㊸浮舟 参 | 吉備路残照△古代ロマン

吉備路残照△古代ロマン

吉備路自転車道を回って以来すっかり古代吉備国の残り香に取り憑かれました。
歴史と神話が絡み合っているから多くの遺蹟の故事来歴が謎に包まれています。
鬼ノ城・温羅伝説・鳴釜神事等の謎に新しい解釈を加えていけるので楽しみです。

源氏物語名場面㊸

 

 

浮舟 参

 

 

匂宮と浮舟

 

🔲

 

しかし時間がたち

気持ちが落ち着くにつれて

別の感情が浮舟に生まれていた。

 

淡泊とちがい

情熱的に愛情を示す匂宮

次第に魅かれていくのである。

 

匂宮、

 

○長き世を 頼めてもなお 悲しきは

 

   ただ明日知らぬ 命なりけり

 

行く末長い仲を約束してもやはり悲しいのは

人の命は明日をも知れぬことです

 

浮舟、

 

○心をば 嘆かざらまし 命のみ

 

   定めなき世と 思わましかば

 

人の命さえ永遠ではありませんもの

まして人の心など移ろいやすいものです

 

 

二月の上旬

ようやく宇治の《別荘》へ出向いた

何かしら思い悩んでいる様子の浮舟

「しばらく会わないうちに

女としてずいぶん成長したものだ」

感心、

近く都の【邸】へ迎える約束をした。

 

 

二月二十日過ぎの夜

宮中で『詩宴』が催されたが

漢詩好きの匂宮もむろん参加した。

 

だが急に

雪が激しく降り

暴風が吹き荒れたので

『詩宴』は早々に打ち切られ

匂宮の宿直部屋に何名か集まった。

 

 

が一杯機嫌で「古歌」を口ずさむ。