ブログラジオ ♯74 Addicted to Love | 浅倉卓弥オフィシャルブログ「それさえもおそらくは平穏な日々」Powered by Ameba

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もうすでに、ここでは一度ならず
名前を出しているかとも思われるが、

大御所、ロバート・パーマーである。

曲は86年の全米No1ヒットで、
英国でもやはり一位を獲得している。


Riptide/Robert Palmer

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今となってはこの方の代表曲は
十中八九、このトラックに
なるのだろうとは思うのだけれど、

これがすごくいい曲かというと、
実はそうでもなかったりする。


いや、万が一これがすごく
好きだという人には申し訳ない
気もするけれど。


そろそろすごく聴き込んだという
人たちばかりではなくなってきたので、

前回のUB40に続き、やっぱり
どうしても、こんないい方が
増えてきてしまうかもしれない。


なんかね、続けるうち、
どうせならこの人もこの人も
みたいな感じにはなってきてますね。


まあ半ば意地みたいなものなんだけれど。


さて、余談はこのくらいにして
そそくさとAddicted to Loveに戻ろう。


なるほどパーマーの歌は
やっぱり十分にかっこいい。


だけど曲自体は、そこまでの独創性や
キャッチーさを誇っている訳では
決してないのではないかと思う。

では何故、トップワンにまで上り詰めたのか。

とりわけこの曲に関しては
PVの貢献が、たぶん相当に
大きかったのではないかと思う。


この映像のインパクトが
とにかくものすごかったのである。


スーツを決めたパーマーを囲んだ、
バンドの面々がみんな女性で


それこそヴォーグ辺りに出てきそうな
モデルばりにびしっと決めたメイクと
お揃いのトーンの衣裳で並び、


終始徹底的に無表情で、
楽器を持って、体を揺すっているのである。

本当に弾いていた訳では
たぶんないはずだと思う。


もしそうだったら
それは大変申し訳ないけれど。


でも絶対にないだろう

いや、とにもかくにも本当に
不思議なビデオだったのですよ。


探せばすぐどこかで
見つかってくるとは思いますが。


なんだろうなあ、この違和感。

ほら、やっぱりバンドって、
基本的には、音楽をやっていることが
途轍もなく嬉しい人たちじゃないですか。


エディ・ヴァン・ヘイレンなんか
いつみてもギターを弾けるということが
この上なく楽しそうに見えてきます。


そういうのが、この映像からは、
一切伝わってこなくて、
その辺りが、それまで見たことのない種類の

違和感というか、シュールさというか、
そういうものを
醸し出していた気がします。


なんかでも、このアイディアの基本って、
パーマー御本人の趣味だったみたいです。


なるほど、ロッド・ステュワートと
仲がいい訳ですね。はい。


さて、もうずいぶんと昔の話になるけれど、
FOXのドラマの『アリー・マイ・ラヴ』で、
子供の頃のアリーが、このビデオを
熱心に見ている場面があったかと思う。


なんだかいきなり、
思いも寄らなかった場面で
彼女たちのお顔を再び拝見して、


びっくりするやら苦笑するやら、
複雑な気分になったことを覚えている。

でも、あの映像でバンドに憧れた
ティーンネイジの女の子っていうのも、
あちらでは実は結構、
いたりもしたのでしょうか。


それはそれで、なんというか、
ちょっと罪な話かもしれないな、とも
思わないでもないのだけれど。


まあでも、あの映像はたぶん、
本当に頻繁に流れていたのだと思う。


さて、今回はここから
いきなり話はガラッと変わる。


このロバート・パーマーの
名前を出しておいて、


僕としては決して
あのパワー・ステーションを
素通りしてしまう訳には行かないのである。

一応説明しておくと、
このバンド、84年頃から一年あまり、
テンポラリーに活動したユニットで、


DDのジョン&アンディのテイラー二人が
シックのドラマー、トニー・トンプソンと、


そしてヴォーカルにこの
ロバート・パーマーを迎えて、
結成したグループだったのである。

もっとも、この時パーマーは
レコーディングに参加しただけで、


続いて行われたツアーには、
別のヴォーカリストが
迎えられていたはずである。


正直これが出てきた時は、
いったい何が始まったんだろうかと
眉をひそめたものである。

特にDDの解散が
アナウンスされた訳ではなかった。


なのにメンバー二人が、
別の名前でバンドを組んで、
レコードを出してきたのである。


しかも、予想されたことだが、
デュランデュランとは、
まったく違うタイプのサウンドだった。

いってみれば、DDからは
絶対出てこないであろう種類の、


ハード・ロックに極めて近い、
いわば正統なブリティッシュ・ロックの
スタイルだったのである。


詳しく聴けばなるほど80年代っぽい
工夫というか、細工が
随所にちりばめられてもいるのだけれど、

正直ちょっと、古臭く思えた。

だが勢いというか、あるいは
時流が味方についていることの、
すごさとでもいうべきなのか、


パワー・ステーションの最初のシングル、
Some Like It Hotも
トップ10には十分に届くヒットとなり、

まあ、かくしてあの頃の僕らに
このロバート・パーマーという、
シンガーを紹介してくれたという訳である。


なおこの曲、マリリン・モンローの
あの有名な同名の映画とは
まったく関係がないので念のため。



ちなみにこのバンドのもう一曲の
ヒットであるGet It Onは、

英国が誇るグラム・ロックの
二枚看板のうちの一人、


マーク・ボラン率いるT.レックスが
71年に放ったヒット曲である。


彼らのもう一つの代表曲である
20th Century's Boyなる曲を
メイン・テーマに据えた、

映画『20世紀少年』三部作が、
大ヒットを記録したことは、
大方の記憶に新しいところであろう。


僕も、ちゃんとオリジナルの音源を
使ってくれていたことには
大きく拍手をしたものである。



なお、このロバート・パーマーも
残念ながら01年に、
54歳の若さで鬼籍に入られてしまっている。


トリビアの代わりという
訳でもないのだけれど、
今回の締めはどちらかというとネタの続き。



04年に、ロッド・ステュワートが、
ロイヤル・アルバート・ホールでの
ワン・ナイト・オンリーなる
タイトルを冠したライヴで、


この盟友への追悼の意を込めて、
Some Guys Have All the Luckからメドレーで
今回のAddicted to Loveを披露しており、
この映像がソフト化されている。

マキシ・プリーストの時に
少しだけ触れているのだけれど、
上のSome Guys Have~ではこの二人、


時期こそ違え、いわば競作シングルを
出したような形にもなっている。


それぞれにアクの強い、
でもどこか唱法に
通じるところのないでもないこの二人が、

いったいどんな機会に顔を突き合わせて
はたしてどんな話をしていたものか。


少しだけ興味深いような
気もしないでもないこの頃である。