源氏物語名場面㊹
浮舟 漆
橋姫神社
橋姫は
『橋の守り神』
祭神は瀬織津比咩せおりつひめ。
境内には
水の神『住吉神社』が並んで祀られている。
京都府宇治市宇治蓮華
🔲
薫が一杯機嫌で「古歌」を口ずさむ。
○さむしろに 衣片敷き 今宵もや
我を待つらむ 宇治の橋姫 『古今集』巻十四
狭い敷物の上に衣の片袖を敷いて
寂しく一人寝をしながら、
今夜も私を待っているのだろう
宇治の橋姫のような恋人は
薫はほろ酔い気分で口遊んだのだが
人柄なのだろう
妙にしみじみとした興趣をそそる。
■
「古歌」の含意にピンときた匂宮は
あわてて座を外し
吹雪の山道を宇治へ急いだ。
薫の《別荘》に辿り着くと
宇治川の対岸に用意している自
分の《隠れ家》へ浮舟を連れ出した。
薫は浮舟
を都に迎える準備を進めているが
そのことを知ってか知らずか、
匂宮は
《隠れ家》へ着くと
近いうちに浮舟を引き取るという。
□
浮舟は
どう対応すれば良いのか
想像もつかない事態になった。
薫の
《別荘》で上京の準備を
手伝っている母中将の君に事
情を説明することなどできない。
■
数日後
薫の《別荘》で薫と匂宮
双方の使者が偶然鉢合わせした。