昨年8月後半に、15群中12群のアシナガバチが、天敵のヒメスズメバチに壊滅状態にされてしまいました。私は、しばらくの間「なにか方法があったのでは」と、湧きあがる罪悪感に苛まれてしまいました。
ヒメスズメバチにやられて回収した巣箱
ヒメスズメバチは、腰に赤い色が入っていてスズメバチの中ではもっとも美しい個体です。ミツバチも襲いませんし大好きな蜂でしたが、もう憎らしさ100倍になってしまいました。
見ているそばから飛来して襲いはじめるヒメスズメバチ
泣きっ面に蛙(泣)
残った群れに、すぐにスズメバチの侵入を防ぐ守門を付けましたが、アシナガバチの出入りも制限されてしまったようで、結局それ以上家族を増やすことはありませんでした。
すぐに考案した守門 問題あり
その後、尊敬する三重大学生物資源学部の教授だった故松浦誠氏の著書を徹底的に読み返しました。すると、スズメバチとは違う意外な、そして少しホッとするアシナガバチの習性があることがわかりました。
それは、元々アシナガバチは狩りを8月後半〜9月初めでやめてしまうということ。それは子育ても終わるということ。きっと、スズメバチが猛威をふるう9月になる前に、翌年の新女王蜂を育てあげるようになったのでしょう。
さらに、スズメバチに襲われると、簡単に巣を放棄する習性があるということ。実は私も、駆除の際に巣がない所に蜂だけが固まっている群れを何度も見ていました。
襲われた巣箱をもう一度観察してみました。すると、幼虫を取り出す時に巣を食いちぎった残骸が落ちているものとないものがありました。
おそらく、残骸がたくさん落ちている巣箱は残念ながら女王蜂がまだ生まれていなかった群れ。少し落ちている巣は、だいぶ生まれたけれど、まだ幼虫も残っていた群れ。まったく落ちていない巣箱は、すべて生まれて成虫になっていた群れなことがわかりました。
そしてもう一つ、そういえばと思う事実に気づきました。咬み殺された働き蜂の死骸が一匹も落ちていないのです。これは、成虫達は戦わずに巣を放棄した証拠といえます。
12群すべてが壊滅状態になったのではなく、半数ほどは子育てを終えて新女王蜂を生まれさせていたこと。働き蜂達は殺されないで逃げていたことがわかりました。おかげで罪悪感は軽くなりました。アシナガバチの習性と松浦先生に脱帽です。
しかし、アシナガバチが盛んに畑で狩りをする季節は、働き蜂が増える7〜8月の間の正味2ヶ月程度しかない、ということにも気付かされました。
でも考えてみれば、イモムシにとってヒメスズメバチは窮地を救ってくれるヒーロー的存在です。ヒメスズメバチがいなかったら、秋遅くまでアシナガバチは狩りを続けイモムシは絶滅してしまうでしょう。逆に考えれば、アシナガバチにとってもイモムシがいなくなれば翌年は死活問題です。
ちょうどいいバランスをとるためにヒメスズメバチが存在しているように思えます。自然界ってすごいです。おかげで、ヒメスズメバチを憎らしく思う気持ちはだいぶなくなりました。
ということで、前置きが長くなってしまいましたが、一冬かかって新しいヒメスズメバチ攻略巣箱を考案しました。
これです↓
アシナガバチの女王を捕獲し翌朝ビニールをはずすときに、この巣門のついた枠を前面に設置します。
これくらいの隙間ならダイレクトに飛びながら巣に戻ってくれるはず。ほかにも3列、アシナガバチはくぐれる隙間を開けてあります。夏は熱がこもりそうですから、巣箱の後面は抜いて金網を貼り付けました。
できれば、アシナガバチだけがくぐれる目の金網を探して、
ストレスをなるべくなくしてあげたいです
そして、ヒメスズメバチを目撃したり、巣箱の下に巣の残骸を確認したら、もう1本取り付けて、ヒメスズメバチが入り込めないシェルターにします。
昨年、出入り口は1列だけで、突然全面を覆ってしまったので、ストレスがあったと思います。今年は、ダイレクトに飛び込める隙間はなくなりますが、5列も巣門があります。さらに元々3列はあったので、風景もあまり変わらないような配慮になっています。
これで、新女王の誕生を守ることができれば、翌年は畑の周りの自然営巣率が上がることを期待できます。
うまくいくかどうかは、やってみないとわかりませんが、きっとうまくいくのではと期待しています。ぜひ参考になさってください。
〜お知らせ〜
アシナガバチ移住方法の講演・実地指導をいたしております!
駆除されるアシナガバチを保護して無農薬菜園に移住させる詳細な方法について、団体等にうかがって講演をいたします。あらかじめ巣を見つけておいていただければ、実際に木箱に巣を移設させる技もお見せできます。実地研修は7月末まで。働き蜂が生まれている群れでも移設できます。詳しくはメッセージでお問い合わせください。
講演予定
4/21 庄内オーガニックマルシェ(山形県鶴岡市)参加可