とりわけ元気があった時代だった。
もちろん本邦の話ではない。
一部ヨーロッパを含みこそすれ、
とりわけ英国のミュージック・シーンにおいて、
という意味である。
NEW ORDERを世に出したFACTORYを筆頭に、
ROUGH TRADE、MUTE、ZTTなど
まさに多士済々の様相だった。
その中の一つCHERRY REDなる
レーベルから登場してきたのが
この男女二人組のデュオ
Everything but the Girlだった。
グループの名前となっているこのフレーズ、
雑貨屋の看板とか張り紙とかに
結構書いてあるものらしい。
――女の子以外なら、何でも。
まあ、そういう斡旋はしてませんよって
いうような意味なんでしょうね、たぶん。
なんだかマイケル・ペリンとか
でなければテリー・ジョーンズが
店の奥から揉み手をしながら
登場してきそうな気もしますけれど。
あ、すいません。わかる人だけわかってください。
二人はモンティ・パイソンのメンバーです。
さてEBTGに戻る。彼らのことはこのように略します。
ジャジーでちょっとアンニュイで
ハーモニーに透明感があって、みたいなコピーが
ひどく似合ってしまう種類のサウンド。
ネオ・アコースティックなんて言葉もたぶん、
あの頃は使われていたはず。
この一連のシリーズで、女性のヴォーカルが
メインのトラックを取り上げたのは
実は今回が初めてである。
一応一発目にはこの二人にしたいな、くらいは
最初からなんとなく決めていた。
彼らのレコードを聞くたびにいつも思うのは、
アコースティック・ギターって
こんなに綺麗な音が出るんだ、ということである。
もちろんトレイシーの歌声も素晴らしいのだけれど、
ベン・ワットのギターが絶妙なまでに
彼女の声質とマッチして、音が作り上げる空間を
ほかのアーティストのものではそう簡単には
お目にかかれないほどの広がりにまで
到達させているのである。
その凄さは、ライヴ・レコーディングされた
幾つかのトラックを聴くとはっきりとわかる。
アルバムでの代表作となると、
メジャーからのリリースを敢行した五枚目、
Language Of Lifeということになるのだろうと思う。
一曲目Drivingのあの印象的なイントロを
鮮明に記憶している方もたぶん少なくはないだろう。
でも、あるいは中にはお察しの向きも
あるかもしれないけれど、僕のイチオシは
このOld Friendsという曲になる。
Language Of Lifeの次のアルバム、
Worldwideの先行シングルとして発表された、はず。
本当に美しい曲です。ほかの形容ができません。
まだ今のところの最新長編のままなのかな、
だから僕の『オールド・フレンズ』という作品は、
S&Gのものではなくこちらの
彼女たちの楽曲の方に由来している。
同作の執筆の間じゅうは、ほとんど彼らの
アルバムばかりを聴いていた。
900枚近い原稿になってしまったので、
ものすごい時間つきあってもらっていたことになる。
手元にある作品数が多くて本当によかったなくらいに
思ったのだけれど、最後の方にはさすがに飽きてきて、
何か聴いていないものはないかと、Amazonで検索した。
そこで見つけたのが、この、
Like the Desert Miss the Rainという企画盤だった。
だからどういう背景で作られたのかは不明。
発表年も実はよくわからない。
たぶん国内盤は発売されていないと思う。
ネオアコと呼ばれていたスタイルから一転し、
後期の二人はいわゆるクラブ・ミュージックへと
急激にアプローチを進めていく。実際ベン・ワットは
自らクラブDJを勤めたりもしているらしい。
そういった方向性の転換の加減が、このアルバムでは
ひどく心地好くまとめられているのである。
収録されたうち幾つかの楽曲は、
おそらくはセルフカヴァーである。
あるいはほかの場所への収録の漏れてしまった
リミックス・ヴァージョンの類を集めた
コンピレーションなのかもしれない。
実際曲そのものの発表年代を見てみると、
84年から2000年までと、
見事なまでに散らばっている。
だがこの作品ではそれが極めてバランスよく
編集されているのである。
という訳で今回のご紹介は、例外的に、
Old Friendsを収録したWorldwideと
このDesert Miss the Rainの二枚と
させていただくことにする。
Worldwide/Everything But the Girl
￥754
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Like the Deserts Miss the Rain/Everything But the Girl
￥1,269
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オールド・フレンズ (上)/浅倉 卓弥
￥1,000
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オールド・フレンズ (下)/浅倉 卓弥
￥1,028
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