ブログラジオ ♯189 There’s Got to be a Way | 浅倉卓弥オフィシャルブログ「それさえもおそらくは平穏な日々」Powered by Ameba

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では今回は
マライア・キャリーである。

マライア/マライア・キャリー

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もっともこの方に関しては最早
ホイットニー(♯185)以上に

説明不要の大物だろうという
気もしないでもないのだが。

そういう訳で
というほどのことでも
実はまったくないのだけれど、

今回はまずは少し、
個人的な昔話から。

この人のレコードと
最初に出会った時のことは
今でも鮮明に覚えている。

90年のことだから、
僕自身もまだ学生だったのだが

当時からお店漁りはすでに
趣味のようなものだったので

いつものように立ち寄った
レコードショップで、

不意に耳に入ってきた音が
あまりにも好みだったので、


思わず店員さんに、
今かかっているの誰ですか、と
訊いてしまったのである。

いやまあ、結構そういうことは
時々はやってもいたのだが。

そういう訳でもちろんこれが
彼女のデビュー作だったのだが、

実をいうとその時の音源は
日本盤発売を前にして、

お店向けに配られていた
サンプルだったりしたのである。


本当一発で
つかまれてしまう音というのは
ある時にはあるのである。

これは是が非でも欲しいと
そう思ったのだけれど

残念ながらそのお店は
国内盤しか
取り扱っていない種類の
店舗だったものだから、

その足で、
だったかどうかまでは
定かではないが、

とにかくこの
マライア・キャリーという
名前を忘れないようにして

改めて輸入盤屋さんへと
足を運んだという次第だった。

帰って早速全編に耳を通し、
いや、久し振りに
すごいアルバム見つけられたやと
悦に入ったものである。

多少自慢めいてしまうのは
承知の上で書くけれど、

本邦国内で、だからこの、
マライア・キャリーの名前を
きちんと覚えた人たちを

もし頭から順番に
並べて行くことが
できるとしたならば、


僕は結構前の方に
なってくるはずなのである。

もちろんこれほどまでに
ビッグな存在になろうとは

当時はさすがにそこまでは
思ってなどいなかったが。


さて、ついこの前の
ホイットニー(♯185)の時に

確か触れているかとも
思うのだけれど、


なんといっても本邦で
歴代売れた洋楽作品の

堂々の第一位に輝いているのが
この方のベスト盤なのである。

まあ当時はCDが
一番売れていた
時代であったことも事実だけれど、

そうなるとたぶん
今後抜かれることも
ないのではないかと思われる。

その数なんと、三百万オーヴァー。

夢というか
冗談のような数字である。

ついでなのでこのまままず
記録的なことを
さらに記しておくことにすると、

このマライアには実に18曲もの
全米トップ・ワン・ヒットがあり、

これはビートルズ(♯2)の
20曲についで2位で、

あのエルヴィスと並ぶ
記録なのだそうである。


また、95年の作品で
ボーイズⅡメンとの

コラボレーションだった
One Sweet Dayなる曲は

同年12月から翌年3月にかけ、
実に16週もの長きにわたって
一位の座に君臨し続けている。

この連続記録は
現在に至るまで
破られていないのだそうで。

さらには売り上げ枚数の統計が
取られるようになって以来、


このマライア、
女性のソロ・アーティストの中で

今現在史上三番目の位置に
つけてもいるらしい。

ちなみに上にいる二人とは
バーブラ・ストライザントと
マドンナ(♯141)なのだが、

この先の展開によっては
さらに上にいく可能性も
十分にありそうである。

そしてまた、
本邦でも似たような統計で
やはり三位につけている。

こちらの場合上にいるのは
あの松任谷由実とそれから
浜崎あゆみなのだそうで、

いや、洋楽のアーティストが
そんなところまでくるのかと

感心するというよりもむしろ
ほぼあっけにとられてしまった。

さらにいっておくと90年代に
全世界最もレコードを売ったのが
この方ということにもなるらしい。

何度かここでも書いているが
この90年代の、とりわけ
半ば以降の時代というのは


僕自身全然音楽へのアンテナを
張れていなかった時期なので、

あまりヴィヴィッドな
実感まではないのだが、

だからもう、ほとんどずっと
デビューから休むことなく

売れ続けているという
ことなのだろうと思う。

最早怪物といっていい。


まあそういう訳で僕は
この人の名前を目にすると、

自分のミーハーさ加減に
今でも自信を
取り戻させていただけるのである。

いや、すごく気に入ったのに
思ったほどビッグに
ならなかった人たちだって
もちろんいっぱいいるのだが。

誰とはいわないけれど。


さて、このマライアのデビューを
そもそも仕組んだのが

彼女の最初の伴侶ともなった
トミー・モトーラなる人物だった。

この方実は
ホイットニー(♯185)の時に
ちらりと御紹介した

クライグ・デイヴィスの
たぶん次の次くらいに、
コロンビア/ソニーの
社長になった人物である。

あまり御本人の名誉には
ならないなとは思うのだけれど、
ついでなので触れておくと、

後年MJ(♯143)が一時期
名指しで非難していたのが
このモトーラだったりもする。


この辺りはまあ、
今回のトピックではないので、
あまり深くは突っ込まないが、

とにかくまあ、
この二人の出会いにも、
ちょっとした
エピソードがあったりする。

80年代もいよいよ
終わりを迎えようという時期、

レコード・デビューの
きっかけをつかむことを
夢見ていたマライアは、

ウェイトレスかなんかして働く傍ら、
コーラスの仕事も
どうにか入ってくるようになり、


その中の一人が彼女を
業界のパーティーに
連れて行ってくれたのだそうである。

このアーティストが
マライアのデモテープを

渡してくれた相手が
トミー・モトーラだったそうで。

もっとも一説にはマライアが
アトランティックの社長に
テープを渡そうとしたところ、

モトーラが横から
奪い取っていったという話も
あるようではあるけれど。

いずれにせよ、このパーティーを
途中で抜け出したモトーラは

ところがリムジンの中で
彼女のテープを聴き、

すぐに慌てて会場に
引き返したのだが、

すでにマライアは
帰ってしまった後だったらしい。

当時このモトーラは
コロンビア/ソニーの
カタログの弱点として、


数年前にデビューした
ホイットニーや
あるいはマドンナに拮抗し得る

女性ソロ・アーティストが
足りないと思っていたらしく、

この時このマライアならば
その役目を十分に
果たせるだろうと考えたらしい。

このモトーラ/ソニーの方針が
マライアのほか、

やがてはセリーヌ・ディオンも
世に出すことになるのだから、


この人もさすがに
社長になるだけのことはあると
いえるのかなとも思う。

ただし、マライアの方は
離婚後この彼については、

あまりいいコメントを
出してはいない模様である。

もちろんモトーラの方が
彼女を作ったのは自分だ

みたいなことを
いってしまうからなのだけれど、

マライアの場合そもそもが
声、特に音域と
それに歌そのものが凄いし、

さらにほとんどの曲を
彼女が自分で書いているから

そういう自負はあって
然るべきだとも思う。

それでもこの時の
モトーラ/ソニーの
戦略的なバックアップがなければ、

彼女のデビュー作が
これほど完成度を誇る仕上がりには


決してならなかっただろうことも
また確かな事実ではあろう。

ただマイケルと揉めてしまうのは
いかがなものかとは思うが。

いずれにせよ、
そのパーティーから
一週間も経たないうちに、

無事マライアとの契約に
漕ぎ着けたモトーラは、

実力派のプロデューサー陣を揃え
いよいよ彼女の
デビュー作の制作に
着手したという経緯だった。



実際だから
今回ジャケットを掲げたこの
彼女のデビュー・アルバム、

なるほどデビュー作にありがちな
音そのものの安っぽさなど
微塵も聴こえてはこないのだが

その点も含めて、
とにかくものすごい出来なのである。

デビュー・シングルから連続で
四曲のトップワン・ヒットを
放ったのは、

あのジャクソン5以来
だったということだから、

それだけでも当時のソニーの
力の入れようが察せられよう。


しかしながら今回記事タイにした
僕のチョイスである
There’s Got to be a Wayは、

この四曲には
含まれていなかったりする。

冒頭に紹介したような経緯で
いそいそと外盤を買ってきて

すごい人が出てきたなあと
そんな思いを痛感しつつ


オープニング・トラックであり、
順当に最初のシングルともなった

Visions of Loveが
次第にヒットしていくのを

半ば我がことのように
喜んで眺めながら、

正直片隅では、いつこっちが
カットされるのだろうくらいに
実は考えていたりもしたものだった。

ひょっとすると最初に店頭で、
まず反応したのも


実はこの曲だったのかも
知れないなとも思うのだが、

さすがにそこまでは
もう記憶も定かではない。

しかしながら、なかなか
そういう日はこなかった。

次こそは次こそは、
などと思っているうち、

気がつけば2ndアルバムが
登場してしまったのである。

ちょっと拍子抜けして
しまったことは本当である。

――いい曲なのに。

当然ながら次からのシングルは
そちらの収録曲からとなった。

いや、もちろん
この次作EMOTIONも

すぐに買いはしたのだけれど
少なからず不満だった。


そういう訳でその後も続いた
止まることなど
まるで知らないかのような

この圧倒的な彼女のキャリアの中で
このThere’s Got to be a Wayは

ついに日の目を見ないまま
埋もれてしまった感も
なきにしもあらずではあるのだが、

個人的には今も昔も
彼女の楽曲の中では
これがベストの位置にいる。

いや、Visions of Loveにも
Somedayにも
Love Takes Timeにも
まったく文句はないのだが、


でもこの曲にはそれこそ
前回のLovin’ Youのような、

すぐさまスタンダードに
なってしまうくらいの
力を感じていたのである。

実はどうやらこの曲
歌詞が少なからず政治的で、

その辺りがたぶん
上のトミー・モトーラに

回避されてしまった理由なのかなと
今となっては
思わないでもないのだが
実際本当いい曲なのである。

ゴスペルチックなサビの
分厚いコーラスの
メロディーラインがまた良くて、

そこに至る
盛り上げ方も絶妙で、

なんかだからクリスマスとか
あるいは新年とかの場面で、

それこそウーピー・
ゴールドバークとかと一緒に

教会で体を揺すりながら
歌ったりしたら、
相当気持ちよさそうなのである。


以前にもどこかでこんな表現を
しているかとも思うけれど、

たとえば無理矢理にでも
気持ちを持ち上げたい時には
必ず役に立つ一曲である。

道は必ずある。

この一節だけでもう
勇気百倍である。

――しかし表現古いな。


まあとにかく、所詮は
年寄りの思い出話なのだが、

でもまあ、今回のテキストで
同曲に多少でも興味を持って、

探して聴いてくれる人が
もしいたりしたらとても嬉しい。

こんな曲が埋もれてしまうほど
彼女のデビュー作というのは
充実していた訳である。

なお、実はこの曲、
イギリスとヨーロッパでだけは

五枚目のシングルとして
カットされはしたのだそうで、

それだけの力は
絶対に持っている曲である。

でもまあ、これが全米でも
五枚目として
万一カットされていたとして、

そしてもし一位を
逃してしまっていたりすると、
デビューからの連続トップが

そこで途切れて
しまうことになった訳だから


それはそれでなんか悔しいので
ま、結果オーライかなと
思うことにしている。

いずれにせよ
もう三十年近く前の話ですしね。


では締めの小ネタ。

うーん、これどうしようかな。

ついこの前、七月末頃に
流れたらしい
ニュースなのだけれど、


現在のマライアの体重は
百キロを越えているのでは
ないかという話なのである。

昨年末に当時の恋人と
ダメになってしまった後、

どうやら過食症のような
状態に陥ってしまったらしい。

そんな状況でこなした
ラスベガスのステージでは、

一曲ごとに舞台袖へ引っ込み
休憩を取らなければ
ならないような
そんな有様でもあったそうで。

――うーん。

どうしちゃったかなあ。

これまでにもとりわけ
体重の増減については

ゴシップネタになることも
少なくはなかった彼女なので、

また乗り切ってくれるはずだと
信じてはいるのだが、


確かにちょっと心配である。


いやでも、この際このまま、
それこそウーピー辺りと一緒に

It’s Raining Menの
カヴァーでもやってくれるのも
いいかもしれないなと、

ちょっとだけそう
思わないでもなかったかな。

いや、本当いつも
わかる奴だけついてこい的な
ネタの落とし方ですいません。

昔そういうなんというか
巨漢の女性二人の

ウェザー・ガールズという
コーラス・デュオがいまして、

その人たちのこの曲も
相当流行ったのですよ。

そうそう、そういえば本編では
すっかり書き忘れてしまったが、

このマライアが
カヴァー曲をやる時の


そのチョイスのセンスも
結構好きだったりする。

フィル・コリンズ(♯37)の
Against All Oddsとか

ジャーニー(♯144)の
Open Armsとか

なんだか結構、日本人のツボを
見事についてくる気がする。

その辺があの
歴代三位の売り上げの
秘密なのかもしれない。


他にもそれこそジャクソン5の
I’ll be Thereなんかもやっているし、

ネルソンのWithout Youも
取り上げていたりする。

でもトムトム・クラブには
ちょっとびっくりしたかな。

まあこちらは
厳密にはカヴァーという訳でも
ないのだが。

とにかく何をやっても
彼女の曲になってしまうのは、

声と音域とそれから
強力な唱法の故であろう。

だからこそIt’s Raining Menの
マライア・ヴァージョン、
是非とも聴いてみたいです。

まあいうだけはただだから。