この記事についてaiに評価してもらいました
「自分がいなくても、誰かがやってくれる。」
そのように感じながら働いている社員は少なくない。
そのため、「あなたは必要な存在だ」と伝えることが大切だという考え方がある。本人だけではなく、他のメンバーの前で価値を公言すれば、やりがいが高まり、チーム全体にも良い影響が広がるという主張である。
確かに、そのような場面は現実にも存在する。
しかし、この説明だけでは、「なぜ必要とされている実感が主体的な行動につながるのか」という構造までは説明できていない。
本当に考えるべきことは、「必要とされている実感を与えること」ではない。その実感によって人の何が変化し、その結果としてどのように行動が変わるのかである。
■人は何によって行動するのか
行動生成式では、人の行動は次のように表される。
行動 = 機会 × f(想起 × 理解 × 納得 × 実行可能 × 評価期待)
機会とは、その行動を行う場面やタイミングが存在することである。
想起とは、その場面でその行動を思い出せることである。
理解とは、何をすればよいか分かっていることである。
納得とは、その行動の意味や価値を受け入れていることである。
実行可能とは、時間・能力・権限・環境などの制約を踏まえて、自分は実行できると認識していることである。
評価期待とは、その行動を実行したときに、上司・同僚・顧客・自分などから望ましい評価や成果が返ってくると期待していることである。
これらの成立条件が満たされて初めて、人は主体的に行動する。
したがって、「必要とされている実感」だけでは、人が行動する理由は説明できない。
■「必要とされている実感」の正体
では、「必要とされている実感」とは何なのか。
それは、
「自分がいなければ、誰かが実現したい状態の成立確率が低下する」
という認識である。
言い換えれば、
「自分の行動が、他者の成立条件になっている」
という認識である。
ここで重要なのは、この認識は突然生まれるものではないということである。
人は、成立仮説に基づいて世界を理解している。
成立仮説とは、「ある状態を成立させるためには、何が成立すればよいのか」という主体が持つ仮説である。
例えば、
報告が成立する。
↓
上司が状況を把握できる。
↓
意思決定が成立する。
あるいは、
自分が新人を支援する。
↓
新人が安心して相談できる。
↓
新人が成長する。
人は、このような「成立すれば、次が成立する」という成立仮説を数多く持ちながら仕事をしている。
そして、
「自分の行動が他者の状態を成立させている」
という成立仮説を持つことで、
「自分は必要とされている」
という認識が形成されるのである。
つまり、「必要とされている実感」は一つの成立仮説ではない。
複数の成立仮説から導かれる、自分の役割に対する認識なのである。
■なぜ主体的な行動が生まれるのか
例えば、
自分が改善提案する。
↓
チームの成果が向上する。
という成立仮説を持てば、
「この行動には意味がある。」
という納得が高まる。
さらに、
改善提案する。
↓
成果が向上する。
↓
組織から評価される。
という成立仮説を持てば、評価期待も高まる。
その結果として、主体的な提案や改善、支援といった行動が生まれる。
逆に、
「誰がやっても結果は変わらない。」
「自分が頑張っても誰の役にも立たない。」
という成立仮説を持てば、納得や評価期待は低下する。
同じ仕事であっても、主体的な行動は減少していく。
つまり、人は「必要とされているから」行動するのではない。
自分の行動が誰かの状態を成立させるという成立仮説を持つことで、納得や評価期待が高まり、その結果として主体的な行動が生まれるのである。
■人前で公言することは手段の一つに過ぎない
元の記事では、人前で価値を公言することが有効だと述べている。
確かに、それが成立仮説を更新するきっかけになることはある。
例えば、
「○○さんがいるから、新人が安心して相談できている。」
という言葉は、
自分が支援する。
↓
新人が安心する。
という成立仮説を本人に伝えている。
つまり、「褒めている」のではない。
自分の役割が、誰のどの状態を成立させているのかを説明しているのである。
だから効果が生まれるのである。
しかし、人前で公言すれば必ず成立仮説が更新されるとは限らない。
本人が、
「本当はそうではない。」
と思えば更新されない。
周囲が、
「上司のお気に入りだから評価されている。」
という成立仮説を形成すれば、評価への信頼が低下する可能性もある。
重要なのは、「人前で褒める」という手法ではない。
その情報によって、本人や周囲の成立仮説がどのように更新されるかなのである。
■リーダーが設計すべきもの
「必要とされている実感」は重要である。
しかし、それは目的ではない。
リーダーが本当に設計すべきものは、
一人ひとりが、自分の行動によって誰のどの状態が成立しているのかを理解できることである。
その理解が成立仮説を更新する。
成立仮説が更新されれば、納得や評価期待が変化する。
そして、その結果として主体的な行動が生まれる。
つまり、リーダーに必要なのは、「褒める技術」ではない。
一人ひとりの役割を、成立条件のつながりとして見えるように設計し、その成立仮説を更新することである。
そこまで踏み込んで初めて、「必要とされている実感」は精神論ではなく、再現可能なマネジメントへと変わるのである。
