUFCのリングの機会はあると思います。もちろん五味選手のことは応援し続けたいと思います。ただもうそこには、一切の幻想も無いと思います。