最近読んだのはこの3冊。
岡本隆司『中国の論理 歴史から解き明かす』(中公新書 2016年)は、古代から現代までを通覧して、中国の二元的な構造を解説。「大夫」「士」あるいは「士大夫」といったエリートと、「庶」である大衆とからなる上下の構造が、変化を伴いながらも通時的に存在し、その論理が国境を超えて空間的に広がれば、「華」と「夷」の秩序編成になる。単なる大国のエゴではなく、古代以来の儒教的な価値観が、現代中国にいまなお生きているのだろう。
木村茂光『「国風文化」の時代』(青木書店 1997年)は、古代から中世への転換を解説。在地社会における村、都市平安京における町、朝鮮を排除したインド・中国・日本の三国意識が成立し、政治の世界では、漢文的素養に立脚した文人貴族が没落する。そのような変化の上に、「国風文化」が花開くとのこと。叙述の大半は、時代が転換する前提を解説することに費やされている。タイトルから想像できる摂関期そのものを取り上げた内容は、多くない。
井沢元彦『逆説の日本史26 明治激闘編』(小学館文庫 2024年)は、日露戦争を素材にして、陸軍参謀本部に代表される「バカトップ」の弊害と、持論の言霊・怨霊について力説。日露講和後の日比谷焼打事件では、メディアの果たすべき役割について論じ、いつもの朝日新聞批判へと展開。色眼鏡を通すことなく事実を伝えることが、メディアの果たすべき役割なのは間違いないが、受け手の側にも一定程度の見識が求められることも、肝に銘じるべきだろう。