ブログラジオ ♯58 Keep on Movin’ | 浅倉卓弥オフィシャルブログ「それさえもおそらくは平穏な日々」Powered by Ameba

浅倉卓弥オフィシャルブログ「それさえもおそらくは平穏な日々」Powered by Ameba

浅倉卓弥オフィシャルブログ「それさえもおそらくは平穏な日々」Powered by Ameba

さて、ソウルⅡソウルである。

Vol. 1 - Club Classics 10th Anniversary/Soul II Soul

¥1,791
Amazon.co.jp


サウンドのテイストは、いかにも
アシッド・ハウスという言葉が
一番似合いそうな手触りである。


リズム・キープは明らかに
プログラミングされたビートである。


そのせいか本人たちも、バンドとはいわず、
サウンド・システムみたいな
いい方を好んでいたようだけれど、

とにかくこのユニットの結成当初、
シンプリー・レッドの時(♯48)に
名前を出した屋敷豪太さんが在籍していて、


この方が、このアルバムで初めて、
ドラムンベースというリズムを
生み出したとされてもいるようである。


だから、シンプリー・レッドのリズム隊が
STARS以降そちらに寄っていくのは、
十分に頷ける話なのである。


さて、ソウルⅡソウルのデビューは88年で、
同年二枚のシングルが発表されている。


そして翌89年、このファースト・アルバム
CLUB CLASSICS VOL Iの発売で、
彼らは突如、シーンを席捲するのである。



だから、本当に個人的な
想像でしかないのだけれど、
時代の嗜好性そのものが、

どうにも上手く形容しがたいが、
世紀末的なある種の退廃に、
少しずつ寄り始めていく、


その先駆けに、このソウルⅡソウルの
音楽性が、上手く合致したのではないか。


そんな印象を拭いきれないのである。

確かにアプローチは新鮮だったが、
曲にさほどの独創性があったとは、
正直あまり思えない。


なるほどキャロン・ウィーラーなる
女性シンガーがヴォーカルを努めた二曲、


今回の表題にしたKeep on Movin’と
それからBack to Lifeの二曲は、
それなりにすんなりと入ってくる。

ところが、ジャジーBのラップを
メインにしたトラックは、
まあ個人的にはちょっと
いただけない気がするのである。


Tighten Upの焼き直しみたいにしか
聴こえてこないトラックもあるし。
いや、それなりに消化されてはいるのだが。


なお、上のBack to Lifeは
映画『ブラック・レイン』にも
使用されている模様である。
松田優作さんが最後に出たやつね。


さて、それでもやはり、往時の
彼らの勢いは相当に凄まじかったのである。


90年にはグラミーのR&B部門で、
ベスト・グループと
ベスト・インストゥルメンタル・トラックの
二部門を受賞してさえいる。


とりわけR&Bの部門は、
イギリスのアーティストには
あまり縁がなかったはずである。

これだけを見ても当時の彼らの人気と評価とが
ともにずば抜けたものだったことが窺われる。


もっとも、この人たちの音楽が、
リズム&ブルースなのかどうかについては、
正直少し首を傾げたくなる部分もあるけれど。


まあむしろ、R&Bという言葉の意味すら
変質を余儀なくされたのが
90年代という時代だったのだという
見方なら、ひょっとして成立するのかもしれない。


さて、では恒例の、トリビアめいたもの。

そんなにはまったユニットではないので、
このソウルⅡソウルについては、
デビュー盤以外は手を出していないのだが、


一枚だけ、オムニバスで
彼らが参加している作品が
何故だか手元にあった。

91年にコロンビアから出された企画盤で、
タイトルを
SIMPLY MAD ABOUT THE MOUSEという。


訳せば、ただあのネズミに首ったけ、
くらいな感じになる。


――あのネズミ。

つまりは浦安やフロリダやアナハイムに、
日付を同じくして随時次々と出没なさる、
あの彼のことである。


どういう経緯でこの企画が実現したのかは、
よくわからないのだが、これ、だから、


ディズニー映画の代表的なトラックを、
主にアメリカのアーティストが、
それぞれに自分のスタイルで
カヴァーした作品集なのである。

これがなかなかに面白い。

Wish upon a Starを軽めにフューチャーした
イントロダクションの後、
いきなり登場してくるのは、


ビリー・ジョエルの歌唱による
同曲だったりするのである。

ピアノの弾き語りから、
いかにもディズニーっぽい
ストリングスへの展開。


間奏ではミュート気味のペットがソロを取る。
いや、遊んでいるなあ、という感じである。


続いてはカーズのリック・オケイセックが
『南部の唄』の邦題で知られる
Zip-A-Dee-Doo-Dahを披露している。
スプラッシュ・マウンテンで流れるやつね。

そしてたぶんイギリスからの唯一の参加が
このソウルⅡソウルで
『リトル・マーメイド』のナンバーから、
Kiss the Girlをカヴァーしているのである。


でも、この時のシンガーは
誰だったんだろうなあ。



まあだけど、収録作品の中では、
L.L.クールJによる
『狼なんかこわくない』つまり
Who’s Afraid of the Big Bad Wolfが
実は一番の聴き所だったりする。

だってあのラップのあの調子で、
三匹の子豚が、とか、大きな悪い狼が
とか、いっちゃってる訳ですよ。


アレンジもシンプルでいいし。

シュールといおうかなんというのか。
聴くたび思わず苦笑が湧いてきてしまう。

ま、一曲だからつきあえるという部分は
もちろん否定しないのだけれど。



さて、調べてみたところこの企画、同時期に
映像作品もリリースされている模様である。
しかもフォーマットはVHSとLD。


機会があれば見てみたいけれど、
再発が相当難しそうな企画ですよねえ。


まあ書く前からこんなふうになりそうな気も、
実はしないでもなかったのですけれど、


やっぱり今回は、本編よりトリビアの方に、
やや力が入ってしまいました。



だから、好きな人には大変申し訳ないけれど、
正直僕のソウルⅡソウルへの興味は、
昔も今も、まあだいたい
こんなものなのである。

ただスルーする訳にもいかない存在で
あることは、もちろん十分に認めている。


だからこそ取り上げもした訳だし。


という訳は今回はついでにもう一枚ジャケ写。

Simply Mad About the Mouse

¥2,096
Amazon.co.jp

よぉく見て下さいね。
タイトルの書かれているところ、
あの目の形になっています。


だから下の方に見えている
赤い二つの山みたいなのは
実は彼の舌の、上半分の部分なんです。