ブログラジオ ♯35 Owner of a Lonely Heart | 浅倉卓弥オフィシャルブログ「それさえもおそらくは平穏な日々」Powered by Ameba

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はい、皆様当然前回の予告でおわかりの通り、
今回はプログレの雄、イエスです。

90125/Yes

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80年代にはこのイエスは、まあいっちゃ悪いけれど
ピークはほぼとっくに過ぎていた。音楽よりもむしろ、
幾度も繰り返されるメンバーチェンジのニュースばかりが
次から次へと届いてくるような有様だった。


ヴォーカルに入ったトレヴァー・ホーンと
鍵盤のジェフ・ダウンズのバグルズ・チームは
いつの間にか辞めてしまっていて、
しまいには脱退した過去のメンバーたちが結集して
アンダーソン、ブルーフォード、ウェイクマン、ハウ
(略称ABWH)なんて名前で活動を始めさえしていた。


ちなみに三番目のリック・ウェイクマンは、
イエスへの加入の前は、
ジギー以前のボウイの何枚かのアルバムで
鍵盤を引き受けていた人物である。

だからあのChangesや、あるいは
Life on Marsのピアノは
レコードはおそらくは彼のプレイなのである。
クレジットからだけでは、ボウイ自身が
弾いていた可能性も完全に否定はできないけれど。


あと、ブルーフォードって、確かあの頃は、
ブラッフォードって表記じゃなかったっけか?
まあ色々変わるけれどね。ゲイブリエルとか。


さて、このOwner of a Lonely Heartは、
バンドの歴史の中で、いわば商業的に
最も成功したトラックとなった。

こもったような独特のエフェクトを聴かした
ドラムの短いローリングから、
ディストーションバリバリのギターが刻みだす、
単純なマイナースケールのリフのパターン。
シンプルだからこそ、むしろ強烈に訴えかけてくる。


実際この五つの音が、Lonely Heartのすべてを
決定してくるといっても決して過言ではないだろう。
どことなく、スプリングスティーンの
Born in the U.S.A.のあのリフの手触りと
通じるものがないでもないとさえ思う。


それにしても、この音の作り出す空間の手触りの
極めて異質なことにはいつも改めて驚かされる。

たとえば一般的なロックンロールなら、
たいていの場合煙草の煙の揺らいだ
カウンター・バーみたいな景色がよく似合う。
あるいは熱気にあふれたライヴハウス。
そういう光景がどこかで必ず浮かんでくる。


だがこのLonely Heartの持つ雰囲気は、
もっと透明というか、無理やりたとえるなら
それこそ成層圏みたい。
それも、宇宙に変わるぎりぎりの辺り。
どうにも上手くいえないんだけどさ。


あと間奏のギターの荒っぽいシャープさとかも
相当凄いしね。PVの印象もあるけれど、
目の前で火花が散ってるみたい。

だから、このサウンドが基本的に
ロックバンドの編成の範疇で
作り上げられてしまっていることに
改めて唖然とするのである。


知ってる人には百も承知のことだろうとは思うけれど
このLonely Heartを収録したアルバム、
原題を90125という。


これ、商品番号なのである。

お手持ちのCDどれでもいいから見ていただければ、
アーティスト名と作品タイトルのほかに、
アルファベットと数字とで構成されている一文が、
必ずどこかに見つかるはずだと思う。


輸入盤はたぶん数字の羅列が幾つかのハイフンで
結ばれていて、国内盤の場合は頭にアルファベットの
組み合わせがついていると思う。そう、それです。


だからタイトル未定で先に会社の企画番号をとって、
それをバンドが、これが今度のタイトルだから、と
会社側に提示するといったような手続きを
たぶん取っていたのではないかと想像している。

いや、A&R相当頭抱えたろうな、と思うよ。
だってさ、わかると思うけれど、
このタイトルじゃあ売りにくいことこの上ないよ。


まあだから自分も一回くらい、
ISBNコードを書名にするみたいな離れ業を、
やってみたいな、と思わないでもない訳ですよ。
絶対OKでないだろうとは思うけれどね。


さてここから話はやや、というかすっかり赴きを変えます。

先頃ついに物語の冒頭から本格的にアニメ化された
荒木飛呂彦先生の『ジョジョの奇妙な冒険』の
その第一期のエンディングで、いきなり
このイエスのRoundaboutが流れてきた時には
あまりに不意を突かれて完全にぽかんとしてしまった。


唖然とするといった状態すらとっくに通り越し、
本当にその場で口を開けたまま、みたいな感じ。


いや、でもすごく格好よかったけどね。
終わってみれば絶対これしかなかったよな、
とさえ思ってすっかり納得してますよ。

だからね、ちょっとだけ、第二期のエンディングが、
イエスの次がバングルズでは、ややどころではなく
相当見劣りしちゃうだろう、と僕としては
思わないでもない訳ですよ。まあ確かに
そもそも比較することが間違っているんだけれどね。


いや、わかるよ、わかるんだよ。
ここがEgyptian以外に有り得ないのも
本当に凄くよくわかるんですよ。
でもさ、なんかさ、とやっぱり思ってしまう訳ですよ。



さて、では今回もまたまるで使い道のなさそうなトリビア。
このLonely HeartのPVには、スタジオでの
セッション風の光景が、冒頭近くに登場してくる。

このショットの中で一瞬だけ映り、ブレイクとともに
右手を突き上げるパフォーマンスを見せている、金髪の
キーボーディストがいる。名をエディ・ジョブソンという。


この方、実はこの撮影を挟んだ数日間程度しか、
イエスには在籍していない。
まさにこの日一日だけだった
という説もどうやらあるくらいの模様である。


90年代の再結成の時にも、
たぶん呼ばれてないんじゃないかな。

いや、今回はいつにも増して重箱だな。
むしろ披露する機会があった方、
ご報告いただければ嬉しく存じます。


さらにいうとこのジョブソンなる方、
一時期ロキシーにも参加していたみたいです。
こちらも全然知りませんでした。