ブログを整理していたらコルドンブルーを卒業したばかりの私のバゲットのコツに関する記事が出てきました。4日分を1日にまとめてみましたが、今読むと??と思うところも多々あります。2012年に書いた生地です。この頃していた大きな勘違いは

「バゲットはクープがメリっとあいて、加水が多くてぼこぼこじゃないとNG」と思っていた事。


バゲットはいろいろな材料(酵母・粉・水・塩・モルトなどなど)と工程管理(発酵温度・熟成時間・ストレート法などなど)があり、生地のつなぎ方、パンチの入れ方、成型の仕方、ベンチタイムの取り方1つとっても全く違うパンが出来上がります。


それを伝えるレッスンが「バゲット&ハード系マニア」です。単発ですが、系統立てて教える事が出来るようにできたらよいなあ!!


以下が本題!!!


バケットに付きまとう問題は

①気泡

②クープ

どうしてもクープをきれいに美しくグラマラスなパンにしたいですよね。

そして、ぼっこぼこの不均一な気泡。憧れだと思います。


私もそのグラマラスなフォルムにあこがれて作り続けました。

高橋雅子先生の本やビビアンさんの本、志賀シェフの本、バケットの技術、その他「本屋状態」になっても読み漁る。そして焼き続けた「ナマバケ」(ナマコ上ののっぺりしたバケット)


クープはパーリングナイフで手前からそぐように切る事を練習しました。

良いと言われることは片っ端から試してみました。

オーブンもいろいろカスタマイズしました。

大分まともなバケットやハード系が焼けるようになりました。


①の問題についてはポイントは使う酵母などによって異なるので一概に言え無いと感じていますが、

大きく分けてイーストの場合

・生地を捏ねることは最低限(生地のつながりが不均一だとボコボコの大きな気泡ができやすいです)

・加水を多くする。

・成形で気泡をつぶさないように、そして気泡を拡散させるように成形する。


元気な天然酵母だとそれだけでぼこぼこの大きな気泡ができてきます。どうしてもイーストは細かい気泡になってしまう特徴があります。

続いて②の問題。

結論から言います。

「窯」が命です。

コルドンブルーのシェフにはっきりと言われました。



「コンベクションのオーブンではパンは焼けないよ。クロワッサンとかは良いけど、いわゆるパンは平釜で焼くものですよ」と・・・。


要するに、下火が強いと良いのですが、家庭用のオーブンはコンベクションタイプと言って熱風を循環させることにより温度を高くします。でも、パン屋さんの窯は「平釜」と言って、下から火が入ります。その輻射熱で上火もできることになります。構造がまったく違います。もちろんスチームもばっちり入ります。


とはいえ、オーブンを変えろなんて・・・無理無理。武蔵を買いますか(40万ぐらい)無理無理。


今現在あるオーブンのポテンシャルを150%出して焼くしかないのです!!

工夫をしましょう。


今や、スチーム機能のある電気オーブンが高性能で出てくるので、私が持っているようなコンベクションタイプのガスオーブンは最悪なパターンです。買ったときは「パンを焼くには最高!!」なんて思っていたのですが、大嘘でした~。でも、この2台のコンベッ君を使いこなすしかないのです。


コンベクションオーブンをうまく使うコツ

※1 下火を強くするために→火を止める(風を循環させない→蒸気が飛んでしまわない)

※2 蓄熱量を増やす→レンガを入れる(予熱1時間かかります・・・)

※3 1センチ厚の天板を用意して温める(これも40分ぐらいは時間を要します)


理論上、下火が強くて、蓄熱量が高ければパンを入れ手火を止めても余熱で下から火が入り続ける。しかも風が循環しないから蒸気を発生させてその蒸気も消えることが無い。


物理的に、冷めにくい素材=温まりにくい 


クープのためにだけガンガン予熱してガバっと空くクープを見て満足することが多くなった時に事件が起こりました。

そう、言わずと知れた「東日本大震災」


エコじゃない方法をし続けていた私は、本当に考えてしまいました。


レンガも撤去。天板も撤去。


300度に予熱できることだけは確保して、それ以上のポテンシャルは要求することはやめました。


でも、形良いバケットを焼きたい!!と思い続けています。

カンパーニュにしてもガバっと割れたクープに憧れます。

クープが開かないこと=へたくその象徴

と自分の中で勝手な決めつけがあったからです。

お店に行っても「きれいなもの」を選んで買っていました。今は「美味しそう」と思ったものを買っています♪


そう思えたのも、コルドンブルーでステファンシェフに出会ったからです。

私はガバッと開いたクープのカンパーニュを持って行って「シェフクープ空きました!!」と喜ぶと


「あなたは美味しいパンが焼きたいのですか?それともクープを開かせたいのですか?」


そうです。3つ折り×2回して最後に猛烈に張らせる。

ある程度気泡も担保できますが、シェフに言わせると、そこの付近がつぶれているでしょう。締めすぎと言われました。

ひどいときなんて、外に別の皮をかぶせてクープを入れてガバっとなんて喜んでいました。

「そんなの論外だよ、皮とのバランスが良くないよ」と。

(まあ、それはそれで皮がパリッと美味しい気がするのですが、好みの問題でさておき)


シェフに言わせると「クープをあけたりすることに労力を費やすなら、粉とかもっと別の「味」に関することについてもっともっと勉強して研究しなさい」と言われました。

その通りです。


今フランスでトレンドになりつつあるトラディショナルのバケット、そのことに触れだすときりがなくなるので別な時にでも書こうと思いますが、成形なしでほぼ切りっぱなし状態のバケットが最新技術であるんだよとシェフが教えてくださいました。

そのパン屋のHPです。バケットの外観についてみてください。

http://www.campaillette.com/


そんなこんなで、見た目より味を追求すべく再始動!!

粉にこだわる日々が続いています。

粉について語りだすとこれまた長い~。粉は粉でまた記載致します。


そんなこと言ってもクープの空いた気泡ボコボコが作りたいですよね♪

私の現在の知っているバケットの味・気泡・クープのバランスの良い作りか方を伝授しますね。


もちろん使うのはコンベクションのガスオーブンです♪

バケットの作り方とともに、オーブンの使い方とかをその2以降で記載していきたいと思います。


バケットはトラディションのバケットからいろいろあります。

でもとりあえずイーストで作るバケットをご紹介します。

今後ポーリッシュやルヴァンを使ったバケットとかいろいろ紹介できたらと考えています。


今回はトラディションの粉を使い、イーストで作リました。


材料 30センチ1本分

・粉 100g(私はビロンのラ・トラディション・フランセーズを使用しています)

・水 55g

・モルト 1g


・インスタントドライイースト 0.1g

・水 5g


・塩 2g

・水 10g


・水 10g~(バシナージュ用・・水合計で80~85g目標で生地を作っていきましょう)

※この時に水の半分の量をコントレックスにすると、長時間発酵でもだれにくいパンが出来上がります。


オートリズをする


粉と水を水和させて熟成させると同時に、生地の伸展性を促して生地を傷めずにこねることができるようにする方法です。イーストや塩という水和してグルテンを作り出すことを阻害する要素が無いので良い生地ができやすいです。また、私の使っている粉は、古きよき時代のバゲットを再現するために開発された小麦と麦芽のみの無添加の小麦粉です。そのため、オートリズをさせて作らないと安定しないで痛い目を見るので必ずオートリズさせます。


粉100gと水55を合わせて↓のような状態になるまで混ぜます。

夏場は冷蔵庫で1時間~24時間ほど。

冬は室温で1時間~

※冷蔵庫に入れる場合は上にラップをぴったりとくっつけてください。


Aruch Life(アルーチライフ) パン教室 横浜市港北区 綱島/大倉山


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今回は常温18度で1時間ほどおきました。このように伸びが良くなっている状態にあります。


本捏ね

オートリズをさせてしまうと、塩とイーストが解け残る可能性があります。イーストも塩も別々に水で溶いておきましょう。一緒に解くとイーストが塩で死滅します。バシナージュ(調整する水)用に少し水は残しておいてください。もしべたべたでどうしようもない場合は、バシナージュの水は全量入れなくてOKです。


全体をカードで切りながら混ぜていきます。ある程度混ざったらたたいていきます。

そして、残りの水を少しずつ加えます。加え方は台に少しずつ水を付けてそれをたたきながら吸水させていくイメージです。

予想以上にあちこちに飛び散るので、それが嫌な方は生地を切りながら混ぜていき、混ざってから簡単にたたきます。


※はじめのオートリズで水の6割ほど(もしくは全体の水の7割)を入れ、きっちりグルテンができたほうが、たくさんの水が生地に入ります。でも、こね過ぎは生地を傷めたり、生地が酸化する原因となります。またぼこぼこの不揃いの気泡を作りたい場合はある程度生地はできているけど不均一な状態でパンチで仕上げていきます。



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これで水分が80%入った状態です。結構でろり~んです。


これを長時間冷蔵庫で発酵させていきます。どうしても長時間発酵させると生地がだれてきます。

それを回避するのにコントレックス(硬水)は有効な手段です。


発酵させる。今の季節なら室温18度で1時間して1回パンチを入れます。

優しくカードを使って3つ折り×2回行います。
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もう一度ボウルに戻して2時間~3時間すると1.3倍になります。

3つ折りを2回して水で濡らしたタッパに入れて2倍になるぐらいまで発酵。


※気温が18度以上になる場合はラップをぴっしり貼り付けて冷蔵庫で12時間~ぐらい。冬で寒い場合はそのまま常温で8時間~10時間ぐらいを目安に発酵させる。


できるだけ低い温度で長い発酵時間を取りたいです。

夏場は必ず冷蔵庫で発酵させてください。じゃないとほとんどの場合が生地の糖分をイーストに消費されて焼き色が付かないグレイッシュなバケットが出来上がってしまったりだれやすくなります。

発酵が上がった状態。加水が80%以上あるのでタユンタユンの生地です。

スケッパーに粉を付けて4つ端に入れてひっくり返して生地を出します。

生地を出す部分には打ち粉をします。


打粉はできるだけすくないほうがよいのですが、張り付いて生地を傷めてしまうなら、きちんと粉を使って優しく生地を扱った方が良いです。イメージとしては、生地の中に粉は入れない(外はOK)。また、加水が65%ぐらいなら打粉は要らないので、高加水にした場合、べたつくなぁ、くっつきそうだなぁという感覚で粉は増減してください。


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ここで見ると細かい気泡が開いています。

これはイーストに見られる気泡です。同じような加水だと天然酵母はボッコボコっとした不揃いの大きな気泡がたくさんできている状態になります。


発酵後の続きです。

ひっくり返して生地を出します。丁寧に丁寧に優しく扱いましょう。

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生地を3つ折りして、乾燥しないように上にボウルタッパをかぶせて15分~30分休ませる。
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3回に分けて生地をまいていく。

できるだけ生地の中心を触らずに外を張らせるように持っていく。

上の写真の段階で本当はもう少しきれいな長方形に調えて3つ折りしてください。

(写真に気を取られて・・・うまくいきませんでした)


1回目巻き込み
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2回目巻き込み

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3回目で手首を使って閉じていく。
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3回まいたら少しコロコロと転がして両端を整える程度。

⇒が少しデブです。こうなると均一にクープが開かない原因になります。

でも無理やり細くしなくてもそのままで良いです。というのも、加水が80%を超えた生地は

きれいに成形しようという方が難しい(もっと粉をだくだくにしたり気泡つぶれるのを覚悟でいじる敷かなくなるので、それなら多少形は犠牲。技術が上がるのを待ちましょう・・・頑張ります)


とまあこんな調子で成形がやっと終わりました。



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発酵させます。トアルに粉をたっぷりうち、綴じ目を下にしておきます。(一番下のがバケットです)


一次発酵の状態にもよりますが、大体が家庭で作る場合は「ダレ」の方が怖いので、早めに焼き入れします。

本当に発酵の時間は

・生地の温度(一次発酵を冷蔵庫でさせたかとかいろいろ違います)

・生地の大きさ

・気温

・成形のやり方(気泡をある程度つぶしたか、そのままか、しっかり外が張っているか、折りたたんだだけか)


さまざまな要因で一概に00分と言えないことが悲しいです。


でも、発酵スタートさせたらオーブンは予熱スタートです。

※そのときに、オーブンと同じ部屋に生地を置かないでください!!だれてしまいます。


私の経験上。20度以上にしようとするとほとんど家庭用のオーブンではだれてしまっている結果になります。

下火も弱いので、ある程度生地が青い状態じゃないとダレたパンになってしまいます。


オーブンですが、我が家はリンナイのコンベック(東京ガスでも同じ形のものが名前を違くして売っています。

本当は、スチーム機能のある電気オーブンの新しい型が比較的きれいにクープが開きます。

でも、ガスオーブンしかない。しかも後ろから猛烈な熱風が回る・・・というタイプのオーブンです。

頑張れば結構まともに焼けます!!あきらめないでください。

しかも、最低限のエコで焼いていきましょう。


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上の様に細かい石(これは蓄熱というよりも、スチームを発生させるためにつかうので、表面積が大きい方が良いので細かい石を園芸用品店で買ってきてください)

しかも熱湯を投げ入れるのですが、奥にまで行き届くように天板の下に石を入れて奥に向かって傾斜をさせています。


そして天板を入れて300度(最高温度)で予熱をします。予熱が上がっても本当は10分ぐらいした方が良いのですが、まあエコという事で、最高温度に達したら焼き始めましょう。


この時に、本当は厚ーーーい天板を用意すると良いと言われました。

1センチ近くある天板だときちんとクープがバックリあくまでは蓄熱されています。でも40分以上予熱をしないといけないので、家庭でエコ計画を行っている人はやめましょう。


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パンはこのように違う天板(もしく段ボール)の上にオーブンシートを敷いてそこにパンをのせます。

写真はパンにイメージさせた布巾でご勘弁を・・・。

さっとシュートイン!!と呼んでいますが、さっと滑らせ引き抜く。

オーブンの蓋をあけて占めるまで0.3秒で行いましょう(できるように練習してください)


ちなみに私は勢いよく投げすぎて奥のファンにくっついてしまったときがあり・・・。


投げ入れるのが不安・・ななめのぎりぎりサイズのバケットにしてしまった・・という場合は、

銅版をお持ちなら銅版ごと熱した天板の上に置くと良いです。


どうして魔法の銅版が売れたかというと、別に初めから天板の上に置くなら必要ないです。

シュートインという技術が無かったころに置くとすぐに下からの火が伝わりやすいという理由で熱伝導率のよい銅版を使うと「クープが開く」というふれこみになりました。


でも、一番良いのはシュートイン!!

是非練習してください。私はコナコナの鈴木千恵先生のところでやっているのを見て目からうろこ!!

その後、高橋先生の本とかビビアンさんの本とかに掲載されてメジャーになりましたが・・・。



さて、予熱が完了したら

クープを入れます。


クープを入れるコツを写真撮り忘れました。今度アップを追加します。

はっきり言って、クープは下火さえ強ければいわゆるクープの開け方でOKです。

はじめは縦に1本

上手になったら2本

という具合に少しずつ増やしていくと良いです。

加水が80%を超えるとはっきり言って切れません・・・。


そのときに粉を振って(タイプ65とか濃いめの粉かライ麦粉)クープを入れるとコントラストが美しく出るので上手になったような気がします。


次に熱湯をコップに50cc程度用意します。

私は左手でオーブンの取ってを握ります。

右手にパンを持ちます。


クープを入れたらすぐにオーブンに入れて(シュートイン)


扉をすぐ閉め、右手で熱湯コップを持ち間髪を入れずに左手でドアを開け

下の石めがけて投げ入れる。


※石とパンを置く天板の距離が離れていた方が蒸気が均一にいきわたりやすいです。


オーブンを止めて5分~7分様子を見ます。

私のオーブンは大体5分~7分でやっと生地が膨らみきる感じがしますが、コルドンブルーの窯だと3分以下でした・・・・。


220度で10分→焦げるようなら温度を200度ぐらいに下げて火を止めている時間から合計で25分以内ではきれいに焼きあがるように温度を調節します。


上手にできたらこんな感じになるはず。



Aruch Life(アルーチライフ) パン教室 横浜市港北区 綱島/大倉山

本当はケースケースで違うので、使っている素材とかいろいろアドバイスしたいことはたくさんあります。


私自身悩める子羊さん(子豚!?)なので、1月はシニフィアンシニフィエに研修に行ってきます!!いろいろ高加水のパンについて学んでくることができたらと意気込んでおります。


今後パン教室もいろいろ詳しくマニアックな方向に進んでいけたらと考えています。

やはりパンは真剣に楽しんでいただきたい!!上手に作りたいけど疑問がたくさん!!本では解決できないよ~という方を集めていろいろ研究していける場所を作りたい。そんな思いでいっぱいです。


とにかく勉強してきます。




横浜 ハード系(バゲット・カンパーニュ)自家製酵母のパン教室Aruch~アルーチ~製パン理論とコツを伝授