この記事についてaiに評価してもらいました




ある記事では、リーダーに必要な力として、

構想力
決断力
遂行力

の3つを挙げ、それを支える力として、

まとめる力
学び続ける力

の2つを加えた「5つの力」を紹介している。

さらに、「描く力」は、

ビジョンを描く力
シナリオを描く力

の二つに分けられるという。

現場で観察されるリーダーの行動としては納得できる整理である。

しかし、この説明だけでは、「なぜリーダーにその能力が必要なのか」という原理は説明できていない。

能力を分類したことと、リーダーという仕事を説明したことは別だからである。

では、リーダーとは何をしている人なのであろうか。

■リーダーの仕事は、自分の状態を実現することである

例えば、新しいサービスを立ち上げるプロジェクトを考えてみよう。

部長は、「一年後にサービスを開始する」という状態を実現したい。

しかし、その状態を部長一人で実現することはできない。

開発担当者はサービスを完成させなければならない。

営業担当者は販売体制を整えなければならない。

経理は予算を確保しなければならない。

つまり、部長が実現したい状態は、多くの人がそれぞれの状態を実現することによって初めて成立する。

ところが現実には、

開発担当者は人手不足で開発が進まない。

営業担当者は仕様が決まらず販売準備ができない。

予算もまだ承認されていない。

このように、それぞれの状態を成立させる条件が崩れている。

そこで部長は、

人員を追加する。
予算を確保する。
関係部署を調整する。
優先順位を決める。

といった仕事を行う。

ここで重要なのは、部長は部下の仕事を代行しているのではないということである。

部長自身が実現したい状態を成立させるために、その成立条件となっている部下や他部署の状態を成立させているのである。

この仕事は、

主体
実現したい状態
成立条件
制約
操作

という構造で整理できる。

例えば、

主体 = 部長

実現したい状態 = サービスを開始する

成立条件 = 開発担当者がサービスを完成させること、営業担当者が販売体制を整えること、予算が確保されること

制約 = 人員不足、仕様未確定、予算不足、部署間調整不足

操作 = 人員配置、予算確保、意思決定、部署間調整

となる。

この構造を状態実現構造と呼ぶ。

リーダーとは、自らが実現したい状態を成立させるために、その成立条件となる他者の状態を成立させ、その成立を阻害している制約を認識し、処理する主体なのである。

■「ビジョン」と「シナリオ」は一つの仕事を分けて呼んでいるだけである

記事では、「描く力」はビジョンとシナリオの二つに分けられている。

しかし、状態実現構造で考えると、これは別々の能力ではない。

ビジョンとは、自らが実現したい状態を示すことである。

シナリオとは、その状態を成立させるために、どの成立条件をどの順番で成立させるかという操作を設計することである。

つまり、一つの仕事を、

「何を実現するのか」


「どう実現するのか」

に分けて呼んでいるだけなのである。

■「決める力」の説明では、意思決定の構造が見えない

記事では、「決める力」とは判断することだけではなく、「決めるための情報が集まる仕組みを作ること」も含まれるとしている。

この視点自体は重要である。

しかし、

情報を集めること


判断すること

は同じ仕事ではない。

現場の状況を確認する。

市場調査を行う。

予算状況を把握する。

これらは、どの成立条件が崩れ、どの制約が存在するのかを認識する仕事である。

一方、

人員を追加するのか。

予算を増額するのか。

開発を延期するのか。

を決めることは、制約をどのように処理するかを選択する仕事である。

記事では、この二つが「決める力」という一つの言葉にまとめられているため、意思決定の構造が見えにくくなっている。

■「当事者意識」だけでは、情報共有は説明できない

記事では、「当事者意識」があれば現場の情報は上司へ伝わるとしている。

しかし、この説明だけでは、当事者意識があっても情報共有されない場面を説明できない。

例えば、

どこまで報告すればよいか分からない。
忙しくて時間がない。
自分で解決すべきだと思っている。
報告しても変わらないと思っている。
報告すると評価が下がると思っている。

このような状況では、情報共有という行動は生まれない。

人の行動は、

行動 = 機会 × f(想起 × 理解 × 納得 × 実行可能 × 評価期待)

で説明できる。

情報共有で考えれば、

想起 = 報告すべき場面で思い出せるか。
理解 = 何を、誰に、どのように報告すればよいか分かるか。
納得 = 報告する必要性を受け入れているか。
実行可能 = 報告する時間や手段があるか。
評価期待 = 報告した結果として良い結果が返ると思えるか。

これらが成立して初めて情報共有という行動が生まれる。

つまり、リーダーの仕事は「当事者意識を持て」と呼びかけることではない。

情報共有を妨げている変数を見つけ、それを改善することである。

■共感や熱量だけでは、人は動かない

記事では、理念への共感や熱量によって、人を巻き込むことの重要性が語られている。

しかし、前節で見たように、人の行動は行動生成式によって決まる。

共感や熱量が影響するのは、その中でも主として「納得」である。

したがって、共感は重要ではあるが、それだけで人が動くわけではない。

何をすればよいか分からない。

実行する時間がない。

行動しても評価されないと思っている。

このような状況では、理念に共感していても行動は生まれない。

だからリーダーは、共感を生み出すだけではなく、部下が行動できない原因を特定し、それを取り除かなければならないのである。

■能力ではなく、仕事の構造を見る

この記事で紹介されている「5つの力」は、リーダーに求められる行動を整理したものとしては有用である。

しかし、それぞれを独立した能力として理解していては、「なぜその能力が必要なのか」という原理は見えてこない。

リーダーとは、自らが実現したい状態を成立させるために、その成立条件となる他者の状態を成立させ、その成立を阻害している制約を認識し、処理する主体である。

そして、その制約を処理するだけでは十分ではない。

実際に成果を生み出すのは、部下や現場の行動だからである。

そのためリーダーは、部下の行動生成式の各変数も成立させなければならない。

ビジョンを示すことも、シナリオを描くことも、情報を集めることも、決断することも、巻き込むことも、その目的は一つである。

自らが実現したい状態を成立させるために、他者が状態を実現できるよう支援し、その行動が生まれる条件を整えることである。

つまり、「5つの力」はリーダーという仕事から現れる操作を分類したものではあるが、リーダーという仕事の原理そのものではない。

リーダーを構造的に理解するためには、「どのような能力を持つか」ではなく、「どの状態を実現したいのか。そのために誰の状態が成立条件となり、その制約をどう処理し、どう行動を生み出すのか」という仕事の構造から考える必要があるのである。