ブログラジオ ♯167 Angel of the Morning | 浅倉卓弥オフィシャルブログ「それさえもおそらくは平穏な日々」Powered by Ameba

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ジュース・ニュートンとおっしゃる。

Greatest Hits/Juice Newton

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時代的にあるいは順番が
前回と逆だったかなと
思わないでもなかったのだけれど、

80年代の極めて初頭、
だからまあ、ほぼ

ブロンディ(♯165)や
J.ジェット姉御(♯163)と同時期に

大活躍されていたらしい方である。

もっとも、歯切れがやや
悪くなってしまっている通り、

実は僕自身がこの方のお名前を
きちんと把握したのは

遺憾ながらだいぶ後になって
しまってからのことだった。

それでも曲だけは知っていた。

――ような気がする。


もちろん記憶にあったのは
このAngel of the Morning
だけなのもまた事実なのだが、

それにしてもはたしていつ
どんな形で自分が

このメロディーを
最初に耳にしていたのかが

まるっきり
思い出せないのである。

だから、曲名もアーティスト名も
きちんと一致しないまま、
なんとなく脳裏に忍び込んでいた。


そういった感じなのである。

たぶんプリテンダーズ(♯27)の
クリッシー・ハインドによる
カヴァーをテレビで耳にして、

あれ、これどっかで
聴いたことあるよなと
そんなふうに思ったのが

ある意味で同曲が
はっきりと意識に上ってきた
最初であったはずだから、

曲のタイトルが頭に入ったのは、
95年とか96年とか
そのくらいの出来事だったのでは
なかったかとは思う。

それ以前についてはだが、
正直さっぱりなのである。

中坊時代の深夜のラジオで
あるいは一度くらい
耳にしていたのかもしれない。

しかしながらこちらもおそらく
同時期のヒットであったはずの
I Love Rock n’ Rollや

あるいはJガイルズ・バンドの
Centerfoldほどには
鮮明に記憶に残されてはいない。

MTVでお顔を拝見したことも
たぶんないのではないかと思う。


確かにフックのメロディーは
それなりに印象的なのだが、

全体としては
やや弱いというか、

はっと目を引くような種類の
アクセントに欠ける
曲であることもまたたぶん
間違いはないとは思うから、

つい聞き流してしまっていた
みたいな可能性は否めない。

それでもなんだか、
昔からよく知っていたように
思えて仕方がないのである。


ああ、このサビは知っている。

あるいは初めて聴いた時にも
実はそんなふうに思ったりして
しまっていたのかもしれない。

しかもこれが当時
最高位四位を
記録していたのだというから、

まあ僕としては
知っていておかしくは
全然ないはずなのである。

なんであの頃、アルバムにまで
手が届かなかったんだろう。

それどころか名前さえ、
きちんと頭に
入ってきていなかったんだろう、と

まあそんな、半ば悔しさにも
よく似ている不思議な気持ちに
させられてしまったりするのである。

いい曲だから、なおさらである。


さて、この
ジュース・ニュートンなるお方だが、

調べてみると、
デビューはずいぶんと早い。


70年代の前半には、
すでにグループを結成し、

RCAとの契約を得て、
シルヴァー・スパーという
バンドと一緒に

75年と翌76年に
それぞれ一枚ずつ
アルバムを発表してもいる。

当時の録音はもちろん、
僕自身はまるで
耳にしたことがないのだけれど、

いわゆるカントリーの分野に
分類されるものであるらしい。


その後キャピトルに移籍して一枚、
そして同じレーベルから、

ソロ名義でさらに二枚の
アルバムをリリースしているのだが、

この計五枚はいずれも
泣かず飛ばずだったと
いってしまってよい程度の
実績だった模様である

ところが81年、
JUICEというタイトルで

まるで再デビュー盤のように
改めて挑んだアルバムから、

このAngel of the Morningが
いきなり空前の大ヒットとなり、

彼女は一躍
スターダムへと駆け上がる。

続いてカットされた
Queen of Heartsなる曲は、

自己最高位である
二位を記録し、

同年から翌年にかけ、
さらに二曲を、
トップ10に送り込んでいる。


結構すごい実績である。

いや本当、なんで
見つけていなかったんだろう。


さて、上でも触れたように、
この方の基本の軸足は

どうやらカントリーの方に
置かれていた感じである。

しかしながら今回の
Angel of the Morningや、


上のベスト盤に収録されている
他のトラックを耳にする限り、

個人的にはごく普通に
ポップスしているように思う。

最早フォーク・ロックという言葉さえ
当たらないような気がしないでもない。

しかし、この辺りの境目は
本当に難しい感じである。


カントリーのジャンルについては
本邦ではなかなか

プロモーションの俎上に
上げられて来ないことも
また同時に事実である。

ガース・ブルックスなんていう
今や歴代何位だかの売り上げを
誇るようになったシンガーが

90年代が始まる直前、
いきなり登場してきても
いるのだけれど、

ラジオなんかで耳にすることも
ほぼなかったと記憶している。

だからまあ、そういうのもあって、
当時の自分のチャンネルには
引っかかってこなかったのかなあ、と


自身に納得させているというか、
まあ半ば以上言い訳である気も
自分でもしないでもないけれど。

でもジョン・デンバーとか
PPMとかは
昔から知っていたよなあ。

まあ寄り道というか
愚痴もどきはそろそろこのくらい。


さて、このAngel of the Morningだが、
実はいわば不倫の歌なのだそう。

いや、あまり歌詞なんて
気にも止めずに流していたから、


このテキスト起こし始めるまで
そんなことは思いもしなかった。

でもなんかそういわれてみると、
どこがどうという訳でもないけど、

あの『恋に落ちて』を
思い出させるようなところが
ないでもないかもしれない。

まあこれも個人的な印象に
過ぎない訳ではあるのだが、

何かが似ているような気は
なんだかすごくしてしまう。

そもそもこの曲は65年頃に
作者のチップ・テイラーなる方が、

当時のいわば
アイドル的な存在だった

コニー・フランシスに
歌ってもらおうと思って、
書いたトラックなのだそうである。

ところがコニー・サイドが
曲のテーマが本人のイメージに

マイナスになりかねないと判断し、
実現には至らなかったらしい。


その後何人かの歌手によって、
取り上げられたこの曲は

ようやく68年になって
メリリー・ラッシュなる方の
歌唱によって、

まず最初に全米トップ10入りを
果たすヒットとなっていた。

ほか、時期は定かではないけれど、
O.N=ジョン(♯130)や、
ダスティ・スプリングフィールド、

それにボニー・タイラーなんて辺りも
レコーディングしてはいるらしいので


あるいはこういった録音を
知らないうちに
どこかで耳にしていたのかなと
思わないでもない。

だけどやっぱり謎である。

ただこういったシンガーが、
歌いたいと考えるだけの
力を持つ詞とメロディーであることは
断言していいのだと思う。


さて、その後ジュースは
メインストリームでの人気が
衰え始めた85年には、

初心に戻ってとでもいうべきか、
今度はいわば
カントリー一色のアルバムを発表し、

HOT100のリストからは
すっかり姿を消してしまうものの、

カントリーのチャートでは、
一位を含むトップ10入りの
実績を残す複数のヒット曲を
世に送り出していた模様である。

さらには世紀が変わった後も
メジャーからのリリースでは
残念ながらなかったようだが、

三、四年に一枚くらいのペースで
新作を発表し
現在に至っているらしい。

なお、蛇足ながら上のベスト盤は、
ほぼJUICEとそれに続いた


計三枚のアルバムからの選曲で
編成されているものだから、

カントリーというよりはむしろ
ポップスやダンス・ミュージックの

手触りに近いトラックが
ほとんどであるといっていい。

どれも極めて聴きやすい。


では締めの小ネタ。


僕自身は未見なのだが、
昨年公開になった

マーベル・コミック原作の
映画『デッドプール』の
オープニング・クレジットで、

このニュートンのヴァージョンの
Angel of the Morningが
使用されているのだそうである。

ほかにも幾つか近年も、
オープニングやエンディング、

あるいは作中人物が
口ずさんだりといった形での
映画での使用の実績が

同曲に関しては
少なからず見つかってくるようで、

さらには本邦で流れていたのか、
あるいはあちらでだけの
放映のものだったのかまでは

きちんとウラが
取れてこそいないのではあるけれど、

トヨタはハイランダーのCMで
使われていたりもしていたらしいから、

本当にこの曲はもう
すっかりスタンダードの領域に


十分手が届いていると
いってしまっていいのだと思われる。

だから、たぶんリアルタイムで
経験していたはずなのにと思うと、

やっぱりちょっと悔しいのである。