No.247 五個荘商家に伝わるひな人形めぐり/にんげん雛 絵巻まつり | ART STYLE SHIGA(アートスタイル滋賀)

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近江商人ゆかりの地、春の風物詩。
人形の衣装をまとった、にんげん雛飾り



江商人発祥地の一つとして知られる東近江市五個荘(ごかしょう)では、現在『商家に伝わるひな人形めぐり』が開催されている。

 

五個荘金堂地区は、奈良時代建立の寺院があることから、まちの歴史は古く、現在の集落の基礎ができたのは江戸時代に入ってから。江戸後期から明治・大正・昭和戦前期にかけて、この地域の近江商人が、呉服や綿・絹製品を中心に扱い、革新的な商法で商圏を全国に広げた。現在も、当時の商人たちの邸宅や伝統的な農家住宅が残り、その美しい町並みは国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。
今年で29回目を迎えるひな人形めぐりの会場は、五個荘近江商人屋敷(中江準五郎邸、外村繁邸、藤井彦四郎邸)をはじめとする五個荘地区と一部八日市地区。商家で受け継がれてきた伝統的なひな人形や、ひな人形作家による創作雛など、江戸時代から現代までに作られたお雛様を、商家が佇む風情ある町並みと共に楽しめる。

 

中江準五郎邸は、大正時代から戦前まで朝鮮半島で次々に百貨店を開設し『百貨店王』と呼ばれた三中井一族の末弟の邸宅。切妻瓦葺の屋敷のほか、2棟の蔵を有し、蔵には滋賀県唯一の郷土民芸品「小幡人形」が常設展示。ここでは、ひな人形作家の雛匠、東之湖(とうこ)さんが近江八景など琵琶湖をモチーフに制作した『清湖雛物語(せいこびなものがたり)』も展示され、近江八景シリーズが完結作となる『石山の秋月』も登場する。

 

江戸時代末期に建てられた作家、外村繁の邸宅では、約160年前に制作された『御殿飾り』を展示。御殿飾りとは、京都御所を模した御殿の中で、内裏雛や三人官女、五人囃子を飾ったもので、明治から大正時代までの京都や大阪で人気を博した貴重な人形。その豪華さから当時の五個荘近江商人の豊かな暮らしぶりをうかがうことができる。

 

さらなる見所は、3月3日㈰に行われる『にんげん雛絵巻まつり』だ。『~ひな人形めぐり』が始まった翌年から開催されているこのイベントでは、実際にお雛様やお内裏様などの衣装を身にまとった東近江市観光大使(東近江市レインボー大使)らが来館者をお出迎え。会場は、中江準五郎の父で、幻の百貨店王・旧中江勝治郎邸。近年は映画やドラマのロケ地として活用されているが、普段は非公開の邸宅だ。今年は、三人官女と五人囃子を務める人を一般公募している(2月15日にて受付締切となっています)。一般社団法人東近江市観光協会蒲生さんによると、「人形めぐりを訪れた方から「お雛さまになってみたい」との声があったことがきっかけでした。以来、ずっと続いている(2020~2022年を除く)人気のイベントです」とのこと。

 

これまでの参加者からは「実際にお雛様になれる機会はないので、とても貴重で嬉しい」との声も届いているほか、写真撮影もあちこちで行われて、賑やかなひとときになりそう。
隆盛の時を今にとどめる近江商人たちの邸宅で鑑賞できる希少なひな人形や、華やかな装いのにんげん雛。風情ある東近江の町並みで、いにしえから続く春の祭りを体感しよう。