どうでもいいじゃんって言ってばかりのパールくんは、
ちょっと排他的な感じで、私が好きになれたのは見た目だけだった。

パールくんは、私の理想のタイプそのもので、
彼が呼吸している姿すら私をドキドキさせてうっとりさせて、
溜め息が漏れるような男前だった。

パールくんは何でも、どうでもいいじゃんって言っちゃうくせに、
音楽だけは、どうにかしなくちゃカテゴリーに入れていた。
なんだそれ、何もかもが繋がっているんだから、
どうでもいい音楽作れよ、いやならちゃんと向き合ってみろよ、
なんて死んでも言えなかった。

パールくんに悪態すらつけなかった自分が、今ではちょっと可愛いなとも思ったりする。
どうでもいいじゃんって呟く度に、記憶の何処かに埋もれていたパールくんがこんにちは、をして、
それから、甘いような苦いような私とパールくんが蘇ったりする。

いまでも『どうでもいいじゃん』って思っても、本当にどうでもいいのかは分からない。
ただ単に、私は記憶の何処かのパールくんとこんにちはをしたいが為に、
どうでもいいじゃんと呟くのかもしれない。

そんな彼も、もう三十路に片足を突っ込む年頃になっているはずなわけで、
いまだに『どうでもいいじゃん』って、放り投げていたら、
私の記憶の中に住む小さなパールくん共々、抹殺してやろうとも思っている。
070108_1717~0001.jpg
8年後には小惑星が衝突して地球が滅びる。
あれから、5年が経って少し平穏が戻るんだけれど。
誰かが死ぬこと、狂気に満ちてしまう日常。
自分を残して死へと向かう家族や、何も知らずに待ち続ける家族。

この本には殺伐とした日々を送る人達は出て来ない。
どこか諦めて、人間らしさを失ってしまえば楽になれるのに、
周りで生きている人達と関わらずにはいられない。
絶望を前にしたって、憎むことを止められなかったり、
愛することを忘れられなかったり、どこか希望を持っていたり。
そんな全てを投げ出してしまえばいいのに、とも呟きたくなる。

私が何にせよ、あと8年には必ず死にますという現実になったら。
私は私のままでいられるだろうか。
ひとしきり、死ぬのが恐いと思った後は一体どんな想いがあるのだろう。


出来ることならば、そんな終末でさえも本の中の彼らのように、
いつもの毎日を送れる人間でありたい。
人に云われて気付くことがある。
気付くというか、思い出すというか、そんな感じで。
そうだ、あたしはそんなんだったって思い出した。
ちょっと泣き虫じゃなくなって、なんだか強くなれた気がしてた。

昔はよく壊れそうになってしまって、泣きたくなってた。
あたしがこんなにも弱い人間だなんて、誰にも知られたくなくて、
独りぼっちでしか泣けなくて、誰かの前で思いっきり泣けるほどの勇気も無くて、
グズグズと泣いていたっけ。
そんなあたしから、今のあたしになっていることを忘れていた。

あたしの強がりはお手の物で、自分で自分を錯覚してしまう。
ただ、桜がハラハラ舞い落ちる姿を眺めているだけで、
何かの終わりを告げられたような、
あるいは終わりを目撃してしまったような、
とんでもない気持ちを自分にさせてしまう。
よし。行ったり、来たりはやめてしまおう。
前進のみだ。なんて。

けれども、あたしは失いそうなものには敏感で、
失いそうになるぐらいならプライドはいらない。
何かを失ってまで、守りたいプライドなんて持ち合わせていない。
ほんの数ミリでも、あたしは失って後悔するぐらいなら、
プライドをかなぐり捨ててまでも、失いたくない。
失うことの痛みを、忘れることなんて出来ないから。
それが、あたしの強さかもしれない。


いいのか、悪いのかは解らない。
いいことも、悪いことも、本当も、ウソも、
正しいのか、間違いなのか、
それを知るのは、あと何十年も先なんだろうな。