ブログラジオ ♯21 Breakout | 浅倉卓弥オフィシャルブログ「それさえもおそらくは平穏な日々」Powered by Ameba

浅倉卓弥オフィシャルブログ「それさえもおそらくは平穏な日々」Powered by Ameba

浅倉卓弥オフィシャルブログ「それさえもおそらくは平穏な日々」Powered by Ameba

SOSこと、スウィング・アウト・シスターである。
デビュー当初は三人組で、途中から二人きりの編成と
なっているから、まあ本邦でいえば、
あのドリームズ・カム・トゥルーと
少し似た歴史をたどってきたともいえるのかもしれない。
そういえば音楽の手触りも、
どことなく近いものがない訳でもない。

Breakoutは彼らのデビューから二枚目のシングルで、
まさにバンドのブレイクを担ったトラック。
基本こういうブラスアレンジの華やかな曲は大好物で、
アルバムも繰り返し聴いていた。
アメリカ由来のジャズやビッグ・バンドといった
スタイルを巧妙に昇華したサウンドという印象だった。

はっきりとした資料はないが、
彼らは欧米での注目度以上に、
とりわけ我が国の渋谷や原宿辺りで一時期
ひどくもてはやされていたような感がある。
ベルギーのアンテナというアーティストから始まった、
ジャズへの傾倒を隠さないけれど
あくまでポップ・シーンの範疇に留まった
女性ヴォーカルによるトラックというのは、
この二人組を挟んで、バーシアや
あるいはワークシャイといった
後続の面々に受け継がれていくことになる。
だから当時、ちょっと気の効いたブティックの前を
通りかかったりすると、彼女たちのアルバムはもちろん
この手の曲ばかりをよく耳にしたものである。
今となって思い起こせば、たぶんそんな現象もあるいは
あのバブルと呼ばれた浮き足立った喧騒と決して
無関係ではなかったのかもしれないとも思わないでもない。

アルバムのタイトルはIt’s Better to Travel。
旅行でもいった方がいいんじゃない、みたいな意味である。
そう思って改めて聞きなおしてみると、
なんとなくアルバムそのものが、
一つの小旅行みたいなモチーフをちりばめて
作られてあるようにも感じられてくる。

出発の興奮にはしゃぎ回っているBreakout。
そして異国の地で迎える夕暮れの世界、
物悲しげなTwilight World。
あるいは習慣の違いか何かのせいで、
小ばかにされたような笑みを浮かべて接せられて、
少しだけ沈んだ気分になってしまう。
そんなことを考えると、
たぶんこの旅の舞台はヨーロッパだろうな、
という気にもなってくる。
パリやヴェニスといった街のイメージが
なんとなく湧いてきてしまうのである。
もちろん理由は定かではないけれど。

それにしても、コリーンの声は短調の曲よりもよほど
メジャースケールに似合っているような気がする。
だからなんとなく重たい曲や、
ややテンポの遅いトラックでは、
正直にいえばどこか物足りなさを覚えたものだった。
その感覚はどうやら今でもあまり変わってはいない。
なんとなくその辺りも、
ドリカムと通じるものがあるような
気がしないでもない。

それでもジャズに留まらず、それこそバカラックや
あるいはシャンソンやフレンチ・ポップス、
ひいてはヘンリー・マンシーニ辺りの影響まで垣間見える
メロディーラインやコードワークのセンスは
本当に非の打ち所なく安定していて、
どの作品も安心して聴けるバンドである。


トリビアという訳でもないけれど。
96年にTBSのドラマ主題歌を書き下ろしたり、
あるいは昨年のユーミンのカヴァーアルバムに
参加したりと、とりわけSOSは
日本とのかかわりをひどく大事にしている印象がある。
それはおそらく、わが国での売り上げが
他の欧米市場に比べ安定しているからなのだと思う。
こういうバンドはほかにもあって、
時にBIG IN JAPANなどと称されることがある。
まあだから、この前のデペッシュとは真逆な感じ。
でもそういえば、確かまさにそんなタイトルの
楽曲を歌っていたアーティストもいたような気もする。
今となっては全然思い出せないが、
たぶんアルファなんとか。男性のソロ。
まあでも、考えてみればあの
BON JOVIをデビュー直後から
その潜在的な可能性をきちんと見抜いて、
熱心にサポートし続けていたのは
実は日本のマーケットでありファンなのである。
それってたぶんものすごいことだと思う。


It’s Better to Travel/Swing Out Sister

¥820
Amazon.co.jp