『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』 | 浅倉卓弥オフィシャルブログ「それさえもおそらくは平穏な日々」Powered by Ameba

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前回ついタイトルを出してしまったので。
94年のアメリカ映画である。

インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア

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トム・クルーズにブラッド・ピット、さらには
アントニオ・バンデラスという強烈な面々が、
それぞれに吸血鬼を演じているという、
今となってはある意味貴重かつ贅沢な一本。


しかも当初はこのラインナップに加え、
リバー・フェニックスまでキャストに
予定されていたというのだからすごい。


もしこのバンデラスがジョニー・デップだったら、
ある意味本当にかなりレジェンダリーな作品に
なっていたかもしれないなあ、などと、
外野なのでまた例によって勝手なことを
いってみたりもしますけれども。

さて本作、タイトルの通り吸血鬼物である。

――吸血鬼。

いや実際、最初に誰がこんなものを考えたのかと、
半ば嫉妬交じりで時に真剣に悩んだりもする。

もちろんジル・ド・レイとか、あるいは
エリザベート・バートリとかいった、
結果としてこの怪物のモデルになってしまった存在、
つまりはそんな理屈でもどうにかつけてしまわなければ、
その行為が到底容易には解釈することができない種類の
人々が本当にいたことは、たぶん事実なのだろう。


いずれにせよ、ブラム・ストーカーとか、
あるいはレ・ファニュの『カーミラ』とか、
それなりに若い頃には目を通したものである。


そもそもゴシック・ホラーと呼ばれるジャンルは、
大部分英文学の領域なので、半ば必要に迫られて、
という背景もあるにはあった。
だがやはり興味も少なからずあったのだと思う。

あるいは『黄蝶舞う』辺りを
御一読下さっている向きには、ひょっとして
お察しかもしれないけれど、
基本浅倉、人外は決して嫌いではない。


なお、念のために注記しておくけれど、
人外=人ならざるもの、という意味である。


むしろこういった、いわばリアリズムの範疇を
思い切り踏み越えた設定あるいは装置を用いなければ、
深く切り込むことのできないテーマというのは
確実にあるのではないかと思う。

そしてそういう方法論の存在を
まず最初に僕に教えてくれたのが
いったいどんなものたちだったかというと、
おそらくは手塚治虫・石ノ森章太郎の両巨頭と、
さらには永井豪による一連の作品群で
あったこともまた否定のしようがないのである。


まあこの辺りの話は長くなるので
今回は譲ることにするけれど。


さて改めて、ヴァンパイアとはつまるところ
人を捕食対象とすること、そしてほとんど不死に近い程の
不老長寿であることによって特徴づけられる存在である。

とりわけ後者の要素は、ある意味で他者と異なった
時間の流れを生きている存在だといい換えても、
さほどの誤りにはならないのではないかと思う。


だた一人生き永らえていくことの、すなわちある意味
周囲から取り残されてしまっていくことの孤独感。


ヴァンパイアものが宿命的に内包するテーマは
たぶんこの一点に集約されてくる。

だが翻れば、いまだかつてそんなものが
本当に存在したことなど、たぶんないのである。


ところがその苦悩が、これらの作品群によって、
受け手にとって共有可能になるということ、
むしろある種のシンパシーをさえ
呼び起こしてしまう場合があるという点が、
僕にとって相当興味深く、同時にひどく不思議な部分でも
あるのだけれど、まあ長くなるのでやっぱりこの辺で。


さて、本作でもこのテーマは少女クローディアを中心に
クルーズ演じるレスタトとブラピのレイとの
対比という形をとって変奏されている。
まあ詳細は、やはり見てのお楽しみということで。

で、さらにはこのクローディアを演じていたのが
キルスティン・ダンストだったりもするのである。
スパイダーマンのヒロインの人ね。


二十年経って、メイン・キャスト三人が三人とも
最前線で活躍している。最前線どころか、
毎年複数の新作が公開されている感じですらある。
その点だけでもたぶん比肩するものがあまりない。


もちろんキャスティングのみならず、
とりわけ舞台をアメリカに持ってきた点が、
本作がヴァンパイアものとして極めて
斬新だったこともまた確かなことだとは思うが。


さて、これもまた例のよってという感じだけれど、
本作を取り上げた以上は、僕としては当然
主題歌についても触れざるを得ない。
いや、決して義務ではないのだけれど。


以前ちらりと言及しているけれど、
この作品のメイン・テーマは、
ガンズ・アンド・ローゼズによる、
あのSympathy for the Devilの
カヴァーなのである。


当時ガンズはまさに人気絶頂だった。
その彼らがストーンズのあの名曲を演るのである。
それだけで話題性は十分だった。

まあもちろん、アレンジも歌唱もノリも
圧倒的にオリジナルに軍配が上がることは否めない。
当然個人的な感想ではあるが、異論のある向きも
あまりいらっしゃらないのではないかと思う。


しかもさらには、この時のレコーディングが、
結局のところガンズ瓦解の直接的な
引き金となったらしいのである。


詳しいことは省くが、スラッシュのギターに
アクセルが勝手に音をかぶせたとか、
まあそういったようなことがあったらしいのである。

一応だけれど、上のアクセルはヴォーカリストで、
スラッシュというのがギタリスト。
だからこの文章の場合はそれぞれが個人名である。


知らない人にはややわかりにくいかもしれないなあ、
などと思ったもので、念のため追記した次第である。